最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

開運推命おみくじ事件

東京地裁令和3.1.26平成31(ワ)2597等著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐伯良子
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2021.3.4
*キーワード:おみくじ、契約、損害論、差止

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■事案

寺社向けおみくじの無断複製、販売行為の著作権侵害性などが争点となった事案

第1事件原告・第2事件被告・第2事件反訴原告:中国思想研究者
第1事件被告・第2事件原告・第2事件反訴被告:おみくじ製造販売業者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、114条1項、112条

1 著作権及び著作者人格権を侵害するものであるか否か
2 原告の損害額
3 差止め及び廃棄の必要性
4 第2事件(債務不存在確認の訴え)について

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■事案の概要

『第1事件は,別紙文書目録記載1の「開運推命おみくじ」(1から100の番号が付された100種類のおみくじからなるものである。以下,上記の開運推命おみくじを「本件文書1」と総称し,個別のおみくじをいう場合には「本件文書1の1番」などと表記する。以下同じ。)の著作者及び著作権者であると主張する原告が,被告に対し,以下の各請求をする事案である。(以下、略)』

『第2事件は,被告が,原告に対し,被告が本件文書1の著作権侵害に基づく損害賠償債務を負担していないことの確認を求める事案である(なお,被告は,令和2年8月14日の第2回口頭弁論期日において,第2事件に係る訴えは取り下げない旨を述べた。)。』

『第2事件反訴は,原告が,被告に対し,上記ア,イ記載の著作権及び著作者人格権侵害を理由として,不法行為に基づく損害賠償金(一部請求)及び遅延損害金の支払を求める事案である。』

<経緯>

H25.03 原告、被告、C寺が和解(第1次和解 東京地裁平成21(ワ)35023)
H25.03 原告が被告に対してH28まで販売許諾
H29.03 原被告間で和解(第2次和解 東京地裁平成28(ワ)37083)
H29.12 被告が「改訂版開運推命おみくじ」販売
H30.12 被告が「現行版開運推命おみくじ」作成、販売

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■判決内容

<争点>

1 著作権及び著作者人格権を侵害するものであるか否か

(1)著作権侵害性

原告と被告のおみくじは、「それぞれ別紙文書目録記載1ないし3のとおりであり,いずれも,100種類の個別のおみくじからなり,個別のおみくじは,いずれも,「開運推命おみくじ」との記載の後に,1から100までの番号(数字)の後,運勢全般や注意すべき事項等の説明,金運その他の個別の運勢の説明等が記載されている。いずれの番号のおみくじにおいても,運勢全般(総合運勢)についての説明がある程度の長さのまとまりのある文章で記載されるほか,原則として,金運,事業運,仕事運,学業運,健康運,家庭対人運,異性運等についての簡単な説明が記載されている。」といった体裁のものでした。
裁判所は、同じ番号のおみくじに記載されたそれぞれの運勢等の説明は、その内容だけでなく表現もほぼ同一であり、文字の字体やおみくじの体裁が異なる、といったものであると認定。
作成時期や共通点の程度、内容に照らして被告のおみくじは、原告のおみくじに依拠して作成されたものであると裁判所は判断。
被告のおみくじは、原告のおみくじの創作性ある該当部分を有形的に再製するものであるといえ、被告おみくじを作成する行為は、原告おみくじの複製権を侵害するものであると判断しています(14頁以下)。

(2)著作者人格権侵害性

改変部分について同一性保持権侵害が肯定されています(15頁以下)。

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2 原告の損害額

(1)著作権法114条1項に基づく原告の損害額
 70円(単位数量当たりの原告利益)×(81117枚+720枚+0枚)(被告の譲渡数量)=572万8590円

(2)慰謝料
 50万円

(3)弁護士費用相当額損害
 50万円
 合計672万8590円
(16頁以下)。

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3 差止め及び廃棄の必要性

被告によるおみくじの複製、譲渡による将来的な権利侵害のおそれが否定できない、としてこれらについての差止や廃棄請求などの一部が認められています(23頁以下)。

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4 第2事件(債務不存在確認の訴え)について

第2事件は原告が被告に対して反訴として原告おみくじの著作権侵害に基づく損害賠償を求める給付訴訟を提起したことにより(第2事件反訴)確認の利益が失われたとして却下されています(24頁)。

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■コメント

別紙におみくじの対比表が掲載されいますが、ほぼ、コピペ状態です。原被告間で過去、ずいぶんやり取りを重ねていた経緯があるにも関わらずの複製行為で、被告側の合理的な反論もなく、どうして被告がこうした行為に出たのか理解に苦しみます。