最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ファイル共有ソフトBitTorrent漫画無断配信事件
東京地裁令和3.2.8令和2(ワ)19976発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 矢野紀夫
裁判官 佐々木亮
*裁判所サイト公表 2021.3.1
*キーワード:発信者情報開示請求、ファイル共有ソフト、P2P
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■事案
ファイル共有ソフトを利用して漫画作品が無断配信された発信者情報開示請求事案
原告:漫画家
被告:プロバイダ
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件共有行為による権利侵害の明白性
2 本件発信者情報は「開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
3 開示を求める正当な理由の有無
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■事案の概要
『本件は,原告が,電気通信事業等を営む被告に対し,「C」と題する漫画作品(2巻まで刊行されており,以下,同作品の1巻及び2巻の全体を「本件著作物」という。)を複製して作成された画像データ(以下「本件共有画像」という。)が,被告の電気通信設備を経由して,P2P方式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentのネットワーク上に送信(アップロード)されて送信可能化された上,同ネットワークを介して自動公衆送信されたこと(以下,この一連の行為を「本件共有行為」と総称する。)によって,本件著作物に係る原告の著作権(送信可能化権及び自動公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるとした上で,本件共有行為を行ったBitTorrentのユーザー(以下「本件共有者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため,被告が保有する別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,本件発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
R2.07 原告側が調査
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■判決内容
<争点>
1 本件共有行為による権利侵害の明白性
(1)原告が本件著作物の著作者か
原告が本件著作物の著作者かどうかについて、裁判所は、原告が著作者、著作権者であると認定しています(8頁以下)。
(2)侵害情報の流通によって原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか
本件共有者は、本件ファイルの全部を取得して上記端末に保存し、かつ、これと同時にBitTorrentのネットワークを介して他のピアからの要求に応じて当該ファイルの送信(アップロード)をすることができる状態にしたと認められるとして、裁判所は、本件共有者は本件共有行為によって本件著作物に係る原告の送信可能化権を侵害したものと判断しています(10頁以下)。
結論として、「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)と認定されています。
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2 本件発信者情報は「開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
遅くとも別紙2発信端末目録記載の令和2年7月3日午後4時51分14秒の時点までには、同目録記載の本件IPアドレスが付与された端末にBitTorrentのネットワークを介して取得された本件ファイルの全部が保存され、上記の時点頃に本件ファイルの全部が公衆送信されたと認められると裁判所は認定。
上記端末を用いてされた本件共有行為に係る特定電気通信による情報の流通によって原告の本件著作物に係る送信可能化権及び自動公衆送信権が侵害されたと認められるとして、別紙2発信端末目録記載のIPアドレスを同目録記載の発信時刻頃に使用した者の情報である本件発信者情報は、「当該権利の侵害に係る発信者情報」(プロバイダ責任制限法4条1項柱書き)に該当すると判断しています(12頁以下)。
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3 開示を求める正当な理由の有無
原告は本件共有者に対して本件著作物の著作権侵害について、不法行為に基づく損害賠償請求その他の法的措置を講じる意思を有しており、その請求のためには被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があるため、原告には本件発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法4条1項2号)と認められると裁判所は判断しています(13頁以下)。
結論として原告の請求が認容されています。
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■コメント
ファイル共有ソフトを利用した漫画著作物の無断配信の事例となります。
なお、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害について、より円滑に被害者救済を図るため、発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)を創設するなどの制度的見直しを行うためのプロバイダ責任制限法の改正案が2021年2月26日に通常国会に上程されています。
総務省第204回国会(常会)提出法案
プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律案(概要)
国会提出日令和3年2月26日
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案
(所管課室名)総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政第二課
ファイル共有ソフトBitTorrent漫画無断配信事件
東京地裁令和3.2.8令和2(ワ)19976発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 矢野紀夫
裁判官 佐々木亮
*裁判所サイト公表 2021.3.1
*キーワード:発信者情報開示請求、ファイル共有ソフト、P2P
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■事案
ファイル共有ソフトを利用して漫画作品が無断配信された発信者情報開示請求事案
原告:漫画家
被告:プロバイダ
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件共有行為による権利侵害の明白性
2 本件発信者情報は「開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
3 開示を求める正当な理由の有無
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■事案の概要
『本件は,原告が,電気通信事業等を営む被告に対し,「C」と題する漫画作品(2巻まで刊行されており,以下,同作品の1巻及び2巻の全体を「本件著作物」という。)を複製して作成された画像データ(以下「本件共有画像」という。)が,被告の電気通信設備を経由して,P2P方式のファイル共有ソフトウェアであるBitTorrentのネットワーク上に送信(アップロード)されて送信可能化された上,同ネットワークを介して自動公衆送信されたこと(以下,この一連の行為を「本件共有行為」と総称する。)によって,本件著作物に係る原告の著作権(送信可能化権及び自動公衆送信権)が侵害されたことが明らかであるとした上で,本件共有行為を行ったBitTorrentのユーザー(以下「本件共有者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため,被告が保有する別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,本件発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
R2.07 原告側が調査
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■判決内容
<争点>
1 本件共有行為による権利侵害の明白性
(1)原告が本件著作物の著作者か
原告が本件著作物の著作者かどうかについて、裁判所は、原告が著作者、著作権者であると認定しています(8頁以下)。
(2)侵害情報の流通によって原告の著作権が侵害されたことが明らかであるか
本件共有者は、本件ファイルの全部を取得して上記端末に保存し、かつ、これと同時にBitTorrentのネットワークを介して他のピアからの要求に応じて当該ファイルの送信(アップロード)をすることができる状態にしたと認められるとして、裁判所は、本件共有者は本件共有行為によって本件著作物に係る原告の送信可能化権を侵害したものと判断しています(10頁以下)。
結論として、「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)と認定されています。
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2 本件発信者情報は「開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するか
遅くとも別紙2発信端末目録記載の令和2年7月3日午後4時51分14秒の時点までには、同目録記載の本件IPアドレスが付与された端末にBitTorrentのネットワークを介して取得された本件ファイルの全部が保存され、上記の時点頃に本件ファイルの全部が公衆送信されたと認められると裁判所は認定。
上記端末を用いてされた本件共有行為に係る特定電気通信による情報の流通によって原告の本件著作物に係る送信可能化権及び自動公衆送信権が侵害されたと認められるとして、別紙2発信端末目録記載のIPアドレスを同目録記載の発信時刻頃に使用した者の情報である本件発信者情報は、「当該権利の侵害に係る発信者情報」(プロバイダ責任制限法4条1項柱書き)に該当すると判断しています(12頁以下)。
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3 開示を求める正当な理由の有無
原告は本件共有者に対して本件著作物の著作権侵害について、不法行為に基づく損害賠償請求その他の法的措置を講じる意思を有しており、その請求のためには被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があるため、原告には本件発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法4条1項2号)と認められると裁判所は判断しています(13頁以下)。
結論として原告の請求が認容されています。
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■コメント
ファイル共有ソフトを利用した漫画著作物の無断配信の事例となります。
なお、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害について、より円滑に被害者救済を図るため、発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)を創設するなどの制度的見直しを行うためのプロバイダ責任制限法の改正案が2021年2月26日に通常国会に上程されています。
総務省第204回国会(常会)提出法案
プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律案(概要)
国会提出日令和3年2月26日
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案
(所管課室名)総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政第二課