最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
聖教新聞記事無断配信事件2
東京地裁令和2.12.9令和2(ワ)12113発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 三井大有
裁判官 吉野俊太郎
*裁判所サイト公表 2021.1.6
*キーワード:発信者情報開示請求、写真、引用
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■事案
Twitterに写真を掲載した行為が引用にあたるかどうかが争点となった発信者情報開示請求事案
原告:宗教法人
被告:プロバイダ
--------------------
■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法32条1項、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件情報の発信者情報該当性
2 被告の開示関係役務提供者該当性
3 本件投稿による権利侵害の明白性
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■事案の概要
『本件は,原告が,別紙投稿記事目録記載のIPアドレス(以下「本件IPアドレス」という。)を利用している被告に対し,氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)が,ツイッター上に写真を含む投稿(以下「本件投稿」という。)をし,別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)に対する原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件情報」という。)の開示を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H30.08 本件写真が新聞に掲載
R1.08 本件発信者がTwitterに記事投稿
R1.10 Twitter社に対して原告が申し立てた仮処分決定
R2.03 被告が加入者宛て書面送付
R2.04 本件発信者が引用を主張、開示不同意を被告に回答
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■判決内容
<争点>
1 本件情報の発信者情報該当性
裁判所は、プロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」の意義について、侵害情報が発信された際に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報に限られるものではなく、権利侵害との結びつきがあり、権利侵害者の特定に資する通信から把握される発信者情報を含むと解するのが相当であると判断。
本件において、侵害情報が送信される直前のログインの際のIPアドレス等から把握される発信者情報であっても、それが侵害情報の発信者のものと認められる場合であれば、法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると解すると判断。
結論として、本件情報(別紙発信者情報目録記載の各情報)の発信者情報該当性を肯定しています(9頁以下)。
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2 被告の開示関係役務提供者該当性
裁判所は、本件投稿が本件ログインによるログイン状態を利用してされたものであり、本件投稿は被告の特定電気通信設備を経由したものであったと認められるとして、被告の開示関係役務提供者該当性を肯定しています(11頁)。
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3 本件投稿による権利侵害の明白性
裁判所は、本件投稿写真が本件写真をトリミングするなどした上で、これに依拠して再製されたものであることは特に争いがないとして、本件写真の複製行為(著作権法21条)を肯定。
被告は引用の抗弁を示しましたが、この点について裁判所は、
・本件投稿に係る記事の文章部分について、
「去年の写真です。
車もレンタル?!
いちいち買うのですかね?」
単なる感想を述べるために本件投稿写真を掲載する必要性が高いとはいえない。
・本件投稿写真が独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであるのに対して、文章部分は短い3文(28文字)にすぎない
・出所明示がない
その引用の方法及び態様が引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできない。
といった点から、被告の引用の抗弁を認めていません(12頁以下)。
裁判所は、本件発信者が本件写真を複製した本件投稿写真を掲載したことによって、本件写真に対する原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことは明らかであると判断してます。
結論として、原告は本件発信者に対して著作権(公衆送信権)を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有しており、その権利を行使するために本件情報の開示が必要であるとして、原告の請求を認容しています。
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■コメント
判決文の末尾に別紙があり、どのような写真であったか分かります。
引用にあたらない態様での写真の無断投稿であり、また名誉棄損的言辞、揶揄の類である以上、裁判所の判断の結論に異論はないのですが、原告は別訴(東京地裁令和2.10.14令和2(ワ)6862発信者情報開示請求事件)のように、引用の肯否に関わる、ある意味微妙な事案も訴訟で取り上げるような対応となっており、対抗言論などでの対応を第一義として、表現の自由への過度の萎縮効果を及ぼさないことを願うところではあります。
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■過去のブログ記事
聖教新聞記事無断配信事件
東京地裁令和2.10.14令和2(ワ)6862発信者情報開示請求事件記事
聖教新聞記事無断配信事件2
東京地裁令和2.12.9令和2(ワ)12113発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 三井大有
裁判官 吉野俊太郎
*裁判所サイト公表 2021.1.6
*キーワード:発信者情報開示請求、写真、引用
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■事案
Twitterに写真を掲載した行為が引用にあたるかどうかが争点となった発信者情報開示請求事案
原告:宗教法人
被告:プロバイダ
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法32条1項、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件情報の発信者情報該当性
2 被告の開示関係役務提供者該当性
3 本件投稿による権利侵害の明白性
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■事案の概要
『本件は,原告が,別紙投稿記事目録記載のIPアドレス(以下「本件IPアドレス」という。)を利用している被告に対し,氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)が,ツイッター上に写真を含む投稿(以下「本件投稿」という。)をし,別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)に対する原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき,別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件情報」という。)の開示を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H30.08 本件写真が新聞に掲載
R1.08 本件発信者がTwitterに記事投稿
R1.10 Twitter社に対して原告が申し立てた仮処分決定
R2.03 被告が加入者宛て書面送付
R2.04 本件発信者が引用を主張、開示不同意を被告に回答
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■判決内容
<争点>
1 本件情報の発信者情報該当性
裁判所は、プロバイダ責任制限法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」の意義について、侵害情報が発信された際に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報に限られるものではなく、権利侵害との結びつきがあり、権利侵害者の特定に資する通信から把握される発信者情報を含むと解するのが相当であると判断。
本件において、侵害情報が送信される直前のログインの際のIPアドレス等から把握される発信者情報であっても、それが侵害情報の発信者のものと認められる場合であれば、法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると解すると判断。
結論として、本件情報(別紙発信者情報目録記載の各情報)の発信者情報該当性を肯定しています(9頁以下)。
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2 被告の開示関係役務提供者該当性
裁判所は、本件投稿が本件ログインによるログイン状態を利用してされたものであり、本件投稿は被告の特定電気通信設備を経由したものであったと認められるとして、被告の開示関係役務提供者該当性を肯定しています(11頁)。
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3 本件投稿による権利侵害の明白性
裁判所は、本件投稿写真が本件写真をトリミングするなどした上で、これに依拠して再製されたものであることは特に争いがないとして、本件写真の複製行為(著作権法21条)を肯定。
被告は引用の抗弁を示しましたが、この点について裁判所は、
・本件投稿に係る記事の文章部分について、
「去年の写真です。
車もレンタル?!
いちいち買うのですかね?」
単なる感想を述べるために本件投稿写真を掲載する必要性が高いとはいえない。
・本件投稿写真が独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであるのに対して、文章部分は短い3文(28文字)にすぎない
・出所明示がない
その引用の方法及び態様が引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということはできない。
といった点から、被告の引用の抗弁を認めていません(12頁以下)。
裁判所は、本件発信者が本件写真を複製した本件投稿写真を掲載したことによって、本件写真に対する原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことは明らかであると判断してます。
結論として、原告は本件発信者に対して著作権(公衆送信権)を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有しており、その権利を行使するために本件情報の開示が必要であるとして、原告の請求を認容しています。
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■コメント
判決文の末尾に別紙があり、どのような写真であったか分かります。
引用にあたらない態様での写真の無断投稿であり、また名誉棄損的言辞、揶揄の類である以上、裁判所の判断の結論に異論はないのですが、原告は別訴(東京地裁令和2.10.14令和2(ワ)6862発信者情報開示請求事件)のように、引用の肯否に関わる、ある意味微妙な事案も訴訟で取り上げるような対応となっており、対抗言論などでの対応を第一義として、表現の自由への過度の萎縮効果を及ぼさないことを願うところではあります。
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■過去のブログ記事
聖教新聞記事無断配信事件
東京地裁令和2.10.14令和2(ワ)6862発信者情報開示請求事件記事