最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
夜景写真事件(対KDDI)
東京地裁令和2.9.25令和2(ワ)9105発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 小川 暁
裁判官 佐々木亮
*裁判所サイト公表 2020.10.16
*キーワード:写真、著作物性、引用、発信者情報開示請求
--------------------
■事案
夜景写真が無断でネット掲載されたとして発信者情報開示請求がされた事案(対KDDI事案)
原告:写真家
被告:プロバイダ
--------------------
■結論
請求認容
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件投稿による権利侵害の明白性
2 開示を求める正当な理由の有無
--------------------
■事案の概要
『本件は,原告が,電気通信事業を営む被告に対し,被告の電気通信設備を用いてウェブサイトに別紙4写真画像目録記載の画像(以下「本件写真画像」という。)を複製したものが掲載されたことによって,本件写真画像に係る原告の著作権(複製権及び自動公衆送信権(送信可能化権を含む。以下同じ。))が侵害されたことが明らかであるとして,その投稿を行った者(以下「本件投稿者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため,被告が保有する別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,本件発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件投稿による権利侵害の明白性
(1)本件写真画像の著作物性
阪南スカイタウン展望緑地から撮影された、りんくうゲートタワー方面の夜景写真について、裁判所は著作物性を肯定しています(6頁以下)。
(2)引用の肯否
本件記事は、
『「夜景見るの好き?」というタイトルのブログであって,「夜景を見るの大好き」,「お父さんが単身赴任中,お母さんと私と妹と愛犬とよく和歌山県の夜景を見に出掛けたことある」,「他の都道府県の夜景もキレイかも知れないけど私は和歌山県の夜景が一番好きかな」との5行の記載に続いて,和歌山県方面ではなく大阪府方面の夜景を撮影した本件写真画像を複製した本件投稿画像が掲載され,その直下に「どの町の夜景もキレイで好き」との1行の記載がされたもの』でした。
この点について、裁判所は、本件写真画像を利用する必要性は乏しいなどとして、本件記事における本件写真画像の利用は、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」のものであるとも、「公正な慣行に合致するもの」であるとも認められないと判断。被告の引用の抗弁を認めていません(7頁以下)。
結論として、裁判所は、本件投稿によって原告の本件写真画像に対する著作権(複製権及び自動公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると判断しています。
--------------------
2 開示を求める正当な理由の有無
原告は、本件投稿者に対して本件写真画像の著作権侵害について不法行為に基づく損害賠償請求をする意思を有しており、その請求のためには被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があると裁判所は判断。
結論として、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断されています(9頁以下)。
以上から、本件投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであり、かつ、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由もあり(プロバイダ責任制限法4条1項)、本件投稿に係る通信を媒介した被告は開示関係役務提供者として本件発信者情報を開示すべき義務を負うものとして、原告の請求は認容されています。
--------------------
■コメント
原告の写真家岩崎拓哉さんからは折々、予審となる発信者情報開示請求事件の情報(対NTTコミュニケーションズ、中部テレコミュニケーション、ソフトバンク、NTTぷらら)や侵害者本人との訴訟の情報をいただいておりまして、事案理解にたいへん貴重な情報で深謝を申し上げる次第です。
--------------------
■過去のブログ記事
東京地裁令和1.10.30令和1(ワ)15601損害賠償(著作権等侵害)請求事件
記事
東京地裁令和1.6.26平成31(ワ)1955発信者情報開示請求事件
記事
東京地裁平成31.4.17平成31(ワ)2413発信者情報開示請求事件
記事
--------------------
■関連判例
対NTTコミュニケーションズ、中部テレコミュニケーション、ソフトバンク事件
東京地裁令和2.3.18令和1(ワ)29973発信者情報開示請求事件
対さくらインターネット事件
東京地裁令和2.3.25令和1(ワ)29280発信者情報開示請求事件
夜景写真事件(対KDDI)
東京地裁令和2.9.25令和2(ワ)9105発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 國分隆文
裁判官 小川 暁
裁判官 佐々木亮
*裁判所サイト公表 2020.10.16
*キーワード:写真、著作物性、引用、発信者情報開示請求
--------------------
■事案
夜景写真が無断でネット掲載されたとして発信者情報開示請求がされた事案(対KDDI事案)
原告:写真家
被告:プロバイダ
--------------------
■結論
請求認容
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件投稿による権利侵害の明白性
2 開示を求める正当な理由の有無
--------------------
■事案の概要
『本件は,原告が,電気通信事業を営む被告に対し,被告の電気通信設備を用いてウェブサイトに別紙4写真画像目録記載の画像(以下「本件写真画像」という。)を複製したものが掲載されたことによって,本件写真画像に係る原告の著作権(複製権及び自動公衆送信権(送信可能化権を含む。以下同じ。))が侵害されたことが明らかであるとして,その投稿を行った者(以下「本件投稿者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため,被告が保有する別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,本件発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件投稿による権利侵害の明白性
(1)本件写真画像の著作物性
阪南スカイタウン展望緑地から撮影された、りんくうゲートタワー方面の夜景写真について、裁判所は著作物性を肯定しています(6頁以下)。
(2)引用の肯否
本件記事は、
『「夜景見るの好き?」というタイトルのブログであって,「夜景を見るの大好き」,「お父さんが単身赴任中,お母さんと私と妹と愛犬とよく和歌山県の夜景を見に出掛けたことある」,「他の都道府県の夜景もキレイかも知れないけど私は和歌山県の夜景が一番好きかな」との5行の記載に続いて,和歌山県方面ではなく大阪府方面の夜景を撮影した本件写真画像を複製した本件投稿画像が掲載され,その直下に「どの町の夜景もキレイで好き」との1行の記載がされたもの』でした。
この点について、裁判所は、本件写真画像を利用する必要性は乏しいなどとして、本件記事における本件写真画像の利用は、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」のものであるとも、「公正な慣行に合致するもの」であるとも認められないと判断。被告の引用の抗弁を認めていません(7頁以下)。
結論として、裁判所は、本件投稿によって原告の本件写真画像に対する著作権(複製権及び自動公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると判断しています。
--------------------
2 開示を求める正当な理由の有無
原告は、本件投稿者に対して本件写真画像の著作権侵害について不法行為に基づく損害賠償請求をする意思を有しており、その請求のためには被告が保有する本件発信者情報の開示を受ける必要があると裁判所は判断。
結論として、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断されています(9頁以下)。
以上から、本件投稿により原告の権利が侵害されたことが明らかであり、かつ、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由もあり(プロバイダ責任制限法4条1項)、本件投稿に係る通信を媒介した被告は開示関係役務提供者として本件発信者情報を開示すべき義務を負うものとして、原告の請求は認容されています。
--------------------
■コメント
原告の写真家岩崎拓哉さんからは折々、予審となる発信者情報開示請求事件の情報(対NTTコミュニケーションズ、中部テレコミュニケーション、ソフトバンク、NTTぷらら)や侵害者本人との訴訟の情報をいただいておりまして、事案理解にたいへん貴重な情報で深謝を申し上げる次第です。
--------------------
■過去のブログ記事
東京地裁令和1.10.30令和1(ワ)15601損害賠償(著作権等侵害)請求事件
記事
東京地裁令和1.6.26平成31(ワ)1955発信者情報開示請求事件
記事
東京地裁平成31.4.17平成31(ワ)2413発信者情報開示請求事件
記事
--------------------
■関連判例
対NTTコミュニケーションズ、中部テレコミュニケーション、ソフトバンク事件
東京地裁令和2.3.18令和1(ワ)29973発信者情報開示請求事件
対さくらインターネット事件
東京地裁令和2.3.25令和1(ワ)29280発信者情報開示請求事件