最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
LINEマーケティングツール開発事件
東京地裁令和2.3.19平成30(ワ)33203著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 佐藤雅浩
裁判官 古川善敬
*裁判所サイト公表 2020.4.7
*キーワード:編集著作物、著作物性、プログラム、ソフトウェア、表示画面
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■事案
LINEを利用したマーケティングツールに関して表示画面上のカテゴリーの編集著作物性が争点となった事案
原告:IT会社
被告:IT会社、代表者
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法12条1項
1 原告商品の編集著作物性
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■事案の概要
『本件は,インターネットを利用した各種サービス等を提供する原告が,同様にインターネットを利用した各種サービス等を提供する被告に対し,被告が原告に無断で別紙物件目録記載のアプリケーション(以下「被告商品」という。)を製作し,インターネットを通じて顧客に提供した行為が,原告が開発した「Linect」(以下「原告商品」という。)について原告が有する著作権(複製権,送信可能化権,公衆送信権)を侵害すると主張して,(1)著作権法112条1項に基づき,被告商品の複製,送信可能化又は公衆送信の差止めを,(2)同条2項に基づき,被告商品及びその複製物(被告商品を格納した記録媒体を含む。)の廃棄を,(3)被告会社に対し,民法709条に基づき,被告甲に対し,会社法429条1項に基づき,連帯して,損害賠償金2376万円及び不法行為後(本訴状送達の日の翌日)である平成30年11月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H29.05 原告と訴外RILARCがツール開発基本合意
訴外RILARCが訴外Watermelonと業務委託契約締結
H30.02 訴外RILARCが訴外Watermelonから納品を受け原告商品を原告に納品
H30.07 被告会社が被告商品を販売
被告商品:LINE MARKETING TOOLS 「トクマガ」
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■判決内容
<争点>
1 原告商品の編集著作物性
原告は、原告商品における「素材」は、パソコン画面等で表示される親カテゴリーから小カテゴリーに至る各「カテゴリー名」であり、その選択にも配列にも創作性が認められとして、原告商品は編集著作物(著作権法12条1項)に該当する旨主張しました。
この点について、裁判所は、原告商品とそこにおけるカテゴリー名の使用の態様に照らせば、これらの「カテゴリー名」は原告商品の異なる画面においても他にも多くの記載がある画面の表示の一部として表示されるものであり、原告商品をもって「カテゴリー名」を「素材」として構成される編集物であるとはいえないと判断。
そして、「カテゴリー名」の選択と配列における創作性について、裁判所は、原告商品の各画面はそのカテゴリー名に対応する機能を実現するために表示されるものであり、原告商品における各カテゴリー名と各画面の表示との関係は何らかの素材をカテゴリー名やその階層構造に基づいて選択、配列したというものではなくて、カテゴリー名に対応する機能を実現するための画面の表示であるとした上で、原告の主張は、ある商品において採用された機能やその機能の階層構造が共通していると主張しているのに等しい部分があるとして、ある商品においてどのような機能を採用するかやその機能をどのような階層構造とするか自体は編集著作物として保護される対象となるものではないと判断。
また、原告が、原告商品におけるカテゴリーの名称そのものについて選択の幅があること、その階層構造などからカテゴリー名の選択、配列に創作性があると主張した点について、裁判所は、この点についても、原告商品における各カテゴリーの名称は各カテゴリーが果たす機能を表現するものとしてはありふれたものであり、また、原告商品の各カテゴリー名の配列も複数の選択肢の中から選択されたものではあるものの、ありふれたものであるとして、それら自体に著作権法上の創作性があるとはいえないと判断。
結論として、裁判所はこれらの点についての原告の主張を認めていません(30頁以下)。
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■コメント
被告商品はメルマガ配信機能を含む「ステップ機能、ASP機能など、LINEで集客と販売をしてさらにアフィリエイトをする上で、すべての機能を網羅」(被告運営サイトより)したマーケティングツールで、開発にあたっては使い勝手のよい営業支援ツールとするために先行する他社製品を分析、手本にして自社製品を制作することになるわけですが、模倣の部分がアイデアに過ぎないもの、ありふれたものであれば、著作権法上は問題がないことになります。
カテゴリー分けに独創性があれば、著作権法上保護の対象にもなりそうですが、LINEのプラットフォームでのカテゴリー分けがまずあり、また、原告以外の他社製品も同様のカテゴリーを利用しているとなると、デッドコピーやソースコード自体の複製であればともかく、著作権法での保護は難しいかと思われるところです。
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■参考判例
建築積算ソフトの15種類の工事名称一覧表などの表示画面に関する「積算くん事件」
大阪地裁平成12.3.30平成10(ワ)13577著作権侵害差止等請求事件
別紙
「グループウエア」ビジネスソフトの表示画面に関する「サイボウズ事件」
東京地裁平成14.9.5平成13(ワ)16440著作権侵害差止等請求事件
別紙
LINEマーケティングツール開発事件
東京地裁令和2.3.19平成30(ワ)33203著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 佐藤雅浩
裁判官 古川善敬
*裁判所サイト公表 2020.4.7
*キーワード:編集著作物、著作物性、プログラム、ソフトウェア、表示画面
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■事案
LINEを利用したマーケティングツールに関して表示画面上のカテゴリーの編集著作物性が争点となった事案
原告:IT会社
被告:IT会社、代表者
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法12条1項
1 原告商品の編集著作物性
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■事案の概要
『本件は,インターネットを利用した各種サービス等を提供する原告が,同様にインターネットを利用した各種サービス等を提供する被告に対し,被告が原告に無断で別紙物件目録記載のアプリケーション(以下「被告商品」という。)を製作し,インターネットを通じて顧客に提供した行為が,原告が開発した「Linect」(以下「原告商品」という。)について原告が有する著作権(複製権,送信可能化権,公衆送信権)を侵害すると主張して,(1)著作権法112条1項に基づき,被告商品の複製,送信可能化又は公衆送信の差止めを,(2)同条2項に基づき,被告商品及びその複製物(被告商品を格納した記録媒体を含む。)の廃棄を,(3)被告会社に対し,民法709条に基づき,被告甲に対し,会社法429条1項に基づき,連帯して,損害賠償金2376万円及び不法行為後(本訴状送達の日の翌日)である平成30年11月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H29.05 原告と訴外RILARCがツール開発基本合意
訴外RILARCが訴外Watermelonと業務委託契約締結
H30.02 訴外RILARCが訴外Watermelonから納品を受け原告商品を原告に納品
H30.07 被告会社が被告商品を販売
被告商品:LINE MARKETING TOOLS 「トクマガ」
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■判決内容
<争点>
1 原告商品の編集著作物性
原告は、原告商品における「素材」は、パソコン画面等で表示される親カテゴリーから小カテゴリーに至る各「カテゴリー名」であり、その選択にも配列にも創作性が認められとして、原告商品は編集著作物(著作権法12条1項)に該当する旨主張しました。
この点について、裁判所は、原告商品とそこにおけるカテゴリー名の使用の態様に照らせば、これらの「カテゴリー名」は原告商品の異なる画面においても他にも多くの記載がある画面の表示の一部として表示されるものであり、原告商品をもって「カテゴリー名」を「素材」として構成される編集物であるとはいえないと判断。
そして、「カテゴリー名」の選択と配列における創作性について、裁判所は、原告商品の各画面はそのカテゴリー名に対応する機能を実現するために表示されるものであり、原告商品における各カテゴリー名と各画面の表示との関係は何らかの素材をカテゴリー名やその階層構造に基づいて選択、配列したというものではなくて、カテゴリー名に対応する機能を実現するための画面の表示であるとした上で、原告の主張は、ある商品において採用された機能やその機能の階層構造が共通していると主張しているのに等しい部分があるとして、ある商品においてどのような機能を採用するかやその機能をどのような階層構造とするか自体は編集著作物として保護される対象となるものではないと判断。
また、原告が、原告商品におけるカテゴリーの名称そのものについて選択の幅があること、その階層構造などからカテゴリー名の選択、配列に創作性があると主張した点について、裁判所は、この点についても、原告商品における各カテゴリーの名称は各カテゴリーが果たす機能を表現するものとしてはありふれたものであり、また、原告商品の各カテゴリー名の配列も複数の選択肢の中から選択されたものではあるものの、ありふれたものであるとして、それら自体に著作権法上の創作性があるとはいえないと判断。
結論として、裁判所はこれらの点についての原告の主張を認めていません(30頁以下)。
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■コメント
被告商品はメルマガ配信機能を含む「ステップ機能、ASP機能など、LINEで集客と販売をしてさらにアフィリエイトをする上で、すべての機能を網羅」(被告運営サイトより)したマーケティングツールで、開発にあたっては使い勝手のよい営業支援ツールとするために先行する他社製品を分析、手本にして自社製品を制作することになるわけですが、模倣の部分がアイデアに過ぎないもの、ありふれたものであれば、著作権法上は問題がないことになります。
カテゴリー分けに独創性があれば、著作権法上保護の対象にもなりそうですが、LINEのプラットフォームでのカテゴリー分けがまずあり、また、原告以外の他社製品も同様のカテゴリーを利用しているとなると、デッドコピーやソースコード自体の複製であればともかく、著作権法での保護は難しいかと思われるところです。
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■参考判例
建築積算ソフトの15種類の工事名称一覧表などの表示画面に関する「積算くん事件」
大阪地裁平成12.3.30平成10(ワ)13577著作権侵害差止等請求事件
別紙
「グループウエア」ビジネスソフトの表示画面に関する「サイボウズ事件」
東京地裁平成14.9.5平成13(ワ)16440著作権侵害差止等請求事件
別紙