最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
SUQSUQ対JASRAC事件
知財高裁令和1.9.18平成31(ネ)10035等著作権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官 山門 優
裁判官 高橋 彩
*裁判所サイト公表 2019.9.27
*キーワード:演奏権、ジャスラック、将来給付の訴え
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■事案
飲食店舗でのバンド生演奏に関する使用料徴収を巡る事案
控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):飲食店経営者ら
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):JASRAC
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■結論
一部変更
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■争点
条文 著作権法38条
1 侵害主体性
2 著作権法38条1項該当性
3 損害額
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■事案の概要
『(1)本件は,著作権等管理事業者である被控訴人が,控訴人らに対し,被控訴人との間で利用許諾契約を締結しないまま,(1)控訴人Xが,平成20年6月18日から平成27年1月22日までの間「Music LoungeSUQSUQ」(旧SUQSUQ)の,平成27年7月9日から同年11月30日までの間「LIVE BAND PARADISE」(PARADISE)の実質的経営者として,(2)控訴人らが,平成27年12月7日から現在に至るまで,「Music Lounge SUQSUQ」(現SUQSUQ)の実質的経営者として,それぞれ上記各店において,楽曲につき演奏,歌唱ないしカラオケ機器により使用した行為が,被控訴人が著作権を管理する著作物(管理著作物)の演奏権ないし上映権侵害に当たると主張して,控訴人らに対し,〈1〉著作権法112条1項に基づいて,現SUQSUQにおける管理著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを求めるとともに,〈2〉主位的に著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に不当利得返還請求として,i)控訴人Xにつき,上記各店における平成20年6月18日から平成28年10月31日までの使用料相当額及び弁護士費用から既払金8万7480円を控除した残額472万0620円(このうち52万2720円の限度で控訴人Yと連帯して)並びにこれに対する不法行為以後又は請求の日の翌日である平成28年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金,ii)控訴人Yにつき,現SUQSUQにおける平成27年12月7日から平成28年10月31日までの使用料相当額及び弁護士費用52万2720円並びにこれに対する不法行為以後又は請求の日の翌日である同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金,iii)控訴人らにつき,現SUQSUQにおける同年11月1日から管理著作物の使用終了に至るまで,連帯して,月4万3200円の割合による将来の使用料相当額の各支払を求める事案である。』
『(2)原判決は,控訴人らが管理著作物の演奏主体に当たると判断して,〈1〉被控訴人の差止め請求を認容し,〈2〉金銭請求について,i)控訴人Xにつき,平成20年6月18日から平成28年10月31日までの不法行為についての損害賠償金から既払金を控除した残額477万0876円(このうち51万3216円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する不法行為以後である同年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,ii)控訴人Yにつき,控訴人Xと連帯して,平成27年12月7日から平成28年10月31日までの不法行為についての損害賠償金51万3216円及びこれに対する不法行為以後である同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,iii)控訴人らにつき,連帯して,同年11月1日から平成30年11月15日(原審口頭弁論終結日)までの不法行為についての損害賠償金105万8400円の各請求を認め,同月16日から上記著作物の使用終了に至るまでの不法行為に基づく損害賠償金又は不当利得金の将来請求に係る部分を却下し,その余の請求を棄却した。』
『(3)控訴人らは,被控訴人の請求を認容した部分を不服として控訴した。また,被控訴人は将来請求について却下した部分及び被控訴人の請求を棄却した部分を不服として附帯控訴した上で,〈2〉のi)の控訴人Xに対する請求を473万8677円(このうち52万2720円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する平成28年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求に,〈2〉のiii)の控訴人らに対する将来請求について月4万7520円の割合による請求に,それぞれ拡張した。』
(3頁以下)
原審:静岡地方裁判所平成28年(ワ)第907号
<経緯>
2008.06 店舗開業
2014.09 原告が静岡地裁に仮処分命令申し立て
2015.01 仮処分決定、執行
2015.04 被告が仮処分決定取消し申し立て
2015.05 和解成立、店舗廃業
2015.07 営業再開
2016.11 原告が静岡地裁に本件提訴
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■判決内容
<争点>
1 侵害主体性
控訴人らの管理著作物の著作権侵害主体性に関する原審の判断が控訴審でも維持されています(16頁以下)。
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2 著作権法38条1項該当性
権利制限規定である38条1項(営利を目的としない上演等)の適用の肯否について、控訴審は非適用と判断しています(18頁)。
結論として、控訴人Xが本件店舗の本件各店において管理著作物に係る著作権を侵害したこと、控訴人Yは現SUQSUQにおいて管理著作物に係る著作権を侵害したこと、また、控訴人らにおける著作権侵害についての故意があることが認定されています。
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3 損害額
控訴人X 470万4605円
控訴人Y 51万3523円
控訴人XY連帯 153万2903円
(19頁以下)
なお、将来給付の訴えに関わる請求については、却下の判断となっています(27頁以下)。
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■コメント
原審の内容が確認できていないので、詳細は不明ですが、
「本件仮処分決定の執行がされたため,控訴人Xは,自分の経営名義ではいつまでも演奏ができず,一旦廃業して他人の名義で営業を再開すれば,本件仮処分決定の執行の対象となった楽器等も使用できるようになると考え,旧SUQSUQを閉店し,Aに相談してAの名義でPARADISEを開店した」(17頁)
とあるように、経営主体を変更するなどして違法状態を継続した事案です。
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■参考サイト
JASRACプレスリリース
「社交場の経営者らに対し著作権侵害行為の差止めと損害賠償を請求」(2016年11月11日)
リリース
SUQSUQ対JASRAC事件
知財高裁令和1.9.18平成31(ネ)10035等著作権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官 山門 優
裁判官 高橋 彩
*裁判所サイト公表 2019.9.27
*キーワード:演奏権、ジャスラック、将来給付の訴え
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■事案
飲食店舗でのバンド生演奏に関する使用料徴収を巡る事案
控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):飲食店経営者ら
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):JASRAC
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■結論
一部変更
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■争点
条文 著作権法38条
1 侵害主体性
2 著作権法38条1項該当性
3 損害額
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■事案の概要
『(1)本件は,著作権等管理事業者である被控訴人が,控訴人らに対し,被控訴人との間で利用許諾契約を締結しないまま,(1)控訴人Xが,平成20年6月18日から平成27年1月22日までの間「Music LoungeSUQSUQ」(旧SUQSUQ)の,平成27年7月9日から同年11月30日までの間「LIVE BAND PARADISE」(PARADISE)の実質的経営者として,(2)控訴人らが,平成27年12月7日から現在に至るまで,「Music Lounge SUQSUQ」(現SUQSUQ)の実質的経営者として,それぞれ上記各店において,楽曲につき演奏,歌唱ないしカラオケ機器により使用した行為が,被控訴人が著作権を管理する著作物(管理著作物)の演奏権ないし上映権侵害に当たると主張して,控訴人らに対し,〈1〉著作権法112条1項に基づいて,現SUQSUQにおける管理著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを求めるとともに,〈2〉主位的に著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に不当利得返還請求として,i)控訴人Xにつき,上記各店における平成20年6月18日から平成28年10月31日までの使用料相当額及び弁護士費用から既払金8万7480円を控除した残額472万0620円(このうち52万2720円の限度で控訴人Yと連帯して)並びにこれに対する不法行為以後又は請求の日の翌日である平成28年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金,ii)控訴人Yにつき,現SUQSUQにおける平成27年12月7日から平成28年10月31日までの使用料相当額及び弁護士費用52万2720円並びにこれに対する不法行為以後又は請求の日の翌日である同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金,iii)控訴人らにつき,現SUQSUQにおける同年11月1日から管理著作物の使用終了に至るまで,連帯して,月4万3200円の割合による将来の使用料相当額の各支払を求める事案である。』
『(2)原判決は,控訴人らが管理著作物の演奏主体に当たると判断して,〈1〉被控訴人の差止め請求を認容し,〈2〉金銭請求について,i)控訴人Xにつき,平成20年6月18日から平成28年10月31日までの不法行為についての損害賠償金から既払金を控除した残額477万0876円(このうち51万3216円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する不法行為以後である同年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,ii)控訴人Yにつき,控訴人Xと連帯して,平成27年12月7日から平成28年10月31日までの不法行為についての損害賠償金51万3216円及びこれに対する不法行為以後である同年12月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,iii)控訴人らにつき,連帯して,同年11月1日から平成30年11月15日(原審口頭弁論終結日)までの不法行為についての損害賠償金105万8400円の各請求を認め,同月16日から上記著作物の使用終了に至るまでの不法行為に基づく損害賠償金又は不当利得金の将来請求に係る部分を却下し,その余の請求を棄却した。』
『(3)控訴人らは,被控訴人の請求を認容した部分を不服として控訴した。また,被控訴人は将来請求について却下した部分及び被控訴人の請求を棄却した部分を不服として附帯控訴した上で,〈2〉のi)の控訴人Xに対する請求を473万8677円(このうち52万2720円の限度で控訴人Yと連帯して)及びこれに対する平成28年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求に,〈2〉のiii)の控訴人らに対する将来請求について月4万7520円の割合による請求に,それぞれ拡張した。』
(3頁以下)
原審:静岡地方裁判所平成28年(ワ)第907号
<経緯>
2008.06 店舗開業
2014.09 原告が静岡地裁に仮処分命令申し立て
2015.01 仮処分決定、執行
2015.04 被告が仮処分決定取消し申し立て
2015.05 和解成立、店舗廃業
2015.07 営業再開
2016.11 原告が静岡地裁に本件提訴
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■判決内容
<争点>
1 侵害主体性
控訴人らの管理著作物の著作権侵害主体性に関する原審の判断が控訴審でも維持されています(16頁以下)。
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2 著作権法38条1項該当性
権利制限規定である38条1項(営利を目的としない上演等)の適用の肯否について、控訴審は非適用と判断しています(18頁)。
結論として、控訴人Xが本件店舗の本件各店において管理著作物に係る著作権を侵害したこと、控訴人Yは現SUQSUQにおいて管理著作物に係る著作権を侵害したこと、また、控訴人らにおける著作権侵害についての故意があることが認定されています。
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3 損害額
控訴人X 470万4605円
控訴人Y 51万3523円
控訴人XY連帯 153万2903円
(19頁以下)
なお、将来給付の訴えに関わる請求については、却下の判断となっています(27頁以下)。
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■コメント
原審の内容が確認できていないので、詳細は不明ですが、
「本件仮処分決定の執行がされたため,控訴人Xは,自分の経営名義ではいつまでも演奏ができず,一旦廃業して他人の名義で営業を再開すれば,本件仮処分決定の執行の対象となった楽器等も使用できるようになると考え,旧SUQSUQを閉店し,Aに相談してAの名義でPARADISEを開店した」(17頁)
とあるように、経営主体を変更するなどして違法状態を継続した事案です。
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■参考サイト
JASRACプレスリリース
「社交場の経営者らに対し著作権侵害行為の差止めと損害賠償を請求」(2016年11月11日)
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