最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
報道写真発信者情報開示請求事件
東京地裁令和1.5.17平成30(ワ)6060発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 吉野俊太郎
裁判官 今野智紀
*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:写真、著作物性、発信者情報開示請求
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■事案
報道写真の著作物性などが争点となった事案
原告:宗教法人
被告:プロバイダ
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件写真が著作物に当たるか
2 原告は本件写真の著作権者かどうか
3 本件各投稿写真は本件写真を複製したものか
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■事案の概要
『本件は,原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者らが,インターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する写真を掲載し,原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき,当該著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)
本件写真:平成30年8月22日付け聖教新聞に掲載された写真
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■判決内容
<争点>
1 本件写真が著作物に当たるか
本件写真は、原告の名誉会長夫妻が原告の施設に赴いた際に数十名の原告会員らが同施設前において同夫妻らに拍手をし、同夫妻らがこれに車中から応じる場面を撮影した報道写真でした。
本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、「時間的に動きがあり,空間的にも広がりがある場面を効果的に表現するため,撮影のアングル,シャッタースピード,タイミング,絞りなどにおいて工夫がされている」と認定。
本件写真は、撮影者の個性が現れており、撮影者の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たると判断しています(4頁)。
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2 原告は本件写真の著作権者かどうか
原告の聖教新聞社(原告の機関紙等の出版等の収益事業を行う部門)の職員であったAが、原告の業務として本件写真を撮影したこと、本件写真は聖教新聞社が平成30年8月22日付けで発行した聖教新聞のB名義のコラム上に掲載されたが、原告の就業規則には「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する。」と規定されていると裁判所は認定。
本件写真は、原告の「職員が職務上の行為として著作した著作物」として、結論としては、原告がその著作権を有すると認めています(4頁以下)。
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3 本件各投稿写真は本件写真を複製したものか
本件写真と本件各投稿写真を比較すると、原告名誉会長夫妻及び会員の配置、姿勢、背景、色彩、撮影アングルなどにおいて同一であるということができるとして、裁判所は、本件各投稿写真は本件写真を複製したものであると判断(5頁)。
結論として、本件発信者らが本件各記事に本件各投稿写真を掲載したことによって原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことが明らかであり、原告は本件発信者らに対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し、その権利を行使するために本件発信者情報の開示が必要であると判断。
原告の主張を認容しています。
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■コメント
ここ数年で写真の著作物性で否定の判断が裁判所で示されたのは、メガネ商品広告写真事件(知財高裁平成28.6.23平成28(ネ)10025売掛金請求控訴事件)でのメガネの商品広告写真、一竹辻が花美術館グッズ事件(東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件)の際の館内や美術館外観の写真といった程度ですが、スナップ写真の類いの写真については著作物性(創作性)が争点にならない日が早く来て欲しいと思っています。
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■過去のブログ記事
池田名誉会長写真発信者情報開示請求事件
東京地裁平成31.4.10平成30(ワ)38052発信者情報開示請求事件
2019年06月15日記事
報道写真発信者情報開示請求事件
東京地裁令和1.5.17平成30(ワ)6060発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官 吉野俊太郎
裁判官 今野智紀
*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:写真、著作物性、発信者情報開示請求
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■事案
報道写真の著作物性などが争点となった事案
原告:宗教法人
被告:プロバイダ
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■結論
請求認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 本件写真が著作物に当たるか
2 原告は本件写真の著作権者かどうか
3 本件各投稿写真は本件写真を複製したものか
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■事案の概要
『本件は,原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者らが,インターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する写真を掲載し,原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づき,当該著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)
本件写真:平成30年8月22日付け聖教新聞に掲載された写真
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■判決内容
<争点>
1 本件写真が著作物に当たるか
本件写真は、原告の名誉会長夫妻が原告の施設に赴いた際に数十名の原告会員らが同施設前において同夫妻らに拍手をし、同夫妻らがこれに車中から応じる場面を撮影した報道写真でした。
本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、「時間的に動きがあり,空間的にも広がりがある場面を効果的に表現するため,撮影のアングル,シャッタースピード,タイミング,絞りなどにおいて工夫がされている」と認定。
本件写真は、撮影者の個性が現れており、撮影者の思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たると判断しています(4頁)。
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2 原告は本件写真の著作権者かどうか
原告の聖教新聞社(原告の機関紙等の出版等の収益事業を行う部門)の職員であったAが、原告の業務として本件写真を撮影したこと、本件写真は聖教新聞社が平成30年8月22日付けで発行した聖教新聞のB名義のコラム上に掲載されたが、原告の就業規則には「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する。」と規定されていると裁判所は認定。
本件写真は、原告の「職員が職務上の行為として著作した著作物」として、結論としては、原告がその著作権を有すると認めています(4頁以下)。
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3 本件各投稿写真は本件写真を複製したものか
本件写真と本件各投稿写真を比較すると、原告名誉会長夫妻及び会員の配置、姿勢、背景、色彩、撮影アングルなどにおいて同一であるということができるとして、裁判所は、本件各投稿写真は本件写真を複製したものであると判断(5頁)。
結論として、本件発信者らが本件各記事に本件各投稿写真を掲載したことによって原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことが明らかであり、原告は本件発信者らに対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し、その権利を行使するために本件発信者情報の開示が必要であると判断。
原告の主張を認容しています。
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■コメント
ここ数年で写真の著作物性で否定の判断が裁判所で示されたのは、メガネ商品広告写真事件(知財高裁平成28.6.23平成28(ネ)10025売掛金請求控訴事件)でのメガネの商品広告写真、一竹辻が花美術館グッズ事件(東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件)の際の館内や美術館外観の写真といった程度ですが、スナップ写真の類いの写真については著作物性(創作性)が争点にならない日が早く来て欲しいと思っています。
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■過去のブログ記事
池田名誉会長写真発信者情報開示請求事件
東京地裁平成31.4.10平成30(ワ)38052発信者情報開示請求事件
2019年06月15日記事