最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
水尾ゆずの里映像事件(控訴審)
大阪高裁平成31.3.14平成30(ネ)1709映像著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 中尾 彰
裁判官 三井教匡
*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:映画、著作権の帰属、組合、合有、使用許諾
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■事案
京都市右京区嵯峨水尾地域の振興にあたって製作された映像等の取扱いに関する事案
控訴人(1審原告) :放送番組企画制作会社
被控訴人(1審被告):食品製造販売会社、元代表取締役P1
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、23条
1 本件各ゆずの里映像の著作権の帰属
2 本件各ゆずの里映像等の著作権の譲渡の有無
3 本件各ゆずの里映像等の使用許諾の有無
4 本件貴船神社映像の複製、使用の有無
5 本件P4さん映像の複製、使用の有無
6 本件P4さん映像の使用許諾の有無
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,被控訴人らに対し,原判決別紙著作権目録(以下「本件目録」という。)記載一の1から9まで,同二及び同三の各映像(DVDに記録された映画)並びに同四の1及び2の各写真(以下,併せて「本件各著作物」という。)について,控訴人が著作権を有しているとした上で,被控訴人らが被控訴人会社のウェブサイトに掲載(公衆送信)するなどして控訴人の著作権を侵害していると主張して,著作権法112条に基づく本件各著作物の複製,使用の差止め,不法行為に基づく損害賠償金1406万7000円及び平成22年5月1日(不法行為の日)から使用の中止及び著作物の廃棄まで月1万円の割合による金員(ただし,月20万円の割合による金員の一部)の支払を求めている事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したが,これを不服とした控訴人が控訴を提起した。
』
<経緯>
H20 被控訴人会社創業100周年記念パーティー開催
H21 P1P2P3によりゆず姫有限責任事業組合成立
H22 控訴人代表者P3が本件ゆずの里映像等を制作
被控訴人会社の通販サイトで本件ゆずの里映像等を掲載
H25 P3が貴船神社映像を作成、控訴人が映像DVDを製作
H25 P3が本件P4さん映像作成、被控訴人会社のウェブサイトに掲載
原審:京都地方裁判所平成28年(ワ)第2247号
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■判決内容
<争点>
1 本件各ゆずの里映像の著作権の帰属
映画を収めたDVDは、第5版以降には本件組合の名称がDVDの表面及び記録された映像に表示されており、また、第7版には「製作著作 ゆず姫有限責任事業組合」と記載されていました。
この点から、裁判所は、本件各ゆずの里映像のうち本件各ゆずの里映像の第5版以降は、本件組合が企画しその責任をもって製作したものであり、P3はその著作者としてその製作に参加したものということができると判断。
本件各ゆずの里映像のうち、第5版以降に係る著作権については、本件組合の組合員に合有的に帰属すると判断しています。
また、第1版から第4版にかかる著作権についても、その習作的内容や経緯から、本件組合の成立に従い、組合員に合有的に帰属するよう了解されていたものと認めるのが相当であると判断しています(15頁以下)。
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2 本件各ゆずの里映像等の著作権の譲渡の有無
被控訴人らは、仮に本件各ゆずの里映像に関する著作権が控訴人に帰属するとしても、控訴人が被控訴人P1に対して本件各写真を含めて本件各ゆずの里映像等の著作権を譲渡したと主張しました。
この点について、裁判所は、何らの対価を得ることもなく控訴人が本件各ゆずの里映像等の著作権を他に譲渡するとは考えられず、これを認めるに足りる証拠もないとして被控訴人らの主張を認めていません(16頁)。
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3 本件各ゆずの里映像等の使用許諾の有無
仮に、本件各ゆずの里映像にかかる著作権が控訴人に帰属するとしても、通販サイトを含めて使用することが当然予定されていたとして、控訴人は被控訴人らに対して本件ゆずの里映像等の使用を許諾したと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(16頁以下)。
結論として、本件各ゆずの里映像等に係る著作権が控訴人に帰属するとしても、被控訴人らが控訴人の著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています。
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4 本件貴船神社映像の複製、使用の有無
P3が本件貴船神社映像を製作し、控訴人が映像を記録したDVDを製作したこと、控訴人はDVDを被控訴人らに交付し、貴船神社奉賛会において試写されたことが認められるものの、被控訴人らが本件貴船神社映像を複製し、もしくは公衆送信などにより使用したことを認めるに足りる証拠はなく、被控訴人らが本件貴船神社映像に係る著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています(18頁)。
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5 本件P4さん映像の複製、使用の有無
P3は、被控訴人会社の依頼に基づいて本件P4さん映像の素材となる映像を撮影し、これを編集して中国語ウェブサイト用の本件P4さん映像を作成し、控訴人は映像を記録したDVDを製作し、平成25年1月28日頃、被控訴人P1に対してこれを納品したことから(完成版の日付は同年2月15日)、その後、被控訴人会社が、本件P4さん映像をその目的の範囲内で複製し、もしくは公衆送信などにより使用したことが裁判所において認定されています(19頁)。
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6 本件P4さん映像の使用許諾の有無
被控訴人会社は、控訴人から本件P4さん映像を記録したDVDを受領し、中国用ホームページ映像製作一式として18万円を支払ったことが認められることから、少なくとも前記争点5の使用を控訴人が許諾していると裁判所は判断(19頁)。
結論として、被控訴人らが本件P4さん映像に係る著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています。
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■コメント
地域振興のために製作された映像の取扱いについて関係者間で紛争となった事案となります。
水尾ゆずの里映像事件(控訴審)
大阪高裁平成31.3.14平成30(ネ)1709映像著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官 中尾 彰
裁判官 三井教匡
*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:映画、著作権の帰属、組合、合有、使用許諾
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■事案
京都市右京区嵯峨水尾地域の振興にあたって製作された映像等の取扱いに関する事案
控訴人(1審原告) :放送番組企画制作会社
被控訴人(1審被告):食品製造販売会社、元代表取締役P1
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法21条、23条
1 本件各ゆずの里映像の著作権の帰属
2 本件各ゆずの里映像等の著作権の譲渡の有無
3 本件各ゆずの里映像等の使用許諾の有無
4 本件貴船神社映像の複製、使用の有無
5 本件P4さん映像の複製、使用の有無
6 本件P4さん映像の使用許諾の有無
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,被控訴人らに対し,原判決別紙著作権目録(以下「本件目録」という。)記載一の1から9まで,同二及び同三の各映像(DVDに記録された映画)並びに同四の1及び2の各写真(以下,併せて「本件各著作物」という。)について,控訴人が著作権を有しているとした上で,被控訴人らが被控訴人会社のウェブサイトに掲載(公衆送信)するなどして控訴人の著作権を侵害していると主張して,著作権法112条に基づく本件各著作物の複製,使用の差止め,不法行為に基づく損害賠償金1406万7000円及び平成22年5月1日(不法行為の日)から使用の中止及び著作物の廃棄まで月1万円の割合による金員(ただし,月20万円の割合による金員の一部)の支払を求めている事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したが,これを不服とした控訴人が控訴を提起した。
』
<経緯>
H20 被控訴人会社創業100周年記念パーティー開催
H21 P1P2P3によりゆず姫有限責任事業組合成立
H22 控訴人代表者P3が本件ゆずの里映像等を制作
被控訴人会社の通販サイトで本件ゆずの里映像等を掲載
H25 P3が貴船神社映像を作成、控訴人が映像DVDを製作
H25 P3が本件P4さん映像作成、被控訴人会社のウェブサイトに掲載
原審:京都地方裁判所平成28年(ワ)第2247号
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■判決内容
<争点>
1 本件各ゆずの里映像の著作権の帰属
映画を収めたDVDは、第5版以降には本件組合の名称がDVDの表面及び記録された映像に表示されており、また、第7版には「製作著作 ゆず姫有限責任事業組合」と記載されていました。
この点から、裁判所は、本件各ゆずの里映像のうち本件各ゆずの里映像の第5版以降は、本件組合が企画しその責任をもって製作したものであり、P3はその著作者としてその製作に参加したものということができると判断。
本件各ゆずの里映像のうち、第5版以降に係る著作権については、本件組合の組合員に合有的に帰属すると判断しています。
また、第1版から第4版にかかる著作権についても、その習作的内容や経緯から、本件組合の成立に従い、組合員に合有的に帰属するよう了解されていたものと認めるのが相当であると判断しています(15頁以下)。
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2 本件各ゆずの里映像等の著作権の譲渡の有無
被控訴人らは、仮に本件各ゆずの里映像に関する著作権が控訴人に帰属するとしても、控訴人が被控訴人P1に対して本件各写真を含めて本件各ゆずの里映像等の著作権を譲渡したと主張しました。
この点について、裁判所は、何らの対価を得ることもなく控訴人が本件各ゆずの里映像等の著作権を他に譲渡するとは考えられず、これを認めるに足りる証拠もないとして被控訴人らの主張を認めていません(16頁)。
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3 本件各ゆずの里映像等の使用許諾の有無
仮に、本件各ゆずの里映像にかかる著作権が控訴人に帰属するとしても、通販サイトを含めて使用することが当然予定されていたとして、控訴人は被控訴人らに対して本件ゆずの里映像等の使用を許諾したと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(16頁以下)。
結論として、本件各ゆずの里映像等に係る著作権が控訴人に帰属するとしても、被控訴人らが控訴人の著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています。
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4 本件貴船神社映像の複製、使用の有無
P3が本件貴船神社映像を製作し、控訴人が映像を記録したDVDを製作したこと、控訴人はDVDを被控訴人らに交付し、貴船神社奉賛会において試写されたことが認められるものの、被控訴人らが本件貴船神社映像を複製し、もしくは公衆送信などにより使用したことを認めるに足りる証拠はなく、被控訴人らが本件貴船神社映像に係る著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています(18頁)。
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5 本件P4さん映像の複製、使用の有無
P3は、被控訴人会社の依頼に基づいて本件P4さん映像の素材となる映像を撮影し、これを編集して中国語ウェブサイト用の本件P4さん映像を作成し、控訴人は映像を記録したDVDを製作し、平成25年1月28日頃、被控訴人P1に対してこれを納品したことから(完成版の日付は同年2月15日)、その後、被控訴人会社が、本件P4さん映像をその目的の範囲内で複製し、もしくは公衆送信などにより使用したことが裁判所において認定されています(19頁)。
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6 本件P4さん映像の使用許諾の有無
被控訴人会社は、控訴人から本件P4さん映像を記録したDVDを受領し、中国用ホームページ映像製作一式として18万円を支払ったことが認められることから、少なくとも前記争点5の使用を控訴人が許諾していると裁判所は判断(19頁)。
結論として、被控訴人らが本件P4さん映像に係る著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています。
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■コメント
地域振興のために製作された映像の取扱いについて関係者間で紛争となった事案となります。