最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「フォントロム」タイプフェイス事件
東京地裁平成31.2.28平成29(ワ)27741損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 横山真通
裁判官 奥 俊彦
*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:タイプフェイス、著作物性、利用許諾契約
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■事案
映画パンフレットなどに利用されたタイプフェイスの著作物性が争点となった事案
原告:広告制作会社
被告:映画製作配給会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号
1 本件タイプフェイスの著作物性の有無
2 ライセンス(利用許諾)の抗弁の成否
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■事案の概要
『本件は,原告が,自ら制作した別紙・タイプフェイス目録1及び2記載の各タイプフェイス(以下「本件タイプフェイス」という。)につき著作権を有するところ,被告において配給上映した映画の予告編やパンフレット,ポスター,ポストカード,Tシャツ等に本件タイプフェイスの一部の文字を無断で利用したことが,上記著作権(支分権としては複製権の主張と解される。)の侵害に当たると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金400万円(966万2000円の一部請求)及びこれに対する不法行為後の平成29年1月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
本件映画:映画「ジギー・スターダスト−Ziggy Stardust And The Spiders From Mars−」
<経緯>
S48 デヴィッド・ボウイ出演の映画がイギリスで製作
H11 デジタローグ社が「フォントパビリオン」販売
H13 Aが「フォントパビリオン」購入
H14 原告がDEX社とデータ提供基本契約締結
DEX社が「フォントロム」販売
H29 被告が本件映画を製作配給上映
Aがパンフレット、Tシャツ等を制作
H29 被告が本件提訴
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■判決内容
<争点>
1 本件タイプフェイスの著作物性の有無
裁判所は、本件タイプフェイスの著作物性(著作権法2条1項1号)について、印刷用書体ゴナU事件最高裁判決(最高裁平成10(受)332平成12年9月7日第一小判決)に言及した上で、被告によって利用された文字に限って検討を行っています。
結論として、本件タイプフェイスは独創性を備えているということはできず、また、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということもできないとして、著作物に当たると認めることはできないと判断しています(9頁以下)。
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2 ライセンス(利用許諾)の抗弁の成否
争点1で本件タイプフェイスの著作物性が否定されたことから、原告の主張は認められていませんが、被告のライセンスの抗弁について、念のため検討がされています(11頁以下)。
この点について、裁判所は、Aは自ら「フォントパビリオン」を正規に購入してこれに収録されていた本件フォントを使用して本件パンフレット等を制作したものであり、「フォントパビリオン」内に記録された本件フォントに係る説明書のファイルには「使用の制限はとくにありません」と明記されていたことからすれば、「フォントパビリオン」を正規に購入した者が本件フォントにより表示される本件タイプフェイスを利用することは何ら制限されていなかったものということができると認定。
結論として、被告がデザイナーであるAを通じてした本件タイプフェイスの利用は、本件タイプフェイスの制作者が許諾した範囲内の行為であって、ライセンスの抗弁が成立するものと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(11頁以下)。
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■コメント
本件タイプフェイスの制作者(著作者)が認定されておらず、経緯がいまひとつはっきりしない部分がありますが、いずれにしても(争点としては傍論ですが)フォントパッケージの購入の有無という事実認定がポイントとなった事案です。
なお、判決文末尾の別紙に掲載されたタイプフェイスをみてみると、個々の文字に著作物性を認めるのは難しい印象です。
「フォントロム」タイプフェイス事件
東京地裁平成31.2.28平成29(ワ)27741損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 横山真通
裁判官 奥 俊彦
*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:タイプフェイス、著作物性、利用許諾契約
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■事案
映画パンフレットなどに利用されたタイプフェイスの著作物性が争点となった事案
原告:広告制作会社
被告:映画製作配給会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号
1 本件タイプフェイスの著作物性の有無
2 ライセンス(利用許諾)の抗弁の成否
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■事案の概要
『本件は,原告が,自ら制作した別紙・タイプフェイス目録1及び2記載の各タイプフェイス(以下「本件タイプフェイス」という。)につき著作権を有するところ,被告において配給上映した映画の予告編やパンフレット,ポスター,ポストカード,Tシャツ等に本件タイプフェイスの一部の文字を無断で利用したことが,上記著作権(支分権としては複製権の主張と解される。)の侵害に当たると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金400万円(966万2000円の一部請求)及びこれに対する不法行為後の平成29年1月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
本件映画:映画「ジギー・スターダスト−Ziggy Stardust And The Spiders From Mars−」
<経緯>
S48 デヴィッド・ボウイ出演の映画がイギリスで製作
H11 デジタローグ社が「フォントパビリオン」販売
H13 Aが「フォントパビリオン」購入
H14 原告がDEX社とデータ提供基本契約締結
DEX社が「フォントロム」販売
H29 被告が本件映画を製作配給上映
Aがパンフレット、Tシャツ等を制作
H29 被告が本件提訴
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■判決内容
<争点>
1 本件タイプフェイスの著作物性の有無
裁判所は、本件タイプフェイスの著作物性(著作権法2条1項1号)について、印刷用書体ゴナU事件最高裁判決(最高裁平成10(受)332平成12年9月7日第一小判決)に言及した上で、被告によって利用された文字に限って検討を行っています。
結論として、本件タイプフェイスは独創性を備えているということはできず、また、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということもできないとして、著作物に当たると認めることはできないと判断しています(9頁以下)。
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2 ライセンス(利用許諾)の抗弁の成否
争点1で本件タイプフェイスの著作物性が否定されたことから、原告の主張は認められていませんが、被告のライセンスの抗弁について、念のため検討がされています(11頁以下)。
この点について、裁判所は、Aは自ら「フォントパビリオン」を正規に購入してこれに収録されていた本件フォントを使用して本件パンフレット等を制作したものであり、「フォントパビリオン」内に記録された本件フォントに係る説明書のファイルには「使用の制限はとくにありません」と明記されていたことからすれば、「フォントパビリオン」を正規に購入した者が本件フォントにより表示される本件タイプフェイスを利用することは何ら制限されていなかったものということができると認定。
結論として、被告がデザイナーであるAを通じてした本件タイプフェイスの利用は、本件タイプフェイスの制作者が許諾した範囲内の行為であって、ライセンスの抗弁が成立するものと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(11頁以下)。
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■コメント
本件タイプフェイスの制作者(著作者)が認定されておらず、経緯がいまひとつはっきりしない部分がありますが、いずれにしても(争点としては傍論ですが)フォントパッケージの購入の有無という事実認定がポイントとなった事案です。
なお、判決文末尾の別紙に掲載されたタイプフェイスをみてみると、個々の文字に著作物性を認めるのは難しい印象です。