最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
店舗デザイン設計監理業務委託契約事件
東京地裁令和1.5.21平成29(ワ)37350標章使用差止請求反訴事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 安岡美香子
裁判官 佐藤雅浩
*裁判所サイト公表 2019.6.3
*キーワード:店舗デザイン設計監理業務、ロゴ、ピクトグラム、包括的使用許諾、複製、翻案
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■事案
店舗デザイン設計監理業務に関して制作したロゴやピクトグラムの使用料の取扱いが争点となった事案
反訴原告:デザイン事務所
反訴被告:古物販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法21条、27条、商標法29条
1 反訴原告反訴被告間の合意の内容
2 反訴原告反訴被告間の合意に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
3 著作権法112条等に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
--------------------
■事案の概要
『本件は,別紙反訴原告標章目録,同反訴原告関連標章目録及び同反訴原告関連標章追加目録記載の各標章(ただし,反訴原告標章目録0記載の標章を除く。)並びに別紙反訴原告ピクトグラム目録及び同反訴原告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムの著作権者であると主張する反訴原告が,反訴原告が作成した上記各標章及びピクトグラム並びにそれらに類似等する反訴被告が作成等した別紙反訴被告標章目録記載の各標章(ただし,反訴被告標章目録0記載の標章を除く。)及び同反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムを使用する反訴被告に対し,反訴原告及び反訴被告間の合意,著作権法112条又は商標法29条に基づき,別紙反訴原告標章目録,同反訴原告関連標章目録,同反訴原告関連標章追加目録及び同反訴被告標章目録記載の各標章並びに別紙反訴原告ピクトグラム目録,同反訴原告ピクトグラム追加目録及び同反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムについて,展示その他の使用行為の差止め及び店舗における表示の抹消等を求める事案である。』
『なお,反訴被告は,反訴原告に対し,本件訴訟で対象とされている標章及びピクトグラムの一部について著作権法112条1項及び2項に基づく差止請求権が存在しないことの確認を求める債務不存在確認請求訴訟(当庁平成29年(ワ)第24964号)を提起していたが,第7回弁論準備手続期日において同訴訟を取り下げ,反訴原告はそれに同意した。』
(3頁)
<経緯>
H04 反訴原告が反訴被告から店舗デザイン設計監理業務を受託
H29 反訴被告がアークスペースと店舗デザイン設計監理業務委託契約締結
H29 反訴被告が債務不存在確認請求訴訟(当庁平成29年(ワ)24964)提起
第7回弁論準備手続期日に同訴訟取り下げ、反訴原告同意
H29 反訴原告が損害賠償請求訴訟(新潟地裁新発田支部平成29年(ワ)76)提起
反訴原告標章(一部):
・反訴原告標章1、反訴原告関連標章1−1ないし1−4、反訴原告標章2、反訴原告関連標章2−1ないし2−4
「H君」(「H」の文字を人間に見立て、両足、顔、耳、口、両手を連想させる装飾を施した部分)
・反訴原告標章5
ボックスボイテル型の瓶のシルエット
・反訴原告関連標章0−8
エレキギターの黒塗りイラスト
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■判決内容
<争点>
1 反訴原告反訴被告間の合意の内容
反訴原告は、反訴原告と反訴被告との間において、反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章、反訴被告ピクトグラムに関して、反訴原告は反訴被告に対して上記各標章及び各ピクトグラムの使用を無償で許諾し、これらのデザイン制作料、使用料を請求しないものの、反訴被告が反訴原告に直営店、フランチャイズ店の店舗設計業務の委託を止めた場合は、反訴原告の反訴被告に対する上記各標章、ピクトグラムの無償使用許諾は終了する旨の合意があったと主張しました(23頁以下)。
この点について、裁判所は、合意に関する書面がないこと、また、取引状況等から反訴原告と反訴被告間では反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについて、別途、制作料、使用料を支払わずに使用し続けることができる旨の合意があったと認めることが相当であると判断。
結論として、反訴被告が別途、制作料、使用料を支払わない旨の合意について、何らかの条件が成就した場合にこれが終了することについて、当事者間で合意が成立したと認めることはできないと判断しています。
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2 反訴原告反訴被告間の合意に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
(1)反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについて
反訴原告と反訴被告間には、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを別途、制作料、使用料を支払わずに使用し続けることができる旨の合意があったと認められることから、反訴原告と反訴被告と間に反訴原告が主張する内容の合意があることを前提とした、合意に基づく反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの使用等の差止めを求める反訴原告の請求は理由がないと裁判所は判断しています(26頁以下)。
(2)反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムについて
平成28年9月以降に反訴原告に委託することなく制作された反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムについて、反訴原告は、反訴原告が主張する内容の合意があることを前提として、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムが反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムと同一であるか著しく類似すると主張して、反訴被告に対して反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを請求しましたが、反訴原告が主張する内容の合意は認められないことから、裁判所は、この点についても反訴原告の主張を認めていません。
結論として、裁判所は、反訴原告と反訴被告との合意に基づいて反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用の差止めを求める反訴原告の請求には理由がないと判断しています。
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3 著作権法112条等に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
反訴原告は、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムは反訴原告の著作物であるから、平成29年6月1日以降に反訴被告が反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムを使用等することは、反訴原告の著作権を侵害するなどと主張しました(27頁以下)。
(1)反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴原告標章3及び4と同一である反訴被告標章3及び4について
裁判所は、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴原告標章3及び4と同一である反訴被告標章3及び4は、別途、制作料、使用料を支払うことなく使い続けられる旨の合意に基づき、反訴被告はそれらについて使用することができることから、この点についての反訴原告の主張を認めていません。
また、解除や債務不履行、商標法29条に関する反訴原告の主張も認められていません。
(2)反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムについて
これらは反訴原告において制作したものではなく、前記の合意の対象となっているとは認められないことから、これらが反訴原告の著作権を侵害するものであるかが裁判所において検討されています(29頁以下)。
(A)反訴被告標章1、2及び5について
・共通点について
『反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分についてみると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「OFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くような装飾が施されていることなどで共通している』(29頁)
・創作性について
『反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するものであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,いずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれたものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。』
以上から、裁判所は、反訴原告標章1と反訴被告標章1は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても、反訴被告標章1を作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえないと裁判所は判断。また、上記と同様の理由から、反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても、反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではないと判断しています。
(B)反訴被告ピクトグラムについて
『反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そして,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表現が異なる反訴原告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ないし4−03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれを表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表している点において共通するにとどまるといえるものである。』(30頁)
『また,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度,複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これらは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得るありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。』
などの点から、裁判所は、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著作物であるとしても、反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではないと判断しています。
結論として、反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムの作成、使用等は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえず、著作権法112条1項に基づき反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを求める反訴原告の請求は認められていません。
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■コメント
リサイクルショップなどで利用するロゴやピクトグラムの使用に関する契約上の紛争事案です。
別訴で従業員引き抜きの不法行為による損害賠償請求訴訟を提起していることから、事情は複雑です。
標章についてデザインが判決文に添付されていないため、デザインの具体的な内容がよくわかりません。
反訴被告のウェブサイト(https://www.hardoff.co.jp/hardoff/)をみますと、リサイクルショップでオーディオやカメラ、パソコン、カメラといった取扱い商品のピクトグラムが掲載されているので、どのようなピクトグラムだったのか、一応、イメージとして参考になります。
なお、反訴被告のIR情報に訴訟の件は言及されていません(事業等のリスクとして認識されていない事象)。
店舗デザイン設計監理業務委託契約事件
東京地裁令和1.5.21平成29(ワ)37350標章使用差止請求反訴事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 安岡美香子
裁判官 佐藤雅浩
*裁判所サイト公表 2019.6.3
*キーワード:店舗デザイン設計監理業務、ロゴ、ピクトグラム、包括的使用許諾、複製、翻案
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■事案
店舗デザイン設計監理業務に関して制作したロゴやピクトグラムの使用料の取扱いが争点となった事案
反訴原告:デザイン事務所
反訴被告:古物販売会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、27条、商標法29条
1 反訴原告反訴被告間の合意の内容
2 反訴原告反訴被告間の合意に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
3 著作権法112条等に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
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■事案の概要
『本件は,別紙反訴原告標章目録,同反訴原告関連標章目録及び同反訴原告関連標章追加目録記載の各標章(ただし,反訴原告標章目録0記載の標章を除く。)並びに別紙反訴原告ピクトグラム目録及び同反訴原告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムの著作権者であると主張する反訴原告が,反訴原告が作成した上記各標章及びピクトグラム並びにそれらに類似等する反訴被告が作成等した別紙反訴被告標章目録記載の各標章(ただし,反訴被告標章目録0記載の標章を除く。)及び同反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムを使用する反訴被告に対し,反訴原告及び反訴被告間の合意,著作権法112条又は商標法29条に基づき,別紙反訴原告標章目録,同反訴原告関連標章目録,同反訴原告関連標章追加目録及び同反訴被告標章目録記載の各標章並びに別紙反訴原告ピクトグラム目録,同反訴原告ピクトグラム追加目録及び同反訴被告ピクトグラム追加目録記載の各ピクトグラムについて,展示その他の使用行為の差止め及び店舗における表示の抹消等を求める事案である。』
『なお,反訴被告は,反訴原告に対し,本件訴訟で対象とされている標章及びピクトグラムの一部について著作権法112条1項及び2項に基づく差止請求権が存在しないことの確認を求める債務不存在確認請求訴訟(当庁平成29年(ワ)第24964号)を提起していたが,第7回弁論準備手続期日において同訴訟を取り下げ,反訴原告はそれに同意した。』
(3頁)
<経緯>
H04 反訴原告が反訴被告から店舗デザイン設計監理業務を受託
H29 反訴被告がアークスペースと店舗デザイン設計監理業務委託契約締結
H29 反訴被告が債務不存在確認請求訴訟(当庁平成29年(ワ)24964)提起
第7回弁論準備手続期日に同訴訟取り下げ、反訴原告同意
H29 反訴原告が損害賠償請求訴訟(新潟地裁新発田支部平成29年(ワ)76)提起
反訴原告標章(一部):
・反訴原告標章1、反訴原告関連標章1−1ないし1−4、反訴原告標章2、反訴原告関連標章2−1ないし2−4
「H君」(「H」の文字を人間に見立て、両足、顔、耳、口、両手を連想させる装飾を施した部分)
・反訴原告標章5
ボックスボイテル型の瓶のシルエット
・反訴原告関連標章0−8
エレキギターの黒塗りイラスト
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■判決内容
<争点>
1 反訴原告反訴被告間の合意の内容
反訴原告は、反訴原告と反訴被告との間において、反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章、反訴被告ピクトグラムに関して、反訴原告は反訴被告に対して上記各標章及び各ピクトグラムの使用を無償で許諾し、これらのデザイン制作料、使用料を請求しないものの、反訴被告が反訴原告に直営店、フランチャイズ店の店舗設計業務の委託を止めた場合は、反訴原告の反訴被告に対する上記各標章、ピクトグラムの無償使用許諾は終了する旨の合意があったと主張しました(23頁以下)。
この点について、裁判所は、合意に関する書面がないこと、また、取引状況等から反訴原告と反訴被告間では反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについて、別途、制作料、使用料を支払わずに使用し続けることができる旨の合意があったと認めることが相当であると判断。
結論として、反訴被告が別途、制作料、使用料を支払わない旨の合意について、何らかの条件が成就した場合にこれが終了することについて、当事者間で合意が成立したと認めることはできないと判断しています。
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2 反訴原告反訴被告間の合意に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
(1)反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムについて
反訴原告と反訴被告間には、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムを別途、制作料、使用料を支払わずに使用し続けることができる旨の合意があったと認められることから、反訴原告と反訴被告と間に反訴原告が主張する内容の合意があることを前提とした、合意に基づく反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムの使用等の差止めを求める反訴原告の請求は理由がないと裁判所は判断しています(26頁以下)。
(2)反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムについて
平成28年9月以降に反訴原告に委託することなく制作された反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムについて、反訴原告は、反訴原告が主張する内容の合意があることを前提として、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムが反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムと同一であるか著しく類似すると主張して、反訴被告に対して反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを請求しましたが、反訴原告が主張する内容の合意は認められないことから、裁判所は、この点についても反訴原告の主張を認めていません。
結論として、裁判所は、反訴原告と反訴被告との合意に基づいて反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムの使用の差止めを求める反訴原告の請求には理由がないと判断しています。
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3 著作権法112条等に基づく反訴原告標章等の使用等の差止めの可否
反訴原告は、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラムは反訴原告の著作物であるから、平成29年6月1日以降に反訴被告が反訴原告標章、反訴原告ピクトグラム、反訴被告標章及び反訴被告ピクトグラムを使用等することは、反訴原告の著作権を侵害するなどと主張しました(27頁以下)。
(1)反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴原告標章3及び4と同一である反訴被告標章3及び4について
裁判所は、反訴原告標章及び反訴原告ピクトグラム並びに反訴原告標章3及び4と同一である反訴被告標章3及び4は、別途、制作料、使用料を支払うことなく使い続けられる旨の合意に基づき、反訴被告はそれらについて使用することができることから、この点についての反訴原告の主張を認めていません。
また、解除や債務不履行、商標法29条に関する反訴原告の主張も認められていません。
(2)反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムについて
これらは反訴原告において制作したものではなく、前記の合意の対象となっているとは認められないことから、これらが反訴原告の著作権を侵害するものであるかが裁判所において検討されています(29頁以下)。
(A)反訴被告標章1、2及び5について
・共通点について
『反訴被告標章1と反訴原告標章1が同一性を有する部分についてみると,これらは,深緑色の長方形(横長)の中に白いアルファベット文字が配置されていること,そのアルファベット文字の書体,大きさ,文字間の間隔及び配置のバランス,全ての文字が円の構成要素とされていること,「OFF」と「USE」のアルファベット文字の上部に三つの白丸で弧を描くような装飾が施されていることなどで共通している』(29頁)
・創作性について
『反訴被告標章1と反訴原告標章1のアルファベット文字は,いずれも「オフハウス」という名称をよりよく周知,伝達するという実用的な機能を有するものであることを離れて,それらが鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えるに至っているとは認められない。また,その余の共通点については,いずれもアイデアが共通するにとどまるというべきであり,仮にアイデアの組合せを新たな表現として評価する余地があるとしても,それらはありふれたものであるといわざるを得ないから創作性は認められない。』
以上から、裁判所は、反訴原告標章1と反訴被告標章1は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、仮に反訴原告標章1が著作物であるとしても、反訴被告標章1を作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえないと裁判所は判断。また、上記と同様の理由から、反訴被告標章2及び5を作成等する行為についても、反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではないと判断しています。
(B)反訴被告ピクトグラムについて
『反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,いずれも,反訴被告で取り扱う商品である具体的な工業製品の外観を示した図といえるものである。そして,これらは,Tシャツの前部中央に表示された表現が異なる反訴原告ピクトグラム4−01ないし4−03及び反訴被告ピクトグラム4−01ないし4−03を除く全てについて,具体的な形状が異なる製品を選択してこれを表現したものである。したがって,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは,基本的に,同じジャンルの製品を選択してその外観を表している点において共通するにとどまるといえるものである。』(30頁)
『また,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムにおいて,選択された製品の配置の角度,複数の製品の種類の選択,レイアウトにおいて共通するものはあるが,これらは,いずれも,アイデアであるか同種の表現を行うに当たり通常考え得るありふれた表現といえるものであり,反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムが創作性のある部分において共通するとはいえない。』
などの点から、裁判所は、反訴原告ピクトグラムと反訴被告ピクトグラムは表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないとして、仮に反訴原告ピクトグラムの全部又はその一部が著作物であるとしても、反訴被告ピクトグラムを作成等する行為は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものではないと判断しています。
結論として、反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムの作成、使用等は反訴原告の複製権又は翻案権を侵害するものとはいえず、著作権法112条1項に基づき反訴被告標章1、2及び5並びに反訴被告ピクトグラムの使用等の差止めを求める反訴原告の請求は認められていません。
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■コメント
リサイクルショップなどで利用するロゴやピクトグラムの使用に関する契約上の紛争事案です。
別訴で従業員引き抜きの不法行為による損害賠償請求訴訟を提起していることから、事情は複雑です。
標章についてデザインが判決文に添付されていないため、デザインの具体的な内容がよくわかりません。
反訴被告のウェブサイト(https://www.hardoff.co.jp/hardoff/)をみますと、リサイクルショップでオーディオやカメラ、パソコン、カメラといった取扱い商品のピクトグラムが掲載されているので、どのようなピクトグラムだったのか、一応、イメージとして参考になります。
なお、反訴被告のIR情報に訴訟の件は言及されていません(事業等のリスクとして認識されていない事象)。