最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ASKA未公表楽曲事件
東京地裁平成30.12.11平成29(ワ)27374損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 横山真通
裁判官 高桜慎平
*裁判所サイト公表 2019.1.8
*キーワード:公表権、黙示の承諾、時事の事件の報道、引用、違法性阻却
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■事案
未公表楽曲の無断公表が時事の事件の報道などに該当するかどうかが争点となった事案
原告:歌手
被告:テレビ局、芸能レポーター
--------------------
■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法18条、41条、32条、114条3項
1 本件楽曲は未公表の著作物であったか
2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか
3 被告らによる公衆送信行為は時事の事件の報道のための利用に当たるか
4 被告らによる公衆送信行為は引用に当たるか
5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
6 被告レポーターは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか
7 故意・過失の存否
8 損害論
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■事案の概要
『本件は,作曲等の音楽活動を行う原告が,被告讀賣テレビの放送番組に出演していた被告Bにおいて原告の創作した未発表の楽曲の一部を原告の許諾なく同番組内で再生したことにより,被告らが共同して上記楽曲に係る原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)を侵害したと主張して,被告らに対し,民法719条(共同不法行為)及び著作権法(以下「法」という。)114条3項に基づき,損害賠償金3307万0400円及びこれに対する不法行為後である平成28年11月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H26.09 原告が覚せい剤取締法違反等罪で有罪判決
H27.09 原告が本件楽曲を創作
H27.12 原告が被告レポーターに本件楽曲の録音データをメール送信
H28.11 被告テレビ局の生放送番組で被告レポーターが本件録音データを再生
本件楽曲:「1964to2020東京Olympic」
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■判決内容
<争点>
1 本件楽曲は未公表の著作物であったか
被告らは、原告が芸能リポーターである被告Bに対して本件録音データを提供したことが公衆に提示したものと同視し得るとして、本件楽曲は本件番組内で放送された時点で「著作物でまだ公表されていないもの」(著作権法18条1項)には当たらない旨主張しました(15頁)。
しかし、裁判所は、被告B個人は「公衆」にはあたらず、本件楽曲は、被告Bが本件番組内で本件録音データを再生した時点より前には公衆に提供又は提示されていなかったとして、未公表の著作物であると判断しています。
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2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか
被告らは、原告は音楽活動を再開したことが被告レポーターによってテレビ放送等で告知されることを期待して本件録音データを提供したものであるから、本件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したというべきであると主張しました(15頁以下)。
しかし、裁判所は、原告は本件楽曲を聴いた被告レポーターの感想等を聞くために被告レポーターに対して本件録音データを提供したにすぎないとして、原告が本件録音データを提供したことをもって本件楽曲を公衆送信ないし公表することを黙示に許諾したとは認められないと判断。被告らの主張を認めていません。
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3 被告らによる公衆送信行為は時事の事件の報道のための利用に当たるか
被告らは、本件楽曲の利用が時事の事件の報道(41条)に当たる旨主張しました(16頁以下)。
しかし、裁判所は、本件楽曲が警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという時事の事件の主題となるものではなく、また、かかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもないとして、本件楽曲が「当該事件を構成」する著作物に当たるとは認めていません。
さらに、放送内容に照らすと、本件番組中における原告の音楽活動に関する部分が「原告が有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の事件の報道」にも当たるとはいえないと判断。被告らの主張を認めていません。
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4 被告らによる公衆送信行為は引用に当たるか
本件番組の放送時において本件楽曲は未公表の著作物であったと認められることから、被告らによる本件楽曲の公衆送信行為は、32条1項所定の引用には当たらないと裁判所は判断しています(19頁)。
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5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
被告らは本件楽曲の公表が、41条の趣旨の準用、正当業務行為その他の事由により違法性が阻却される旨主張しました(19頁以下)。
しかし、裁判所は、本件番組では原告の音楽活動にごく簡単に触れたに止まり、それに係る具体的な事実の紹介がないことなどから、結論として被告らの主張を認めていません。
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6 被告レポーターは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか
被告レポーターは、被告テレビ局による放送の履行補助者にすぎなかった旨主張しましたが、裁判所は、被告らは共同して原告が本件楽曲につき有する公衆送信権及び公表権を侵害したものと判断しています(20頁)。
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7 故意・過失の存否
被告らは、放送番組中において楽曲を再生し放送する場合には著作権や著作者人格権の侵害がないように十分注意すべき高度の注意義務を負っているところ、原告が本件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したとは認められないにもかかわらず、その認識を欠いて本件楽曲を公衆送信及び公表することが許されると誤信した点などにおいて、少なくとも過失があったと裁判所は認めています(20頁以下)。
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8 損害論
損害論として、裁判所は以下のとおり認定しています(22頁以下)。
(1)使用料相当額損害(114条3項) 6万4000円
(2)公表権侵害による慰謝料 100万円
(3)弁護士費用相当額損害 11万円
合計117万4000円
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■コメント
覚醒剤事犯で有罪となったシンガーソングライターのASKAが、生放送テレビ番組「情報ライブミヤネ屋」で未公表の楽曲が再生されたとして、芸能レポーターとテレビ局に対して慰謝料等を請求した事案です。
ASKA未公表楽曲事件
東京地裁平成30.12.11平成29(ワ)27374損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 横山真通
裁判官 高桜慎平
*裁判所サイト公表 2019.1.8
*キーワード:公表権、黙示の承諾、時事の事件の報道、引用、違法性阻却
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■事案
未公表楽曲の無断公表が時事の事件の報道などに該当するかどうかが争点となった事案
原告:歌手
被告:テレビ局、芸能レポーター
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法18条、41条、32条、114条3項
1 本件楽曲は未公表の著作物であったか
2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか
3 被告らによる公衆送信行為は時事の事件の報道のための利用に当たるか
4 被告らによる公衆送信行為は引用に当たるか
5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
6 被告レポーターは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか
7 故意・過失の存否
8 損害論
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■事案の概要
『本件は,作曲等の音楽活動を行う原告が,被告讀賣テレビの放送番組に出演していた被告Bにおいて原告の創作した未発表の楽曲の一部を原告の許諾なく同番組内で再生したことにより,被告らが共同して上記楽曲に係る原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)を侵害したと主張して,被告らに対し,民法719条(共同不法行為)及び著作権法(以下「法」という。)114条3項に基づき,損害賠償金3307万0400円及びこれに対する不法行為後である平成28年11月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H26.09 原告が覚せい剤取締法違反等罪で有罪判決
H27.09 原告が本件楽曲を創作
H27.12 原告が被告レポーターに本件楽曲の録音データをメール送信
H28.11 被告テレビ局の生放送番組で被告レポーターが本件録音データを再生
本件楽曲:「1964to2020東京Olympic」
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■判決内容
<争点>
1 本件楽曲は未公表の著作物であったか
被告らは、原告が芸能リポーターである被告Bに対して本件録音データを提供したことが公衆に提示したものと同視し得るとして、本件楽曲は本件番組内で放送された時点で「著作物でまだ公表されていないもの」(著作権法18条1項)には当たらない旨主張しました(15頁)。
しかし、裁判所は、被告B個人は「公衆」にはあたらず、本件楽曲は、被告Bが本件番組内で本件録音データを再生した時点より前には公衆に提供又は提示されていなかったとして、未公表の著作物であると判断しています。
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2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか
被告らは、原告は音楽活動を再開したことが被告レポーターによってテレビ放送等で告知されることを期待して本件録音データを提供したものであるから、本件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したというべきであると主張しました(15頁以下)。
しかし、裁判所は、原告は本件楽曲を聴いた被告レポーターの感想等を聞くために被告レポーターに対して本件録音データを提供したにすぎないとして、原告が本件録音データを提供したことをもって本件楽曲を公衆送信ないし公表することを黙示に許諾したとは認められないと判断。被告らの主張を認めていません。
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3 被告らによる公衆送信行為は時事の事件の報道のための利用に当たるか
被告らは、本件楽曲の利用が時事の事件の報道(41条)に当たる旨主張しました(16頁以下)。
しかし、裁判所は、本件楽曲が警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという時事の事件の主題となるものではなく、また、かかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもないとして、本件楽曲が「当該事件を構成」する著作物に当たるとは認めていません。
さらに、放送内容に照らすと、本件番組中における原告の音楽活動に関する部分が「原告が有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の事件の報道」にも当たるとはいえないと判断。被告らの主張を認めていません。
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4 被告らによる公衆送信行為は引用に当たるか
本件番組の放送時において本件楽曲は未公表の著作物であったと認められることから、被告らによる本件楽曲の公衆送信行為は、32条1項所定の引用には当たらないと裁判所は判断しています(19頁)。
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5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
被告らは本件楽曲の公表が、41条の趣旨の準用、正当業務行為その他の事由により違法性が阻却される旨主張しました(19頁以下)。
しかし、裁判所は、本件番組では原告の音楽活動にごく簡単に触れたに止まり、それに係る具体的な事実の紹介がないことなどから、結論として被告らの主張を認めていません。
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6 被告レポーターは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか
被告レポーターは、被告テレビ局による放送の履行補助者にすぎなかった旨主張しましたが、裁判所は、被告らは共同して原告が本件楽曲につき有する公衆送信権及び公表権を侵害したものと判断しています(20頁)。
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7 故意・過失の存否
被告らは、放送番組中において楽曲を再生し放送する場合には著作権や著作者人格権の侵害がないように十分注意すべき高度の注意義務を負っているところ、原告が本件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したとは認められないにもかかわらず、その認識を欠いて本件楽曲を公衆送信及び公表することが許されると誤信した点などにおいて、少なくとも過失があったと裁判所は認めています(20頁以下)。
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8 損害論
損害論として、裁判所は以下のとおり認定しています(22頁以下)。
(1)使用料相当額損害(114条3項) 6万4000円
(2)公表権侵害による慰謝料 100万円
(3)弁護士費用相当額損害 11万円
合計117万4000円
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■コメント
覚醒剤事犯で有罪となったシンガーソングライターのASKAが、生放送テレビ番組「情報ライブミヤネ屋」で未公表の楽曲が再生されたとして、芸能レポーターとテレビ局に対して慰謝料等を請求した事案です。