最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コスプレ写真発信者情報開示事件

東京地裁平成30.10.26平成30(ワ)21931発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2018.10.20
*キーワード:発信者情報開示、コスプレ写真

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■事案

コスプレ写真の無断配信に関する発信者情報開示事件

原告:カメラマン
被告:レンタルサーバ事業会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法22条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件各写真の著作物性
2 本件各写真の著作者
3 本件発信者情報開示の必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告が運用するレンタルサーバ上のウェブサイト上に掲載された写真は原告が撮影した著作物であるから,これを無断で掲載することが原告の著作権(複製権及び送信可能可権)を侵害することは明らかであるなどと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』

<経緯>

H26.08 本件写真1撮影
H28.03 本件写真2撮影
    「Flickr」に本件各写真掲載
H29.11 本件ウェブページに本件各写真掲載
H30.06 原告申立てによる本件発信者情報消去禁止仮処分決定

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■判決内容

<争点>

1 本件各写真の著作物性

有名な女性コスプレイヤーを被写体とする本件各写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、その著作物性を肯定しています(3頁以下)。

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2 本件各写真の著作者

被告は、「Flickr」の本件アカウントが原告のアカウントであると認め得る証拠はないし、仮にそうであったとしても原告が「Flickr」上に本件各写真のデータを投稿したとの事実以上に原告が本件各写真を撮影したとの事実まで認められるわけではないなどと反論しました。
この点について、裁判所は、

・東京地方裁判所が平成30年6月22日、原告の申立てに基づき被告に対して本件発信者情報の消去を禁ずる旨仮処分を決定
・「Flickr」の本件アカウント「A」の支払いクレジットカードは原告の住所
・本件各写真の機材、撮影日、撮影条件が本件ウェブアルバムに記載
・本件ウェブアルバムに平成30年1月に発信者情報開示請求した旨記載
・本件各写真の撮影者(著作者)が原告以外の者であることをうかがわせる証拠は何もない

といった諸事情を勘案して、原告が本件各写真を撮影した著作者であると認定しています(4頁以下)。

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3 本件発信者情報開示の必要性

(1)著作権侵害の明白性

本件発信者による本件各写真の画像データの入手先が本件アルバム以外に考え難いことからすれば、本件発信者は、本件ウェブアルバムから本件各写真の画像ファイルを複製した上で本件ウェブページに掲載(アップロード)して,上記画像ファイルを送信可能化したものと認められる。

(2)損害賠償請求権の行使のための必要性

本件ウェブページ上の記載からは、誰が本件各写真の画像ファイルを掲載したのかが判然とせず、原告がいまだ被告から本件発信者情報の開示を受けていないことからすれば、原告において本件各写真に係る著作権侵害に基づく損害賠償請求権の行使をするためには、本件発信者情報の開示が必要であると認められる。

結論として、原告は、被告に対してプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができると裁判所は判断しています(5頁以下)。

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■コメント

ウェブ上の写真アルバムサービス「Flickr」に掲載した写真が無断使用された事案です。
自分が撮影した写真であることを証明するのも一苦労であることがよくわかる事案です。