最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ジャコ・パストリアス音楽原盤権利処理事件
大阪地裁平成30.4.19平成29(ワ)781損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官 野上誠一
裁判官 大門宏一郎
*裁判所サイト公表 2018.−.−.
*キーワード:レコード製作者、著作隣接権、注意義務、過失、損害論
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■事案
映画のBGMに使用した音源の権利処理について、その調査確認義務を怠ったかどうかが争点となった事案。
原告:レコード会社
被告:映画製作配給会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項6号、96条、114条3項
1 原告が本件音源につきレコード製作者の権利を有するか否か
2 被告が本件音源を複製するにつき過失があったといえるか否か
3 原告の損害額
--------------------
■事案の概要
『本件は,レコード会社である原告が,自己が販売する音楽CDに収録されている楽曲がBGMとして使用されている映画を複製した,外国映画の配給会社である被告に対し,レコード製作者の権利(複製権)侵害を理由として,民法709条に基づき,損害賠償金635万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年2月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H04 原告がP1とマスターレコーディング譲渡契約締結
H05 原告が「Holiday for Pans」(本件CD)販売
本件CDにはジャコ・パストリアス演奏の本件楽曲収録
H26 トラバース社から委託を受けたスラング社がジャコのドキュメンタリー映画「JACO」に本件楽曲の音源をBGMとして使用
H27 P2から原告に許諾要請。原告は拒絶
H28 スラング社と被告が本件映画のライセンス契約締結。
被告がスラング社からフィルム原版の送付を受け複製
原告が被告に対して本件映画の配給中止等を通知
被告が日本の映画館で上映
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■判決内容
<争点>
1 原告が本件音源につきレコード製作者の権利を有するか否か
裁判所は、原告が本件音源のレコード製作者としてその権利を原始取得したとは認められないものの、レコード製作者の権利を有するP1からその権利を譲り受けたことによって、本件音源についてレコード製作者の権利を取得した(承継取得)と判断しています(7頁以下)。
--------------------
2 被告が本件音源を複製するにつき過失があったといえるか否か
裁判所は、外国映画の配給会社が複製しようとする映画に使用されている楽曲等の権利処理について、その処理が完了していないのではないかと合理的に疑わせる事情もない段階では、当該映画を複製するに先立って当該映画に使用されている楽曲等の権利処理が完了しているか否かを確認する注意義務を当該会社が負うとは認められないと説示。
その上で、本件の事情に照らすと、本件音源の権利処理が完了していないのではないかという合理的に疑わせる事情が存在し、被告はそのような事態を十分予見することができたとして、上記疑いを合理的に払拭できるまで調査、確認を尽くし、その疑いが払拭できないのであれば、本件音源の複製を差し控えるべき注意義務を負っていたと判断。結論として、上記注意義務を怠った過失があると判断しています(14頁以下)。
侵害論に関して、被告には原告のレコード製作者の権利を侵害するにつき過失があり、被告は原告に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うと裁判所は判断しています。
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3 原告の損害額
損害論に関して、裁判所は、許諾料相当額損害(著作権法114条3項)として2万円を認定しています(22頁以下)。
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■コメント
問題となったエレクトリック・ベース・プレイヤー、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリー映画の予告編がyoutubeにあるので、どういう内容かが分かります。
「ベーシスト、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリー!映画『JACO』予告編」
予告編
映画「ジャコ」公式サイト
原告はジャコ演奏の音源のマスターテープを所持していて、平成5年から音楽CDを販売していました。映画でのBGM使用について映画制作側から原告へ事前に権利処理の申し出の経緯がありました。また、映画のエンドロールには(無許諾ですが)原告レーベルの許諾表示がありました。
これに対して、被告側は、ジャコ・パストリアスの遺族等との間で原盤の利用について権利処理が整っていると反論しましたが、結論としては、被告側に許諾状況の調査確認義務違反に関する過失が認められています。
原盤の権利処理について演奏家の遺族も絡んで微妙な点を孕んでいますが、侵害論での反論内容、また損害論として損害額2万円という判決は、結論としては負けてはいない内容になるのではないでしょうか。さすが骨董通り法律事務所です。
和解となるかもしれませんが、控訴審の判断が注目されます。
ジャコ・パストリアス音楽原盤権利処理事件
大阪地裁平成30.4.19平成29(ワ)781損害賠償請求事件PDF
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官 野上誠一
裁判官 大門宏一郎
*裁判所サイト公表 2018.−.−.
*キーワード:レコード製作者、著作隣接権、注意義務、過失、損害論
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■事案
映画のBGMに使用した音源の権利処理について、その調査確認義務を怠ったかどうかが争点となった事案。
原告:レコード会社
被告:映画製作配給会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項6号、96条、114条3項
1 原告が本件音源につきレコード製作者の権利を有するか否か
2 被告が本件音源を複製するにつき過失があったといえるか否か
3 原告の損害額
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■事案の概要
『本件は,レコード会社である原告が,自己が販売する音楽CDに収録されている楽曲がBGMとして使用されている映画を複製した,外国映画の配給会社である被告に対し,レコード製作者の権利(複製権)侵害を理由として,民法709条に基づき,損害賠償金635万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年2月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H04 原告がP1とマスターレコーディング譲渡契約締結
H05 原告が「Holiday for Pans」(本件CD)販売
本件CDにはジャコ・パストリアス演奏の本件楽曲収録
H26 トラバース社から委託を受けたスラング社がジャコのドキュメンタリー映画「JACO」に本件楽曲の音源をBGMとして使用
H27 P2から原告に許諾要請。原告は拒絶
H28 スラング社と被告が本件映画のライセンス契約締結。
被告がスラング社からフィルム原版の送付を受け複製
原告が被告に対して本件映画の配給中止等を通知
被告が日本の映画館で上映
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■判決内容
<争点>
1 原告が本件音源につきレコード製作者の権利を有するか否か
裁判所は、原告が本件音源のレコード製作者としてその権利を原始取得したとは認められないものの、レコード製作者の権利を有するP1からその権利を譲り受けたことによって、本件音源についてレコード製作者の権利を取得した(承継取得)と判断しています(7頁以下)。
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2 被告が本件音源を複製するにつき過失があったといえるか否か
裁判所は、外国映画の配給会社が複製しようとする映画に使用されている楽曲等の権利処理について、その処理が完了していないのではないかと合理的に疑わせる事情もない段階では、当該映画を複製するに先立って当該映画に使用されている楽曲等の権利処理が完了しているか否かを確認する注意義務を当該会社が負うとは認められないと説示。
その上で、本件の事情に照らすと、本件音源の権利処理が完了していないのではないかという合理的に疑わせる事情が存在し、被告はそのような事態を十分予見することができたとして、上記疑いを合理的に払拭できるまで調査、確認を尽くし、その疑いが払拭できないのであれば、本件音源の複製を差し控えるべき注意義務を負っていたと判断。結論として、上記注意義務を怠った過失があると判断しています(14頁以下)。
侵害論に関して、被告には原告のレコード製作者の権利を侵害するにつき過失があり、被告は原告に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うと裁判所は判断しています。
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3 原告の損害額
損害論に関して、裁判所は、許諾料相当額損害(著作権法114条3項)として2万円を認定しています(22頁以下)。
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■コメント
問題となったエレクトリック・ベース・プレイヤー、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリー映画の予告編がyoutubeにあるので、どういう内容かが分かります。
「ベーシスト、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリー!映画『JACO』予告編」
予告編
映画「ジャコ」公式サイト
原告はジャコ演奏の音源のマスターテープを所持していて、平成5年から音楽CDを販売していました。映画でのBGM使用について映画制作側から原告へ事前に権利処理の申し出の経緯がありました。また、映画のエンドロールには(無許諾ですが)原告レーベルの許諾表示がありました。
これに対して、被告側は、ジャコ・パストリアスの遺族等との間で原盤の利用について権利処理が整っていると反論しましたが、結論としては、被告側に許諾状況の調査確認義務違反に関する過失が認められています。
原盤の権利処理について演奏家の遺族も絡んで微妙な点を孕んでいますが、侵害論での反論内容、また損害論として損害額2万円という判決は、結論としては負けてはいない内容になるのではないでしょうか。さすが骨董通り法律事務所です。
和解となるかもしれませんが、控訴審の判断が注目されます。