最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

タレント宣材写真チラシ使用事件(控訴審)

知財高裁平成30.5.28平成30(ネ)10002損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    山門 優
裁判官    筈井卓矢

*裁判所サイト公表 2018.5.29
*キーワード:写真、使用許諾、プロダクション、移籍、信義則、義務違反

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■事案

タレントの宣材写真の使用にプロダクションが関与していたかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):芸能プロダクション
被控訴人(1審被告):芸能プロダクション、タレント

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法1条2項

1 被控訴人らの不法行為責任等の有無

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■事案の概要

『本件は,本件宣材写真の著作権者であると主張する控訴人が,ホテルセンチュリー静岡ないしその委託先において本件宣材写真の複製物を掲載した本件チラシを作成,頒布したことは,控訴人が有する本件宣材写真の著作権(複製権,譲渡権)の侵害に当たるところ,かかる侵害行為は被控訴人らがホテルセンチュリー静岡ないしその委託先をして行わせた共同不法行為であると主張して,被控訴人らに対し,著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金330万円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年7月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人が,原判決を不服として控訴した。』
(2頁)

<経緯>

H17 被控訴人X(タレント)が控訴人に所属
H21 控訴人が被控訴人Xを撮影
H24 被控訴人Xが本件タレント契約を解消
H25 控訴人が被控訴人Xを提訴
H26 SBSプロモーションが本件チラシを制作
   本件イベント開催、被控訴人Xが出演
H28 控訴人請求棄却判決確定

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人らの不法行為責任等の有無

控訴審は、タレントである被控訴人XがAに提供し、AがBに提供した本件宣材写真を利用して本件チラシが制作されたとの事実を認めるに足りる証拠はないと認定。かえって、本件チラシに掲載された本件プロフィール写真はSBSプロモーションから本件チラシの制作を依頼されたデザイナーが、Bから伝えられた本件ウェブサイトから取得したものであると判断。本件宣材写真を提供したことによる被控訴人らの責任を否定しています。
また、本件宣材写真のデータをダウンロードさせたことによる被控訴人会社の責任についても、控訴人の主張を認めるに足りる的確な証拠はないとしてこれを否定しています(6頁以下)。

さらに控訴人は、被控訴人Xは、信義則上の義務として控訴人が権利を有する写真等が使用されないよう確認し、防止する義務があったとして義務違反を主張しました。この点について、控訴審は、被控訴人Xにおいて控訴人とのタレント契約を解消したというだけで、
自己の写真について控訴人の著作権侵害がされないように防止する信義則上の義務を負うとまでは認め難いなどとして、控訴人の上記主張を認めていません(8頁)。

結論として、被控訴人らの不法行為責任ないし債務不履行責任は認められていません。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持されており、移籍元であるタレント事務所の主張は認められていません。
なお、控訴審において旧タレント事務所側は、移籍したタレントには自身の宣材写真の取扱いについて信義則上の注意義務を負うとの主張をしましたが、控訴審では注意義務の存在を認めていません。

さて、原被告いずれの芸能事務所も、ものまねタレントさんに強い事務所で、当事者のタレントさんが誰だったのか、野次馬的に興味を惹くところです。
タレント専属契約関係でここ最近では、広瀬香美さんの新事務所(設立中)移籍に伴う芸名使用制限が話題となっています(株式会社オフィスサーティー「弊社所属アーティスト「広瀬香美」について重要なお知らせ」 http://www.officethirty.com/)。
また、農業アイドルの未成年の女性が自殺して、親御さんが事務所との確執を語っており、胸が痛みます(文春オンライン「母親が告白 農業アイドルだった大本萌景さん(16)は、なぜ自殺しなければならなかったのか」 http://bunshun.jp/articles/-/7433)。

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■過去のブログ記事

2017年12月18日記事
東京地裁平成29.11.29平成28(ワ)35002損害賠償請求事件
原審記事