最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
Twitterアイコン画像事件(控訴審)
知財高裁平成30.4.25平成28(ネ)10101発信者情報開示請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官 森岡礼子
裁判官 永田早苗
*裁判所サイト公表 2018.5.23
*キーワード:写真、発信者情報開示、複製、公衆送信、リツイート、著作者人格権、Twitter
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■事案
Twitterのアイコン画像に無断で写真が使用されたとして発信者情報開示請求がされた事案の控訴審
控訴人(1審原告) :写真家
被控訴人(1審被告):Twitter日本法人、米国法人
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■結論
原判決変更
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■争点
条文 著作権法21条、23条、19条、20条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 被控訴人ツイッタージャパンの発信者情報保有の有無
2 本件アカウント1及び2における本件写真の表示による控訴人の著作権等の侵害の明白性及び本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
3 最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性
4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」において,控訴人の著作物である原判決別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)が,(1)氏名不詳者により無断でアカウントのプロフィール画像として用いられ,その後当該アカウントのタイムライン及びツイート(投稿)にも表示されたこと,(2)氏名不詳者により無断で画像付きツイートの一部として用いられ,当該氏名不詳者のアカウントのタイムラインにも表示されたこと,(3)氏名不詳者らにより無断で上記(2)のツイートのリツイートがされ,当該氏名不詳者らのアカウントのタイムラインに表示されたことにより,控訴人の本件写真についての著作権(複製権,公衆送信権[送信可能化権を含む。],公衆伝達権。以下,これらを総称して「本件著作権」という。)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権,名誉声望保持権。以下,これらを総称して「本件著作者人格権」という。)が侵害されたと主張して,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記(1)〜(3)のそれぞれについて,別紙発信者情報目録記載の情報の開示を求める事案である。
控訴人は,原審においては,主位的に原判決別紙発信者情報目録(第1)記載の各発信者情報の開示を求め,予備的に原判決別紙発信者情報目録(第2)記載の各発信者情報の開示を求めていた。原判決は,被控訴人米国ツイッター社に対する請求を,原判決別紙流通情報目録記載1及び2の各アカウントの原判決別紙発信者情報目録(第1)記載3の各発信者情報の開示を求める限度で認容し,被控訴人米国ツイッター社に対するその余の請求及び被控訴人ツイッタージャパンに対する請求をいずれも棄却したので,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起し,当審において,訴えの一部取下げ及び訴えの変更を行ったので,控訴人の請求は,上記のとおりとなった。』
(3頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 被控訴人ツイッタージャパンの発信者情報保有の有無
被控訴人ツイッタージャパンが発信者情報を保有しているとは認められていません(31頁以下)。
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2 本件アカウント1及び2における本件写真の表示による控訴人の著作権等の侵害の明白性及び本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
(1)本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
表示するに際して、HTMLプログラムやCSSプログラム等によって位置や大きさなどを指定されたために本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は、流通目録3〜5のような画像となったものと認められるとして、本件リツイート者らによって改変されたもので同一性保持権が侵害されているということができると控訴審は判断。また、氏名表示の点についても、同様の経緯で控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められると判断。
結論として、本件リツイート者らによって本件リツイート行為により、控訴人の同一性保持権、氏名表示権が侵害されたことの明白性が控訴審で認定されています(32頁以下)。
(2)本件アカウント1及び2における本件写真の表示による控訴人の著作権等の侵害の明白性
本件アカウント2の流通情報2(3)及び(4)については、流通情報3〜5と同様に、流通情報2(2)の画像が改変され、控訴人の氏名が表示されていないということができるから、著作者人格権の侵害があるということができると控訴審は判断しています(39頁)。
これに対して、本件アカウント1の流通情報1(6)及び(7)については、流通情報1(3)の画像と同じものが表示されているとして、著作者人格権の侵害を否定。これらについて著作権の侵害を認めることができないことは、流通情報3〜5と同様であると判断しています。
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3 最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性
結論としては、控訴人が開示を求める最新のログイン時IPアドレス及びタイムスタンプは、本件において侵害情報が発信された各行為と無関係であり、省令4号及び7号のいずれにも当たらないというべきであるとして、別紙発信者情報目録記載2及び3についての控訴人の被控訴人米国ツイッター社に対する請求は理由がないと判断されています(39頁以下)。
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4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
控訴人は、本件アカウント1乃至5に本件写真を表示させた者に対して、著作権又は著作者人格権の侵害を理由として権利行使し得るが、上記の者の特定に資する情報を知る手段が他にあるとは認められないとして、控訴審も発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認定しています(42頁)。
結論として、控訴人の請求は被控訴人米国ツイッター社に対して主文1(1)の電子メールアドレスの開示を求める限度で理由があり、その余は理由がないとして、これと異なる原判決を変更されています。
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■コメント
SNSのツイッターに無断で写真家の写真をアイコンやツイートに使用したり、リツイートに使用された事案の控訴審です。
原審では、本件アカウント3〜5についての原告の請求は認められていませんでしたが、リツイート行為による著作者人格権侵害性の判断が控訴審で変更、肯定されています。
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■過去のブログ記事
2016年10月13日
原審記事
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■参考サイト(追記 2018年6月14日)
原告サイト
http://ynawata.asablo.jp/blog/2018/05/22/8854401
Twitterアイコン画像事件(控訴審)
知財高裁平成30.4.25平成28(ネ)10101発信者情報開示請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官 森岡礼子
裁判官 永田早苗
*裁判所サイト公表 2018.5.23
*キーワード:写真、発信者情報開示、複製、公衆送信、リツイート、著作者人格権、Twitter
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■事案
Twitterのアイコン画像に無断で写真が使用されたとして発信者情報開示請求がされた事案の控訴審
控訴人(1審原告) :写真家
被控訴人(1審被告):Twitter日本法人、米国法人
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■結論
原判決変更
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■争点
条文 著作権法21条、23条、19条、20条、プロバイダ責任制限法4条1項
1 被控訴人ツイッタージャパンの発信者情報保有の有無
2 本件アカウント1及び2における本件写真の表示による控訴人の著作権等の侵害の明白性及び本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
3 最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性
4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」において,控訴人の著作物である原判決別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)が,(1)氏名不詳者により無断でアカウントのプロフィール画像として用いられ,その後当該アカウントのタイムライン及びツイート(投稿)にも表示されたこと,(2)氏名不詳者により無断で画像付きツイートの一部として用いられ,当該氏名不詳者のアカウントのタイムラインにも表示されたこと,(3)氏名不詳者らにより無断で上記(2)のツイートのリツイートがされ,当該氏名不詳者らのアカウントのタイムラインに表示されたことにより,控訴人の本件写真についての著作権(複製権,公衆送信権[送信可能化権を含む。],公衆伝達権。以下,これらを総称して「本件著作権」という。)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権,名誉声望保持権。以下,これらを総称して「本件著作者人格権」という。)が侵害されたと主張して,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記(1)〜(3)のそれぞれについて,別紙発信者情報目録記載の情報の開示を求める事案である。
控訴人は,原審においては,主位的に原判決別紙発信者情報目録(第1)記載の各発信者情報の開示を求め,予備的に原判決別紙発信者情報目録(第2)記載の各発信者情報の開示を求めていた。原判決は,被控訴人米国ツイッター社に対する請求を,原判決別紙流通情報目録記載1及び2の各アカウントの原判決別紙発信者情報目録(第1)記載3の各発信者情報の開示を求める限度で認容し,被控訴人米国ツイッター社に対するその余の請求及び被控訴人ツイッタージャパンに対する請求をいずれも棄却したので,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起し,当審において,訴えの一部取下げ及び訴えの変更を行ったので,控訴人の請求は,上記のとおりとなった。』
(3頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 被控訴人ツイッタージャパンの発信者情報保有の有無
被控訴人ツイッタージャパンが発信者情報を保有しているとは認められていません(31頁以下)。
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2 本件アカウント1及び2における本件写真の表示による控訴人の著作権等の侵害の明白性及び本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
(1)本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
表示するに際して、HTMLプログラムやCSSプログラム等によって位置や大きさなどを指定されたために本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は、流通目録3〜5のような画像となったものと認められるとして、本件リツイート者らによって改変されたもので同一性保持権が侵害されているということができると控訴審は判断。また、氏名表示の点についても、同様の経緯で控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められると判断。
結論として、本件リツイート者らによって本件リツイート行為により、控訴人の同一性保持権、氏名表示権が侵害されたことの明白性が控訴審で認定されています(32頁以下)。
(2)本件アカウント1及び2における本件写真の表示による控訴人の著作権等の侵害の明白性
本件アカウント2の流通情報2(3)及び(4)については、流通情報3〜5と同様に、流通情報2(2)の画像が改変され、控訴人の氏名が表示されていないということができるから、著作者人格権の侵害があるということができると控訴審は判断しています(39頁)。
これに対して、本件アカウント1の流通情報1(6)及び(7)については、流通情報1(3)の画像と同じものが表示されているとして、著作者人格権の侵害を否定。これらについて著作権の侵害を認めることができないことは、流通情報3〜5と同様であると判断しています。
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3 最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性
結論としては、控訴人が開示を求める最新のログイン時IPアドレス及びタイムスタンプは、本件において侵害情報が発信された各行為と無関係であり、省令4号及び7号のいずれにも当たらないというべきであるとして、別紙発信者情報目録記載2及び3についての控訴人の被控訴人米国ツイッター社に対する請求は理由がないと判断されています(39頁以下)。
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4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
控訴人は、本件アカウント1乃至5に本件写真を表示させた者に対して、著作権又は著作者人格権の侵害を理由として権利行使し得るが、上記の者の特定に資する情報を知る手段が他にあるとは認められないとして、控訴審も発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認定しています(42頁)。
結論として、控訴人の請求は被控訴人米国ツイッター社に対して主文1(1)の電子メールアドレスの開示を求める限度で理由があり、その余は理由がないとして、これと異なる原判決を変更されています。
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■コメント
SNSのツイッターに無断で写真家の写真をアイコンやツイートに使用したり、リツイートに使用された事案の控訴審です。
原審では、本件アカウント3〜5についての原告の請求は認められていませんでしたが、リツイート行為による著作者人格権侵害性の判断が控訴審で変更、肯定されています。
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■過去のブログ記事
2016年10月13日
原審記事
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■参考サイト(追記 2018年6月14日)
原告サイト
http://ynawata.asablo.jp/blog/2018/05/22/8854401