最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
高校野球応援風景写真事件
東京地裁平成30.4.26平成29(ワ)29099損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 大下良仁
裁判官 林 雅子
*裁判所サイト公表 2018.5.7
*キーワード:写真、著作物性、損害論
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■事案
高校野球の応援風景写真の著作物性が争点となった事案
原告:県立高校応援団
被告:出版印刷会社
--------------------
■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、112条、114条3項
1 本件写真の著作物性
2 本件写真に係る著作権の侵害の有無
3 本件書籍の販売期間及び方法
4 本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属
5 損害の発生の有無及び損害額
--------------------
■事案の概要
『本件は,法人格なき社団である原告が,被告に対し,被告が別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件書籍」と総称する。)に使用し,本件書籍を販売したことが本件写真に係る著作権(複製権,翻案権,譲渡権又は著作権法28条に基づく二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)侵害に該当し,原告は本件写真の著作権者から本件写真の著作権及び被告に対する上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生していた請求権)を譲り受けたと主張して,著作権法112条1項及び2項に基づく本件書籍の印刷,頒布の差止め及び本件書籍のうち本件写真を掲載した部分の廃棄並びに民法709条及び著作権法114条3項に基づき,一部請求として,損害賠償金220万円及びこれに対する不法行為日(本件書籍の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H17.05 Aが応援風景を撮影(本件写真)
H21.08 被告が本件書籍を発行
H29.04 Aから原告に本件写真の著作権等を譲渡
本件写真:平成17年5月16日、埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における、群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景を撮影したカラー写真
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■判決内容
<争点>
1 本件写真の著作物性
本件写真は、『画像の上半分に野球場のフェンス,その土台及びフェンス越しのグラウンド,下半分にスタンドが写っていて,フェンス側及びスタンド側で画面が斜め(右斜め下方向)に分けられているカラー写真である。スタンドとフェンスの間には,スタンドに向いて起立し,背中を大きくそらし,両手を上方に広げ,口を大きく開けて応援団を統率している学生服姿の女子生徒が写っており,その女子生徒の左側にスタンドの観客席で起立してメガホンを持つなどする学生服姿やユニホーム姿の数名の男子生徒が写っていて,また,女子生徒の右側下部分には試合を観戦する観客数名の後頭部が写っている』(8頁)といった内容の写真でした。
本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、本件写真の撮影者であるAは、本件写真の撮影に当たって被写体の選択や配置、シャッターチャンスの捕捉、アングル、構図等に工夫を加えて撮影していると判断。
撮影者の思想・感情が創作的に表現されているとして、本件写真は写真の著作物として著作物性が認められると判断しています。
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2 本件写真に係る著作権の侵害の有無
被告は、本件写真を加工してモノクロ画像にして本件書籍に掲載していましたが、裁判所は、この画像(本件画像)は本件写真に依拠し、本件写真の創作的な部分を本件書籍に掲載(再製)したものであって、本件写真を複製したものであると判断。
著作権侵害性を肯定しています(9頁以下)。
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3 本件書籍の販売期間及び方法
被告は、平成21年8月20日、本件書籍の第1版合計1万6000部(1集につき2000部。1集の本体価格476円(税抜価格))を発行し、北海道内の書店等において販売したこと、また、発行日から約1年後には書店での販売を取り止めたこと、現在でも本件書籍の在庫を保管しており、注文があれば販売していることが裁判所により認定されています(10頁以下)。
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4 本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属
原告は、本件写真の撮影者であるA(著作者、著作権者)から、平成29年4月19日、本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けたと裁判所は認定しています(11頁)。
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5 損害の発生の有無及び損害額
裁判所は、Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生した請求権)を譲り受けた原告は、被告に対して112条1項に基づいて本件書籍の印刷又は頒布の差止め、また、同条2項に基づいて侵害行為を組成した本件書籍のうち、本件画像を掲載した部分(別紙書籍目録記載の使用頁)の廃棄を請求することができるとともに、被告の過失を前提に民法709条及び著作権法114条3項に基づいて本件写真の使用料相当額等の損害賠償金の支払を求めることができると判断。
著作権法114条3項に基づく損害としては、本件における本件画像の内容、本件書籍における使用方法、本件書籍の内容や発行数等その他本件に現れた諸事情を勘案して、本件における使用料相当額を30万円と認定。また、弁護士費用相当額損害として10万円を認定。
結論として、合計40万円を損害額として認定しています(11頁以下)。
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■コメント
判決文に画像の添付がなくて写真のイメージがいまひとつ不明ですが、高校野球の応援風景を撮影した写真にも著作物性が認められた点は参考になります。
スナップ写真でもネットから拾って商用で勝手に使えば、まず著作権侵害になる、と考えたほうが良いということになります。
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■追記(2018.5.10)
小川明子先生からご指摘を受けました。たいへん参考になりました。ありがとうございました。
「2008年の写真の中で、右列上から3つ目が該当の写真ではないかと思われます。
http://www8.plala.or.jp/hall3001/ouen/09/0.htm
群馬県立桐生高等学校応援団山紫会のHPは、
http://www8.plala.or.jp/hall3001/sanshi.htm 」
高校野球応援風景写真事件
東京地裁平成30.4.26平成29(ワ)29099損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 大下良仁
裁判官 林 雅子
*裁判所サイト公表 2018.5.7
*キーワード:写真、著作物性、損害論
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■事案
高校野球の応援風景写真の著作物性が争点となった事案
原告:県立高校応援団
被告:出版印刷会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、112条、114条3項
1 本件写真の著作物性
2 本件写真に係る著作権の侵害の有無
3 本件書籍の販売期間及び方法
4 本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属
5 損害の発生の有無及び損害額
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■事案の概要
『本件は,法人格なき社団である原告が,被告に対し,被告が別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)を別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件書籍」と総称する。)に使用し,本件書籍を販売したことが本件写真に係る著作権(複製権,翻案権,譲渡権又は著作権法28条に基づく二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)侵害に該当し,原告は本件写真の著作権者から本件写真の著作権及び被告に対する上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生していた請求権)を譲り受けたと主張して,著作権法112条1項及び2項に基づく本件書籍の印刷,頒布の差止め及び本件書籍のうち本件写真を掲載した部分の廃棄並びに民法709条及び著作権法114条3項に基づき,一部請求として,損害賠償金220万円及びこれに対する不法行為日(本件書籍の発行日)である平成21年8月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H17.05 Aが応援風景を撮影(本件写真)
H21.08 被告が本件書籍を発行
H29.04 Aから原告に本件写真の著作権等を譲渡
本件写真:平成17年5月16日、埼玉県営大宮公園野球場で開催された関東地区春季高等学校野球大会における、群馬県立桐生高等学校応援団による応援風景を撮影したカラー写真
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■判決内容
<争点>
1 本件写真の著作物性
本件写真は、『画像の上半分に野球場のフェンス,その土台及びフェンス越しのグラウンド,下半分にスタンドが写っていて,フェンス側及びスタンド側で画面が斜め(右斜め下方向)に分けられているカラー写真である。スタンドとフェンスの間には,スタンドに向いて起立し,背中を大きくそらし,両手を上方に広げ,口を大きく開けて応援団を統率している学生服姿の女子生徒が写っており,その女子生徒の左側にスタンドの観客席で起立してメガホンを持つなどする学生服姿やユニホーム姿の数名の男子生徒が写っていて,また,女子生徒の右側下部分には試合を観戦する観客数名の後頭部が写っている』(8頁)といった内容の写真でした。
本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、本件写真の撮影者であるAは、本件写真の撮影に当たって被写体の選択や配置、シャッターチャンスの捕捉、アングル、構図等に工夫を加えて撮影していると判断。
撮影者の思想・感情が創作的に表現されているとして、本件写真は写真の著作物として著作物性が認められると判断しています。
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2 本件写真に係る著作権の侵害の有無
被告は、本件写真を加工してモノクロ画像にして本件書籍に掲載していましたが、裁判所は、この画像(本件画像)は本件写真に依拠し、本件写真の創作的な部分を本件書籍に掲載(再製)したものであって、本件写真を複製したものであると判断。
著作権侵害性を肯定しています(9頁以下)。
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3 本件書籍の販売期間及び方法
被告は、平成21年8月20日、本件書籍の第1版合計1万6000部(1集につき2000部。1集の本体価格476円(税抜価格))を発行し、北海道内の書店等において販売したこと、また、発行日から約1年後には書店での販売を取り止めたこと、現在でも本件書籍の在庫を保管しており、注文があれば販売していることが裁判所により認定されています(10頁以下)。
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4 本件写真の著作権及び損害賠償請求権の帰属
原告は、本件写真の撮影者であるA(著作者、著作権者)から、平成29年4月19日、本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(同日までに発生した請求権)を譲り受けたと裁判所は認定しています(11頁)。
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5 損害の発生の有無及び損害額
裁判所は、Aから本件写真に係る著作権及び被告に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権(譲受日までに発生した請求権)を譲り受けた原告は、被告に対して112条1項に基づいて本件書籍の印刷又は頒布の差止め、また、同条2項に基づいて侵害行為を組成した本件書籍のうち、本件画像を掲載した部分(別紙書籍目録記載の使用頁)の廃棄を請求することができるとともに、被告の過失を前提に民法709条及び著作権法114条3項に基づいて本件写真の使用料相当額等の損害賠償金の支払を求めることができると判断。
著作権法114条3項に基づく損害としては、本件における本件画像の内容、本件書籍における使用方法、本件書籍の内容や発行数等その他本件に現れた諸事情を勘案して、本件における使用料相当額を30万円と認定。また、弁護士費用相当額損害として10万円を認定。
結論として、合計40万円を損害額として認定しています(11頁以下)。
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■コメント
判決文に画像の添付がなくて写真のイメージがいまひとつ不明ですが、高校野球の応援風景を撮影した写真にも著作物性が認められた点は参考になります。
スナップ写真でもネットから拾って商用で勝手に使えば、まず著作権侵害になる、と考えたほうが良いということになります。
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■追記(2018.5.10)
小川明子先生からご指摘を受けました。たいへん参考になりました。ありがとうございました。
「2008年の写真の中で、右列上から3つ目が該当の写真ではないかと思われます。
http://www8.plala.or.jp/hall3001/ouen/09/0.htm
群馬県立桐生高等学校応援団山紫会のHPは、
http://www8.plala.or.jp/hall3001/sanshi.htm 」