最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
データベースパッケージソフトウェア営業誹謗事件
東京地裁平成30.3.28平成27(ワ)21897著作権侵害行為差止等請求事件、平成28(ワ)37577損害賠償請求反訴事件PDF
別紙1
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 天野研司
裁判官 西山芳樹
*裁判所サイト公表 2018.3.30
*キーワード:データベース、著作物性、営業誹謗行為性、使用許諾契約
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■事案
データベース共有システムの使用許諾契約を巡って紛争となった事案
原告:情報処理サービス会社
被告:食料品日用雑貨販売会社
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■結論
本訴、反訴請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項10号の3、不正競争防止法2条1項15号
1 「eBASEserver」はデータベースの著作物であるか
2 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していたか
3 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか
4 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、これにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたか
5 本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか
6 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点について
7 不競法に基づく反訴請求に関連する争点について
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■事案の概要
1 本訴事件
下記ア(3)、イ及びウの各損害賠償請求は選択的併合の関係にある。
『ア 著作権侵害を原因とする請求
被告がその管理するサーバ内に構築して顧客に提供している別紙1被告物件目録記載のデータベース(以下「被告データベース」という。)は,原告が著作権を有するデータベース((1)被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベース,又は(2)原告が開発したデータベースパッケージソフトウェア「eBASEserver」そのもの。原告は,この「eBASEserver」がデータベースの著作物に当たると主張している。なお,原告の主張によれば,「eBASEserver」には,特に対象業界を問わないベースソフトウェアと,このベースソフトウェアに食品業界向け情報交換プラットフォームとして動作するためのオプションソフトウェアを加えたものとがあるが,以下,「eBASEserver」というときは,特段の断りがない限り後者を指す。)の複製物又は翻案物であるから,被告が被告データベースを作成することは,原告が有する上記各データベースの著作物の複製権又は翻案権を侵害し,被告が被告データベースを顧客にサービスとして提供することは,原告が有する上記各データベースの公衆送信権を侵害するなどとして,原告が,被告に対し,(1)著作権法112条1項に基づき被告データデースの複製及び公衆送信(送信可能化を含む。以下同じ。)の差止めを求め,(2)同条2項に基づき被告データベース及びその複製物(被告データベースを格納した記録媒体を含む。)の廃棄を求めるとともに,(3)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権(対象期間は,平成19年4月1日から平成27年8月4日までである。)に基づき,損害賠償金12億6500万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
『イ 債務不履行を原因とする請求
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したことは,原被告間の平成19年4月1日付け使用許諾契約書による契約(以下「本件使用許諾契約」という。)に違反するとして,債務不履行に基づき,損害賠償金42億1800万円の一部請求として,10億円及びこれに対する請求後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
『ウ 一般不法行為を原因とする請求
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様を剽窃して被告データベースを構築したことは,法的保護に値する利益であるところの体系的構成であるデータベース構造及び原告の営業活動の利益を侵害する不法行為であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金12億6500万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
2 反訴事件
下記イ(1)及びウ(1)の各損害賠償請求、また、下記イ(2)及びウ(2)の各謝罪広告請求はそれぞれ選択的併合の関係にある。
『ア 本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする請求
原告が本訴を提起したことは,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであって,被告に対する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基づき,損害賠償金6億5257万円の一部請求として,1億円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
『イ 名誉毀損を原因とする請求
原告が虚偽の事実を記載した本訴の訴状及び平成27年8月20日付け訴状訂正申立書(以下,併せて「訴状等」という。)を提出し,被告の平成27年9月1日付けプレスリリース(別紙4。以下「被告プレスリリース」という。)に引き続き,虚偽の事実を記載した同月2日付けプレスリリース(別紙5。以下「原告プレスリリース」という。)を原告のウェブサイトの「IR情報」欄に掲載し,同年10月7日に開かれた本件の第1回口頭弁論期日において訴状等を陳述した一連の行為,又はこれら個別の行為がそれぞれ,被告の名誉を毀損する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,(1)不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基づき,損害賠償金5000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するとともに,(2)民法723条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求するもの。』
『ウ 不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づく請求
原告が原告プレスリリースを掲載した行為が,不競法2条1項15号の不正競争行為を構成するとして,被告が,原告に対し,(1)不競法4条に基づき,損害賠償金4000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不正競争行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,(2)不競法14条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求するもの。』
<経緯>
H16.09 原被告間で本件業務提携契約書締結
H17.04 被告がFOODS信頼ネット提供開始
H19.01 原告から被告にサーバ移管
H19.04 原被告間でソフトウェア年間保守契約書、本件使用許諾契約書締結
H27.08 原告が本訴提起
H27.09 被告が東京証券取引所適時開示情報閲覧サービスに掲載
H27.09 原告が原告サイトにIR情報掲載
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■判決内容
<争点>
1 「eBASEserver」はデータベースの著作物であるか
原告は、原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserver」は、(1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており、データベースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構成している点に創作性が認められ、(2)個々の辞書がそれ単独でも体系的構成及び情報の選択において創作性が認められるとして、それ自体がデータベースの著作物と認められるべき旨主張しました(35頁以下)。
この点について、裁判所は、
『原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることによりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,このような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアである「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著作権法2条1項10号の3)とは認められない。』
として、この点についての原告の主張を認めていません。
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2 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していたか
原告は、被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースについて、その著作権が本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していた旨主張しました(36頁以下)。
この点について、裁判所は、同契約書4条1項本文の規定から、その著作権は被告に帰属する旨が原被告間で合意されていたことが明らかであるとして、原告の主張を認めていません。
結論として、本訴請求のうち著作権侵害を原因とする部分には理由がないと判断されています。
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3 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか
被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したかどうか、また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるかどうかについて、裁判所は、いずれについても原告の主張を認めていません
(37頁以下)。
結論として、本訴請求のうち債務不履行を原因とする部分には理由がないと判断されています。
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4 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、これにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたか
被告が原告から取得した原告データベース仕様に基づいて被告データベースないしそのシステムを構築したと認められず、被告が不法行為責任を負うものとは認め難いと裁判所は判断。
結論として、本訴請求のうち不法行為を原因とする部分には理由がないと判断されています(39頁)。
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5 本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか
反訴請求において被告は、原告による本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであるとして、被告に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(39頁以下)。
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6 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点について
反訴請求において被告は、原告が訴状等を提出し、被告に被告プレスリリースによる適時開示をさせた上で原告プレスリリースを掲載した一連の表現行為について、被告の社会的評価を低下させるものであり名誉毀損の不法行為が成立すると主張しましたが、裁判所は、名誉毀損を原因とする請求にはいずれも理由がないと判断しています(45頁以下)。
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7 不競法に基づく反訴請求に関連する争点について
被告は、原告プレスリリースに含まれる本件プレスリリース表現は、いずれも虚偽の事実であって被告の営業上の信用を害するものであるとして、不競法2条1項15号の不正競争行為に当たり、同行為について原告に故意又は過失があることも明らかであると主張しましたが、裁判所は、仮に、原告プレスリリースによる本件プレスリリース表現が不競法2条1項15号の不正競争行為に当たる余地があるとしても、少なくとも、原告には故意又は過失があったとはいえないとして損害賠償請求及び謝罪広告掲載請求は認められないと判断しています(48頁以下)。
結論として、反訴請求のうち不競法に基づく請求にはいずれも理由がないと判断しています。
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■コメント
商品情報などの業務効率化のためのイントラネット対応データベース共有システムの使用許諾契約などを巡る紛争です。
ポイントとしては、「FOODS信頼ネット」のシステム開発及び運営を原告から引き上げて、被告において独自にシステムを構築するに至った経緯となります(38頁参照)。
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■関連IR情報
2018年03月29日原告IRリリース
訴訟の判決に関するお知らせPDF
2018年3月28日被告IRリリース
訴訟の判決(勝訴)に関するお知らせPDF
データベースパッケージソフトウェア営業誹謗事件
東京地裁平成30.3.28平成27(ワ)21897著作権侵害行為差止等請求事件、平成28(ワ)37577損害賠償請求反訴事件PDF
別紙1
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 天野研司
裁判官 西山芳樹
*裁判所サイト公表 2018.3.30
*キーワード:データベース、著作物性、営業誹謗行為性、使用許諾契約
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■事案
データベース共有システムの使用許諾契約を巡って紛争となった事案
原告:情報処理サービス会社
被告:食料品日用雑貨販売会社
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■結論
本訴、反訴請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項10号の3、不正競争防止法2条1項15号
1 「eBASEserver」はデータベースの著作物であるか
2 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していたか
3 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか
4 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、これにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたか
5 本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか
6 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点について
7 不競法に基づく反訴請求に関連する争点について
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■事案の概要
1 本訴事件
下記ア(3)、イ及びウの各損害賠償請求は選択的併合の関係にある。
『ア 著作権侵害を原因とする請求
被告がその管理するサーバ内に構築して顧客に提供している別紙1被告物件目録記載のデータベース(以下「被告データベース」という。)は,原告が著作権を有するデータベース((1)被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベース,又は(2)原告が開発したデータベースパッケージソフトウェア「eBASEserver」そのもの。原告は,この「eBASEserver」がデータベースの著作物に当たると主張している。なお,原告の主張によれば,「eBASEserver」には,特に対象業界を問わないベースソフトウェアと,このベースソフトウェアに食品業界向け情報交換プラットフォームとして動作するためのオプションソフトウェアを加えたものとがあるが,以下,「eBASEserver」というときは,特段の断りがない限り後者を指す。)の複製物又は翻案物であるから,被告が被告データベースを作成することは,原告が有する上記各データベースの著作物の複製権又は翻案権を侵害し,被告が被告データベースを顧客にサービスとして提供することは,原告が有する上記各データベースの公衆送信権を侵害するなどとして,原告が,被告に対し,(1)著作権法112条1項に基づき被告データデースの複製及び公衆送信(送信可能化を含む。以下同じ。)の差止めを求め,(2)同条2項に基づき被告データベース及びその複製物(被告データベースを格納した記録媒体を含む。)の廃棄を求めるとともに,(3)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権(対象期間は,平成19年4月1日から平成27年8月4日までである。)に基づき,損害賠償金12億6500万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
『イ 債務不履行を原因とする請求
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したことは,原被告間の平成19年4月1日付け使用許諾契約書による契約(以下「本件使用許諾契約」という。)に違反するとして,債務不履行に基づき,損害賠償金42億1800万円の一部請求として,10億円及びこれに対する請求後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
『ウ 一般不法行為を原因とする請求
被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様を剽窃して被告データベースを構築したことは,法的保護に値する利益であるところの体系的構成であるデータベース構造及び原告の営業活動の利益を侵害する不法行為であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金12億6500万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
2 反訴事件
下記イ(1)及びウ(1)の各損害賠償請求、また、下記イ(2)及びウ(2)の各謝罪広告請求はそれぞれ選択的併合の関係にある。
『ア 本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする請求
原告が本訴を提起したことは,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであって,被告に対する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基づき,損害賠償金6億5257万円の一部請求として,1億円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』
『イ 名誉毀損を原因とする請求
原告が虚偽の事実を記載した本訴の訴状及び平成27年8月20日付け訴状訂正申立書(以下,併せて「訴状等」という。)を提出し,被告の平成27年9月1日付けプレスリリース(別紙4。以下「被告プレスリリース」という。)に引き続き,虚偽の事実を記載した同月2日付けプレスリリース(別紙5。以下「原告プレスリリース」という。)を原告のウェブサイトの「IR情報」欄に掲載し,同年10月7日に開かれた本件の第1回口頭弁論期日において訴状等を陳述した一連の行為,又はこれら個別の行為がそれぞれ,被告の名誉を毀損する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,(1)不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基づき,損害賠償金5000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するとともに,(2)民法723条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求するもの。』
『ウ 不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づく請求
原告が原告プレスリリースを掲載した行為が,不競法2条1項15号の不正競争行為を構成するとして,被告が,原告に対し,(1)不競法4条に基づき,損害賠償金4000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不正競争行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,(2)不競法14条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求するもの。』
<経緯>
H16.09 原被告間で本件業務提携契約書締結
H17.04 被告がFOODS信頼ネット提供開始
H19.01 原告から被告にサーバ移管
H19.04 原被告間でソフトウェア年間保守契約書、本件使用許諾契約書締結
H27.08 原告が本訴提起
H27.09 被告が東京証券取引所適時開示情報閲覧サービスに掲載
H27.09 原告が原告サイトにIR情報掲載
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■判決内容
<争点>
1 「eBASEserver」はデータベースの著作物であるか
原告は、原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserver」は、(1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており、データベースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構成している点に創作性が認められ、(2)個々の辞書がそれ単独でも体系的構成及び情報の選択において創作性が認められるとして、それ自体がデータベースの著作物と認められるべき旨主張しました(35頁以下)。
この点について、裁判所は、
『原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることによりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,このような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアである「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著作権法2条1項10号の3)とは認められない。』
として、この点についての原告の主張を認めていません。
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2 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していたか
原告は、被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースについて、その著作権が本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していた旨主張しました(36頁以下)。
この点について、裁判所は、同契約書4条1項本文の規定から、その著作権は被告に帰属する旨が原被告間で合意されていたことが明らかであるとして、原告の主張を認めていません。
結論として、本訴請求のうち著作権侵害を原因とする部分には理由がないと判断されています。
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3 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか
被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したかどうか、また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるかどうかについて、裁判所は、いずれについても原告の主張を認めていません
(37頁以下)。
結論として、本訴請求のうち債務不履行を原因とする部分には理由がないと判断されています。
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4 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、これにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたか
被告が原告から取得した原告データベース仕様に基づいて被告データベースないしそのシステムを構築したと認められず、被告が不法行為責任を負うものとは認め難いと裁判所は判断。
結論として、本訴請求のうち不法行為を原因とする部分には理由がないと判断されています(39頁)。
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5 本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか
反訴請求において被告は、原告による本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであるとして、被告に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(39頁以下)。
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6 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点について
反訴請求において被告は、原告が訴状等を提出し、被告に被告プレスリリースによる適時開示をさせた上で原告プレスリリースを掲載した一連の表現行為について、被告の社会的評価を低下させるものであり名誉毀損の不法行為が成立すると主張しましたが、裁判所は、名誉毀損を原因とする請求にはいずれも理由がないと判断しています(45頁以下)。
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7 不競法に基づく反訴請求に関連する争点について
被告は、原告プレスリリースに含まれる本件プレスリリース表現は、いずれも虚偽の事実であって被告の営業上の信用を害するものであるとして、不競法2条1項15号の不正競争行為に当たり、同行為について原告に故意又は過失があることも明らかであると主張しましたが、裁判所は、仮に、原告プレスリリースによる本件プレスリリース表現が不競法2条1項15号の不正競争行為に当たる余地があるとしても、少なくとも、原告には故意又は過失があったとはいえないとして損害賠償請求及び謝罪広告掲載請求は認められないと判断しています(48頁以下)。
結論として、反訴請求のうち不競法に基づく請求にはいずれも理由がないと判断しています。
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■コメント
商品情報などの業務効率化のためのイントラネット対応データベース共有システムの使用許諾契約などを巡る紛争です。
ポイントとしては、「FOODS信頼ネット」のシステム開発及び運営を原告から引き上げて、被告において独自にシステムを構築するに至った経緯となります(38頁参照)。
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■関連IR情報
2018年03月29日原告IRリリース
訴訟の判決に関するお知らせPDF
2018年3月28日被告IRリリース
訴訟の判決(勝訴)に関するお知らせPDF