最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

メルマガ記事無断配信発信者情報開示請求事件

東京地裁平成30.1.30平成29(ワ)37117発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2018.2.13
*キーワード:発信者情報開示請求、引用

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■事案

メルマガ記事の無断配信について引用が成立するかどうかが争点となった事案

原告:宗教活動家
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、32条1項、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性の有無
2 正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,別表(対比表)の原告記事欄の番号欄1〜11の内容欄の各文章(以下「原告記事」と総称し,個別の文章を上記の番号に従い「原告記事1」などという。)につき著作権を有する原告が,被告に対し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して原告記事を氏名不詳者がウェブサイト上にアップロードした行為により原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性の有無

(1)原告記事の著作物性

原告記事のうち本件記事において引用された部分は、日々の事実の羅列であるか、ありふれた表現であるから著作物性(著作権法2条1項1号)はないと被告は主張しました。
しかし、裁判所は、本件引用部分は原告の思想又は感情を創作的に表現したものということができるとして、著作物性を肯定しています(5頁以下)。

(2)引用の成否

被告は、本件投稿記事における原告記事の引用は適法な引用(32条1項)にあたり、本件投稿行為は複製権及び公衆送信権を侵害しないと主張しました。
この点について、裁判所は、
『本件利用者によると考えられる批評等が記載されていない本件投稿記事における本件引用部分は,いずれも被告が主張する批評目的による原告記事の利用であるとは直ちには認め難い。また,本件利用者によると考えられる批評等の記載がある記事をみても,その批評等は簡潔なもので,独自部分における批評等が本件引用部分全部を批評するものとはいえないし,本件引用部分全部を利用しなければ批評の目的が達成できないものともいえず,批評のために本件引用部分全体を利用する必要があるとは認め難い。』

などとして、本件引用部分の利用は、いずれも少なくとも原告記事を批評する目的上正当な範囲内のものであるということはできないと判断。
引用(32条1項)は成立しないと判断しています。

結論として、裁判所は、本件投稿行為は32条1項により適法となることはなく、他に30条以下に定める著作権の制限事由が存在することもうかがわれないとして、原告の原告記事に係る複製権及び公衆送信権の侵害の明白性を肯定しています(6頁以下)。

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2 正当な理由の有無

原告は、本件利用者に対して原告記事について有する複製権、公衆送信権の侵害に基づく損害賠償等の請求を行う必要があり、本件利用者の氏名、住所等が不明であるため、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある(プロバイダ責任制限法4条1項)と裁判所は判断。

結論として、原告の請求を認容しています(8頁)。

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■コメント

他人の文章の引用部分がほとんどで、独自の書き込みが簡潔なものであって、批評目的として正当な範囲内の利用行為ではないと判断された事案です。