最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「子連れ狼」独占的利用許諾契約事件(控訴審)

知財高裁平成29.9.28平成27(ネ)10057等損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    佐藤達文
裁判官    森岡礼子

*裁判所サイト公表 2017.11.2
*キーワード:漫画、独占的利用許諾契約、公序良俗、一部無効、信頼関係破壊、解除、不当利得

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■事案

漫画原作作品の独占的利用許諾契約に関連して紛争となった事案の控訴審

控訴人・被控訴人・附帯控訴人・附帯被控訴人(1審原告):コンテンツマネジメント会社
控訴人・附帯被控訴人(1審被告):漫画原作者Y1ら
一審被告Y1補助参加人:漫画制作会社
被控訴人(1審被告):1審被告元取締役ら

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 民法90条、709条、719条

1 一審被告小池書院及び一審被告Y1の共同不法行為に基づく請求
2 一審被告小池書院及び一審被告Y3の共同不法行為に基づく請求
3 一審被告Y1、一審被告Y3、一審被告普及会及び一審被告Y4の共同不法行為に基づく請求
4 一審被告Y1の債務不履行等に基づく請求
5 一審被告Y1に対する金銭消費貸借契約に基づく請求
6 一審被告Y1に対する不当利得返還請求

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■事案の概要

『本件は,漫画原作者である一審被告Y1から著作物の独占的利用権の設定を受けたと主張する一審原告(旧商号:平成19年6月5日まで「ウクソンジャパン株式会社」,平成21年1月29日まで「小池一夫劇画村塾株式会社」,同年3月30日まで「劇画村塾株式会社」。同日以降現商号。甲1,25)による次の各請求,すなわち,(1)一審被告小池書院及び一審被告Y1に対し,不法行為(独占的利用権の侵害)に基づく損害賠償を求める請求,(2)一審被告小池書院及び一審被告Y3に対し,不法行為(独占的利用権の侵害)に基づく損害賠償を求める請求,(3)主位的に,一審被告Y1,一審被告Y3,一審被告普及会及び一審被告Y4に対し,不法行為(独占的利用権の侵害)に基づく損害賠償を求めるとともに,予備的に,一審被告Y4に対し,取締役の任務懈怠責任に基づく損害賠償を求める請求,(4)一審被告Y1,一審被告Y3及び一審被告普及会に対し,不法行為(独占的利用権の侵害)に基づく損害賠償を求める請求,(5)一審被告Y1に対し,主位的に債務不履行,予備的に取締役の任務懈怠責任に基づく損害賠償を求める請求,(6)一審被告Y₁に対し,主位的に貸金の返還,予備的に不当利得の返還を求める請求,(7)一審被告Y1に対し,上記(1)〜(5)の予備的請求として,不当利得の返還を求める請求から成る事案である。このうち,上記(2)の請求は,当審において拡張されており(前記第1の1(3)イ),上記(5)の予備的請求(同(6)の予備的請求)は,当審において追加されたものである。
 原判決は,上記(6)の主位的請求を全部認容し,上記(1),(2)及び(7)の請求を一部認容し,その余の請求を棄却したため,一審原告が敗訴部分について控訴及び附帯控訴をするとともに(控訴及び附帯控訴を併せて一審原告敗訴部分全部の取消しを求めることとなる。),一審被告小池書院及び一審被告Y1がそれぞれその敗訴部分について控訴し,一審被告Y3がその敗訴部分について附帯控訴した。』
(6頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 一審被告小池書院及び一審被告Y1の共同不法行為に基づく請求

(1)本件独占的利用許諾契約の成立について(61頁以下)

本件著作物利用契約書から一審原告主張の本件独占的利用許諾契約の成立が認定されています。

(2)本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反性について(67頁以下)

一審被告Y1は、本件独占的利用許諾契約は一審被告Y1に著しく不利であり、公序良俗に反すると主張しましたが、控訴審は、本件独占的利用許諾契約はその対象に同契約後に制作される著作物を含み、その期間が長期にわたるとしても、公序良俗に反して無効であるということはできないと判断。原告の主張を認めていません。

(3)本件独占的利用許諾契約の解除について(70頁以下)

結論として解除は認められていません。

(4)一審被告小池書院による本件書籍1の出版について(75頁以下)

一審被告小池書院は、一審原告に無断で書籍を出版したとして、一審原告はこれにより本件独占的利用権を侵害されたものと判断されています。

(5)一審被告小池書院の故意(77頁以下)

一審被告小池書院の故意が認定されています。

(6)一審原告の得べかりし印税相当額について(78頁以下)

一審被告小池書院の本件独占的利用権を侵害する本件書籍1の無断出版によって、一審原告は一審被告小池書院から得べかりし印税相当額の損害を被ったとして、損害額2899万0448円が認定されています。

(7)一審被告Y1の責任(79頁)

一審被告小池書院の代表取締役である一審被告Y1は、一審被告小池書院と連帯して共同不法行為責任を負うと認定されています。

(8)消滅時効(79頁以下)

一審被告Y1との関係では、本件書籍1−1〜1−77についての損害賠償請求権が時効により消滅し、一審被告小池書院との関係では、本件書籍1−1〜1−75についての損害賠償請求権が時効により消滅していると認定されています。

結論として、一審被告小池書院及び一審被告Y1に対して、本件書籍1を一審原告に無断で出版して本件独占的利用権を侵害したことについて、民法709条、719条に基づいて521万9280円の損害が認定されています。

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2 一審被告小池書院及び一審被告Y3の共同不法行為に基づく請求

平成23年5月30日以降、一審被告Y1から代表取締役を交替した一審被告Y3及び一審被告小池書院の責任について、民法709条、719条に基づき連帯して損害額1421万4940円が認定されています(81頁以下)。

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3 一審被告Y1、一審被告Y3、一審被告普及会及び一審被告Y4の共同不法行為に基づく請求

連帯して35万米ドルの損害額が認定されています(88頁以下)。

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4 一審被告Y1の債務不履行等に基づく請求

一審被告Y1の債務不履行に基づく請求原因(4)に係る請求(主位的請求)は理由がないと判断されています(98頁以下)。

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5 一審被告Y1に対する金銭消費貸借契約に基づく請求

貸金返還請求として4723万7979円が認定されています(102頁以下)。

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6 一審被告Y1に対する不当利得返還請求

一審原告の一審被告Y1に対する2億円の不当利得返還請求は認められていません(107頁)。

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■コメント

劇画原作家小池一夫氏を被告とする事案の控訴審です。原審と事実認定で異なる部分があり、金額の算定も異なっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成27.3.25平成24(ワ)19125損害賠償請求事件
2015年05月18日原審記事