最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
交通事故相談会広告事件(控訴審)
知財高裁平成29.10.5平成29(ネ)10042損害賠償請求控訴事件(本訴)、著作権侵害差止等請求控訴事件(反訴)PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官 永田早苗
裁判官 森岡礼子
*裁判所サイト公表 2017.10.26
*キーワード:広告、黙示的承諾、複製権、編集著作物、一般不法行為論
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■事案
交通事故相談会向けに作成されたチラシ広告の利用許諾の有無、著作物性などが争点になった事案の控訴審
控訴人兼被控訴人(1審本訴原告兼反訴被告):弁護士
被控訴人兼控訴人(1審本訴被告兼反訴原告):行政書士
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■結論
各控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、12条、22条、民法709条
1 利用許諾の抗弁の成否
2 改変許諾の抗弁の成否
3 一般不法行為の成否
4 1審原告追加部分の著作物性及び複製権侵害の成否
5 本件1審被告ファイルの編集著作物性の有無
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■事案の概要
『本件は,1審原告が1審被告に対し,以下の(1)の本訴請求をし,1審被告が1審原告に対し,以下の(2)の反訴請求をする事案である。原審は,いずれの請求も棄却したので,1審原告と1審被告の双方が控訴を提起した。
(1)本訴請求
ア 1審原告が,1審被告が別紙5及び6の各広告(以下,順次,「1審被告広告1」及び「1審被告広告2」という。)を頒布する行為が,別紙1の広告(以下「1審原告広告」という)について1審原告が有する著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害することによって作成された物を頒布する行為,又は1審原告に対する一般不法行為に該当するとして,1審被告に対し,著作権侵害又は一般不法行為に基づく財産的損害に係る損害賠償金5万円,著作者人格権侵害又は一般不法行為に基づく精神的損害に係る損害賠償金30万円及びこれらに対する不法行為後の日である平成28年4月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求。
イ 1審原告が,1審被告が1審原告広告を複製し,又は頒布する行為は,1審原告が有する1審原告広告についての著作権(複製権)を侵害し,その侵害行為によって作成された物を頒布する行為であるとして,1審被告に対し,著作権法112条1項に基づき,1審原告広告の複製又は頒布の各差止めを求める請求。
ウ 1審原告が,1審被告が別紙7及び8の各アンケート(以下,順次「1審被告アンケート1」,「1審被告アンケート2」という。)を作成し,頒布する行為は,1審原告が作成した別紙4記載2の表(以下「本件1審原告ファイル」という。)のうち別紙2の赤枠内の記載に相当する部分(以下「1審原告追加部分」という。なお,別紙2の書面全体は1審被告アンケート1である。)についての1審原告の著作権(複製権)を侵害し,その侵害行為によって作成された物を頒布する行為であるとして,1審被告に対し,著作権法112条1項に基づき,1審原告追加部分の複製又は頒布の各差止めを求める請求。
(2)反訴請求
1審被告が,1審原告が本件1審原告ファイルの記載された宣伝広告チラシを作成し,頒布する行為は,別紙3の表(以下「本件1審被告ファイル」という。)についての1審被告の著作権(複製権又は翻案権)又は著作者人格権(同一性保持権)を侵害し,その侵害行為によって作成された物を頒布する行為であるとして,1審原告に対し,著作権法112条1項,2項に基づき,本件1審被告ファイルの複製又は頒布の各差止め並びに本件1審原告ファイルが記載された宣伝広告チラシの頒布の差止め及び廃棄を求めるとともに,著作者人格権侵害に基づく精神的損害に係る損害賠償金33万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 利用許諾の抗弁の成否
1審原告が、1審被告らに対して1審原告広告の利用を包括的に許諾していたかどうかについて、1審原告の主張する事実が認められず、1審原告による包括的許諾が認定されており、1審被告が1審原告広告についての著作権を侵害する行為を行ったと認めることはできないと控訴審は判断しています(15頁以下)。
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2 改変許諾の抗弁の成否
控訴審は、1審原告は1審原告広告を本件NPO法人の地方相談会で使用するのに必要な範囲で改変することを許諾していたと認定。また、1審被告広告1及び2がその範囲を超えて改変されたとは認められないと判断しています(21頁)。
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3 一般不法行為の成否
一般不法行為論について、控訴審は、1審原告の主張する利益が著作権や著作者人格権とは別個の法的に保護されるべき利益にあたるとはいえず、また、1審原告が1審原告広告の複製及び改変を許諾したものと認められるとして、1審被告が1審原告広告を無断で模倣したという1審原告の主張は主張の前提を欠くものであって失当であると判断しています(21頁)。
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4 1審原告追加部分の著作物性及び複製権侵害の成否
1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2の共通する部分は、いずれも一般的にみられるありふれた表現であり、著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現(著作権法2条1項1号)には当たらないとして、1審被告アンケート1及び2は1審原告追加部分の複製には該当しないと判断しています(21頁以下)。
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5 本件1審被告ファイルの編集著作物性の有無
反訴請求について、本件1審被告ファイルの事項は、本件1審被告ファイルの性質上、当然に設けられるべき項目であって、その順番もそれぞれの必要項目を適宜並べたに過ぎないというほかないとして、これらの項目を設けたことによって素材の選択又は配列による創作性(12条1項)があるということはできないと控訴審は判断しています(23頁以下)。
結論として、1審原告の本訴請求及び1審被告の反訴請求はいずれも理由がなく、これらを棄却した原判決は相当であるとして、控訴審は本件各控訴をいずれも棄却しています。
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■コメント
控訴審でも原審の結論が維持されています。
無料相談会のチラシやアンケートの内容については、原審の別紙をご覧頂けたらと思います。
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■過去のブログ記事
2017年06月19日 原審記事
交通事故相談会広告事件(控訴審)
知財高裁平成29.10.5平成29(ネ)10042損害賠償請求控訴事件(本訴)、著作権侵害差止等請求控訴事件(反訴)PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官 永田早苗
裁判官 森岡礼子
*裁判所サイト公表 2017.10.26
*キーワード:広告、黙示的承諾、複製権、編集著作物、一般不法行為論
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■事案
交通事故相談会向けに作成されたチラシ広告の利用許諾の有無、著作物性などが争点になった事案の控訴審
控訴人兼被控訴人(1審本訴原告兼反訴被告):弁護士
被控訴人兼控訴人(1審本訴被告兼反訴原告):行政書士
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■結論
各控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、12条、22条、民法709条
1 利用許諾の抗弁の成否
2 改変許諾の抗弁の成否
3 一般不法行為の成否
4 1審原告追加部分の著作物性及び複製権侵害の成否
5 本件1審被告ファイルの編集著作物性の有無
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■事案の概要
『本件は,1審原告が1審被告に対し,以下の(1)の本訴請求をし,1審被告が1審原告に対し,以下の(2)の反訴請求をする事案である。原審は,いずれの請求も棄却したので,1審原告と1審被告の双方が控訴を提起した。
(1)本訴請求
ア 1審原告が,1審被告が別紙5及び6の各広告(以下,順次,「1審被告広告1」及び「1審被告広告2」という。)を頒布する行為が,別紙1の広告(以下「1審原告広告」という)について1審原告が有する著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害することによって作成された物を頒布する行為,又は1審原告に対する一般不法行為に該当するとして,1審被告に対し,著作権侵害又は一般不法行為に基づく財産的損害に係る損害賠償金5万円,著作者人格権侵害又は一般不法行為に基づく精神的損害に係る損害賠償金30万円及びこれらに対する不法行為後の日である平成28年4月26日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求。
イ 1審原告が,1審被告が1審原告広告を複製し,又は頒布する行為は,1審原告が有する1審原告広告についての著作権(複製権)を侵害し,その侵害行為によって作成された物を頒布する行為であるとして,1審被告に対し,著作権法112条1項に基づき,1審原告広告の複製又は頒布の各差止めを求める請求。
ウ 1審原告が,1審被告が別紙7及び8の各アンケート(以下,順次「1審被告アンケート1」,「1審被告アンケート2」という。)を作成し,頒布する行為は,1審原告が作成した別紙4記載2の表(以下「本件1審原告ファイル」という。)のうち別紙2の赤枠内の記載に相当する部分(以下「1審原告追加部分」という。なお,別紙2の書面全体は1審被告アンケート1である。)についての1審原告の著作権(複製権)を侵害し,その侵害行為によって作成された物を頒布する行為であるとして,1審被告に対し,著作権法112条1項に基づき,1審原告追加部分の複製又は頒布の各差止めを求める請求。
(2)反訴請求
1審被告が,1審原告が本件1審原告ファイルの記載された宣伝広告チラシを作成し,頒布する行為は,別紙3の表(以下「本件1審被告ファイル」という。)についての1審被告の著作権(複製権又は翻案権)又は著作者人格権(同一性保持権)を侵害し,その侵害行為によって作成された物を頒布する行為であるとして,1審原告に対し,著作権法112条1項,2項に基づき,本件1審被告ファイルの複製又は頒布の各差止め並びに本件1審原告ファイルが記載された宣伝広告チラシの頒布の差止め及び廃棄を求めるとともに,著作者人格権侵害に基づく精神的損害に係る損害賠償金33万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 利用許諾の抗弁の成否
1審原告が、1審被告らに対して1審原告広告の利用を包括的に許諾していたかどうかについて、1審原告の主張する事実が認められず、1審原告による包括的許諾が認定されており、1審被告が1審原告広告についての著作権を侵害する行為を行ったと認めることはできないと控訴審は判断しています(15頁以下)。
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2 改変許諾の抗弁の成否
控訴審は、1審原告は1審原告広告を本件NPO法人の地方相談会で使用するのに必要な範囲で改変することを許諾していたと認定。また、1審被告広告1及び2がその範囲を超えて改変されたとは認められないと判断しています(21頁)。
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3 一般不法行為の成否
一般不法行為論について、控訴審は、1審原告の主張する利益が著作権や著作者人格権とは別個の法的に保護されるべき利益にあたるとはいえず、また、1審原告が1審原告広告の複製及び改変を許諾したものと認められるとして、1審被告が1審原告広告を無断で模倣したという1審原告の主張は主張の前提を欠くものであって失当であると判断しています(21頁)。
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4 1審原告追加部分の著作物性及び複製権侵害の成否
1審原告追加部分と1審被告アンケート1及び2の共通する部分は、いずれも一般的にみられるありふれた表現であり、著作権法によって保護される思想又は感情の創作的な表現(著作権法2条1項1号)には当たらないとして、1審被告アンケート1及び2は1審原告追加部分の複製には該当しないと判断しています(21頁以下)。
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5 本件1審被告ファイルの編集著作物性の有無
反訴請求について、本件1審被告ファイルの事項は、本件1審被告ファイルの性質上、当然に設けられるべき項目であって、その順番もそれぞれの必要項目を適宜並べたに過ぎないというほかないとして、これらの項目を設けたことによって素材の選択又は配列による創作性(12条1項)があるということはできないと控訴審は判断しています(23頁以下)。
結論として、1審原告の本訴請求及び1審被告の反訴請求はいずれも理由がなく、これらを棄却した原判決は相当であるとして、控訴審は本件各控訴をいずれも棄却しています。
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■コメント
控訴審でも原審の結論が維持されています。
無料相談会のチラシやアンケートの内容については、原審の別紙をご覧頂けたらと思います。
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■過去のブログ記事
2017年06月19日 原審記事