最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「性犯罪被害にあうということ」映画化事件(控訴審)
知財高裁平成28.12.26平成27(ネ)10123著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官 片岡早苗
裁判官 古庄 研
*裁判所サイト公表 2017.1.12
*キーワード:映画、原作小説、映画化合意、翻案権、同一性保持権、名誉権
--------------------
■事案
性犯罪被害に関するノンフィクション小説の映画化にあたって合意の有無などが争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審被告):テレビディレクター兼プロデューサー
被控訴人(1審原告):ノンフィクション小説著者
--------------------
■結論
原判決変更
--------------------
■争点
条文 著作権法22条、27条、20条、112条
1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額
--------------------
■事案の概要
『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)(1)控訴人の製作に係る別紙物件目録(原判決添付の別紙物件目録と同一であるから,これを引用する。)記載の映画(本件映画)は,被控訴人の執筆に係る本件各著作物の複製物又は二次的著作物(翻案物)であると主張して,本件各著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,翻案権)及び本件各著作物の二次的著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,上映権,公衆送信権〔自動公衆送信の場合にあっては,送信可能化権を含む。〕及び頒布権),並びに本件各著作物について被控訴人が有する著作者人格権(同一性保持権)に基づき,本件映画の上映,複製,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布(本件映画の上映等)の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,本件映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物(本件映画のマスターテープ等)の廃棄(同条2項)を求め,(2)本件映画は,被控訴人の人格権としての名誉権又は名誉感情を侵害するとして,同人格権に基づき,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(3)本件映画製作の前に控訴人・被控訴人間に成立した本件各著作物不使用の合意に基づいて,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(2)著作者人格権(同一性保持権)侵害(本件各著作物を被控訴人の意に反して改変されたこと)の不法行為による損害賠償金400万円(慰謝料300万円と弁護士費用100万円の合計)及びこれに対する不法行為の後である平成26年5月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)債務不履行(控訴人が被控訴人との本件各著作物不使用の合意に違反して本件映画を製作したこと)による損害賠償金(精神的苦痛に対する慰謝料)100万円及びこれに対する平成26年12月27日(同月26日付け訴えの変更申立書(2)の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,被控訴人は,上記(2)及び(3)の請求について,仮執行宣言を申し立てた。)。』
『原審は,(1)(1)(a)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度(ただし,著作者人格権に基づく差止請求は,本件映画の複製の差止めを求める限度)で認容し,(b)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)(a)人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙侵害認定表現目録1及び2の(1)〜(3)に記載の表現を含む本件映画の上映等(ただし,本件映画の複製を除く。)の差止めを求める限度で認容し,(b)人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,これを棄却し,(3)(a)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度で認容し,(b)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求については,55万円(慰謝料50万円と弁護士費用5万円)及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,(3)本件各著作物不使用の合意違反の債務不履行に基づく損害賠償請求については,これを棄却した。
原判決に対し,控訴人のみが控訴を提起した。』(2頁以下)
--------------------
■判決内容
<争点>
1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額
[判決主文]
『1 原判決主文第1項ないし第4項を次のとおり変更する。
(1)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(2)控訴人は,別紙人格権侵害認定表現目録記載1ないし4に記載の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(3)控訴人は,別紙合意に基づく差止一覧記載の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(4)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物を廃棄せよ。
(5)控訴人は,被控訴人に対し,55万円及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。』
[判断理由]略
--------------------
■コメント
実質敗訴の一審被告プロデューサー側だけが控訴しました。差止めの対象の点などを除いて大筋で原判決の結論が維持されているといえます。
なお、51頁以下に別紙が添付されていて内容が詳細に分かり参考になります。
51頁に「翻案権侵害認定表現目録」、52頁以下に「エピソード別対比表」、61頁に「人格権侵害認定表現目録」、62頁以下に「合意に基づく差止一覧」、137頁以下に「控訴人確定稿対比表」、212頁以下には「合意に基づく差止一覧についての補足説明」があります。
--------------------
■過去のブログ記事
2015年11月09日 原審記事
原判決PDF
原審別紙
「性犯罪被害にあうということ」映画化事件(控訴審)
知財高裁平成28.12.26平成27(ネ)10123著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官 片岡早苗
裁判官 古庄 研
*裁判所サイト公表 2017.1.12
*キーワード:映画、原作小説、映画化合意、翻案権、同一性保持権、名誉権
--------------------
■事案
性犯罪被害に関するノンフィクション小説の映画化にあたって合意の有無などが争点となった事案の控訴審
控訴人 (1審被告):テレビディレクター兼プロデューサー
被控訴人(1審原告):ノンフィクション小説著者
--------------------
■結論
原判決変更
--------------------
■争点
条文 著作権法22条、27条、20条、112条
1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額
--------------------
■事案の概要
『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)(1)控訴人の製作に係る別紙物件目録(原判決添付の別紙物件目録と同一であるから,これを引用する。)記載の映画(本件映画)は,被控訴人の執筆に係る本件各著作物の複製物又は二次的著作物(翻案物)であると主張して,本件各著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,翻案権)及び本件各著作物の二次的著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,上映権,公衆送信権〔自動公衆送信の場合にあっては,送信可能化権を含む。〕及び頒布権),並びに本件各著作物について被控訴人が有する著作者人格権(同一性保持権)に基づき,本件映画の上映,複製,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布(本件映画の上映等)の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,本件映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物(本件映画のマスターテープ等)の廃棄(同条2項)を求め,(2)本件映画は,被控訴人の人格権としての名誉権又は名誉感情を侵害するとして,同人格権に基づき,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(3)本件映画製作の前に控訴人・被控訴人間に成立した本件各著作物不使用の合意に基づいて,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(2)著作者人格権(同一性保持権)侵害(本件各著作物を被控訴人の意に反して改変されたこと)の不法行為による損害賠償金400万円(慰謝料300万円と弁護士費用100万円の合計)及びこれに対する不法行為の後である平成26年5月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)債務不履行(控訴人が被控訴人との本件各著作物不使用の合意に違反して本件映画を製作したこと)による損害賠償金(精神的苦痛に対する慰謝料)100万円及びこれに対する平成26年12月27日(同月26日付け訴えの変更申立書(2)の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,被控訴人は,上記(2)及び(3)の請求について,仮執行宣言を申し立てた。)。』
『原審は,(1)(1)(a)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度(ただし,著作者人格権に基づく差止請求は,本件映画の複製の差止めを求める限度)で認容し,(b)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)(a)人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙侵害認定表現目録1及び2の(1)〜(3)に記載の表現を含む本件映画の上映等(ただし,本件映画の複製を除く。)の差止めを求める限度で認容し,(b)人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,これを棄却し,(3)(a)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度で認容し,(b)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求については,55万円(慰謝料50万円と弁護士費用5万円)及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,(3)本件各著作物不使用の合意違反の債務不履行に基づく損害賠償請求については,これを棄却した。
原判決に対し,控訴人のみが控訴を提起した。』(2頁以下)
--------------------
■判決内容
<争点>
1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額
[判決主文]
『1 原判決主文第1項ないし第4項を次のとおり変更する。
(1)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(2)控訴人は,別紙人格権侵害認定表現目録記載1ないし4に記載の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(3)控訴人は,別紙合意に基づく差止一覧記載の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(4)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物を廃棄せよ。
(5)控訴人は,被控訴人に対し,55万円及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。』
[判断理由]略
--------------------
■コメント
実質敗訴の一審被告プロデューサー側だけが控訴しました。差止めの対象の点などを除いて大筋で原判決の結論が維持されているといえます。
なお、51頁以下に別紙が添付されていて内容が詳細に分かり参考になります。
51頁に「翻案権侵害認定表現目録」、52頁以下に「エピソード別対比表」、61頁に「人格権侵害認定表現目録」、62頁以下に「合意に基づく差止一覧」、137頁以下に「控訴人確定稿対比表」、212頁以下には「合意に基づく差止一覧についての補足説明」があります。
--------------------
■過去のブログ記事
2015年11月09日 原審記事
原判決PDF
原審別紙