最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コミュニティFM「リスラジ」事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.22平成28(ネ)10072地位確認請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2017.1.5
*キーワード:利用許諾契約、利用許諾契約約款、放送、配信、サイマル放送、ザッピング機能

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■事案

コミュニティFMがサイマル放送(ラジオ番組を地上波放送と同時にインターネット配信すること)でザッピング機能を提供した点がレコード協会との間の契約更新拒絶事由にあたるかどうかなどが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):コミュニティFMラジオ局運営会社27社
被控訴人(1審被告):日本レコード協会

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権等管理事業法16条、独禁法19条、民法90条

1 被控訴人の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か
2 被控訴人の本件更新拒絶は信義則に反し無効か
3 被控訴人の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か
4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

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■事案の概要

『本件は,コミュニティ放送を行う放送局(FMラジオ局)を運営する控訴人ら(一審原告ら)が,被控訴人(一審被告)に対し,被控訴人による本件更新拒絶(控訴人らがそれぞれラジオ音楽番組をスマートフォン及びパソコン向け無料配信サービス「Listen Radio」〔リスラジ〕においてインターネット配信〔本件各音楽番組配信〕しているのは,被控訴人が管理するレコード〔管理レコード〕の利用に関する,控訴人らと被控訴人との間の利用許諾契約〔本件利用許諾契約〕に基づく使用料規程〔本件使用料規程〕の細則〔本件使用料規程細則〕の適用基準に違反するとして,本件利用許諾契約の更新を拒絶した行為)は,著作権等管理事業法(管理事業法)16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)所定の不公正な取引方法に該当し,又は信義則に反するから,私法上無効であると主張して,本件利用許諾契約に基づき,(1)主位的に,本件使用料規程細則第3条に定める使用料を支払うことにより,被控訴人による著作隣接権管理に係る商業用レコード(被控訴人の管理レコード)を録音したコミュニティ放送番組をインターネット上で同時に配信することを目的として,被控訴人の管理レコードを複製及び送信可能化する方法で利用することができる契約上の地位にあることの確認を求め,(2)予備的に,本件使用料規程「第3節1(2)本表」(本件使用料規程本則)に定める使用料(本件使用料規程細則第3条に定める使用料よりも高額である。)を支払うことにより,上記契約上の地位にあることの確認を求める事案である。
 原判決は,本件更新拒絶について,控訴人らの主張(管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否,独禁法所定の不公正な取引方法,信義則違反)をいずれも認めず,控訴人らの請求を棄却したため,これを不服として控訴人らが控訴した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か

控訴人らは、控訴審において、本件各音楽番組が控訴人らの「自主制作番組」に該当するかどうかについてさらに主張を重ねましたが、本件各音楽番組は株式会社エムティアイ(MTI)の発意と責任の下で制作されていると認めるのが合理的であり、およそ控訴人らの主体的な関与の下で制作されたものとはいえないと控訴審は判断、本件各音楽番組の自主制作番組性が否定されています(26頁以下)。
結論として、控訴人らの主張は認められていません。

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2 被控訴人の本件更新拒絶は信義則に反し無効か

控訴人らは、本件各音楽番組とミュージックバードが制作しコミュニティ放送事業者に供給している音楽番組とで不当に取扱いを異にしており、控訴人らに対してのみ本件更新拒絶により本件各音楽番組のサイマル配信を認めておらず、かかる取扱いが信義則に反するとして、本件更新拒絶は信義則に反し無効である旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(35頁以下)。

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3 被控訴人の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か

控訴人らは、被控訴人の圧倒的市場支配力に照らせば強度の公正競争阻害性を生じさせるとして、独禁法上の「共同の取引拒絶」又は「その他の取引拒絶」に該当する旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(36頁)。

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4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

控訴人らは、本件更新拒絶はリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに参加しているコミュニティ放送局だけを差別的に取り扱うために行われたものであり、取引条件等の差別的取扱いに該当するため無効(民法90条)である旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(36頁以下)。

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■コメント

原審の棄却の判断が控訴審でも維持されています。控訴審は1回の口頭弁論だけで結審したと伺っています。

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■過去のブログ記事

2016年06月20日 原審記事