最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カラオケ音源動画配信事件

東京地裁平成28.12.20平成28(ワ)34083著作隣接権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2017.1.5
*キーワード:カラオケ、レコード製作者、動画、送信可能化、差止めの必要性

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■事案

カラオケ音源を使用して歌唱している場面を撮影してYouTubeで動画配信した事案

原告:業務用通信カラオケ機器製造販売会社
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法96条の2、112条

1 本件動画の送信可能化の差止めの肯否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告が原告の作成したカラオケ音源を用いてカラオケ歌唱を行っている様子を自ら動画撮影した動画の電磁的記録をインターネット上の動画共有サイトにアップロードした行為が,原告の上記カラオケ音源に係る送信可能化権(著作権法96条の2)の侵害に当たると主張して,同法112条1項及び2項に基づく上記動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の消去を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H28.08 原告がカラオケ用音源(本件DAM音源)作成
H28.09 被告が本件動画をYouTubeにアップロード

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■判決内容

<争点>

1 本件動画の送信可能化の差止めの肯否

被告は、カラオケ店舗において業務用通信カラオケ機器DAMの端末を利用してカラオケ歌唱を行い、その際に自身が歌唱する様子を動画撮影して本件DAM音源の音が記録された動画をインターネット上の動画共有サイトであるYouTubeにアップロードしました。
原告は、本件行為は原告の本件DAM音源に係る送信可能化権を侵害する行為に当たり、本件動画は既にYouTube上から削除されているものの、被告が他の動画共有サービスを用いるなどして本件動画の電磁的記録を送信可能化する可能性があること、被告による原告の送信可能化権侵害を防ぐためには被告が管理する本件動画の電磁的記録を消去する必要があるとして、被告に対して本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めました。
対して、被告は、自主的に本件動画をYouTube上から削除したこと、また、そもそも本件動画は主として被告自身の歌唱の様子を撮影したものであって原告の利益を明確に侵害したとはいい難いものであるとして、差止請求等の訴訟を提起することは適切でなく原告は被告に連絡をとって被告が自主的に削除する機会を与えるべきであった旨反論しました。
この点について、裁判所は、本件動画がYouTube上から現時点では削除されているとしても、本件動画の電磁的記録が被告の有する記録媒体から消去されたことはうかがわれないとして、原告の上記請求について差止め等の必要性を欠くとみることは相当でないと判断。
本件行為は本件DAM音源に係る原告の送信可能化権の侵害に当たることから、原告は被告に対し本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めることができると判断しています(3頁)。

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■コメント

カラオケ音源を使用して歌唱しているシーンを自撮りして動画配信した事案となります。
動画サイトからすぐに削除したようですが、内容や態様が看過できないものだったのか、差止めやデータ消去の必要が認められています。