最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
音楽CD製造販売業務委託契約事件(控訴審)
知財高裁平成28.11.2平成28(ネ)10029損害賠償等請求控訴事件、同付帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 古河謙一
裁判官 鈴木わかな
*裁判所サイト公表 2016.11.04
*キーワード:業務委託、CD販売、配信、条理、注意義務
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■事案
音楽CD製造販売業務委託契約について債務不履行があったかどうかなどが争点となった事案の控訴審
控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):衛星放送事業者
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):音楽制作会社
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■結論
控訴棄却、附帯控訴原判決変更
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■争点
条文 著作権法114条2項、114条の5
1 著作隣接権侵害の不法行為の成否
2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否
3 損害額
4 被控訴人の申立て
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■事案の概要
『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信により,被控訴人が有する本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権,貸与権,譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金722万3480円(著作権法114条2項)の支払,(2)本件CDを廃盤にして,被控訴人の本件原盤,ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金839万1174円の支払,(3)民法709条に基づく上記(1)及び(2)に関する弁護士相談料に係る損害賠償金113万3232円の合計1674万7886円及びこれに対する平成23年4月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,前記(1)(1)につき,控訴人が,被控訴人のレコード製作者の著作隣接権を侵害したとして,控訴人に対し,7077円及びうち2000円に対する平成23年4月5日から,うち5077円に対する平成25年3月31日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で損害賠償金の支払を認め,その余の請求をいずれも棄却した。』
『控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
被控訴人は,附帯控訴を提起し,原審における1674万7886円及びこれに対する遅延損害金の請求中,前記(1)(1)著作隣接権侵害に係る損害を原審における722万3480円から778万1706円とし,上記請求を,1730万6112円及び遅延損害金の請求に拡張した。』(2頁以下)
『被控訴人代表者及び原審被告タッズらは,いずれも控訴せず,また,被控訴人も,原審被告タッズら及び同Bに対する請求に関しては控訴しなかった。したがって,被控訴人代表者の請求並びに被控訴人の原審被告タッズら及び同Bに対する請求は移審せず,それぞれの控訴期間の満了をもって,確定した。』
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■判決内容
<争点>
1 著作隣接権侵害の不法行為の成否
控訴人は、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たって被控訴人の許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務を負うものであるなどとして、結論として、原審同様、控訴人の不法行為責任を肯定しています(13頁以下)。
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2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否
原審同様、本件廃盤処置により被控訴人の所有権が侵害されて被控訴人主張の損害が発生したとは認められていません(19頁以下)。
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3 損害額
(1)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る複製権及び譲渡権の侵害
4952円(619円×8枚 著作権法114条2項)
(2)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る貸与権の侵害による損害
2000円(250円×8枚 著作権法114条2項)
(3)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害
配信関係の損害について、控訴審は、控訴人が本件楽曲に係る配信実績及び売上金について十分な調査をして資料を提出しているか、疑問を提示。また、控訴人自身がいまだ把握しきれていない本件楽曲の配信実績が存在する可能性も否定できない旨指摘した上で、被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害額を立証するために必要な事実を立証することは、当該事実の性質上極めて困難なものといわざるを得ないと判断。
口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて事実審の口頭弁論終結日である平成28年9月28日までの本件楽曲の無断配信の回数は400回と認定。また、配信1回当たり控訴人が受領した金額の平均はおおむね146円と認定しています(著作権法114条の5)。
5万8400円(146円×400回)
被控訴人の損害額は、5万8400円(146円×400回)から支払済みの1万9329円を控除した3万9071円と認定しています。
結論として、合計4万6023円が損害額として認定されています(22頁以下)。
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4 被控訴人の申立て
被控訴人の調査嘱託や文書提出命令の申立てについて、必要性がないなどとしていずれも認められていません(32頁以下)。
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■コメント
原審の判断が基本的に維持されています。損害額については、配信部分について増額の認定になっています。
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■過去のブログ記事
原審記事(2016年06月16日)
音楽CD製造販売業務委託契約事件(控訴審)
知財高裁平成28.11.2平成28(ネ)10029損害賠償等請求控訴事件、同付帯控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 古河謙一
裁判官 鈴木わかな
*裁判所サイト公表 2016.11.04
*キーワード:業務委託、CD販売、配信、条理、注意義務
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■事案
音楽CD製造販売業務委託契約について債務不履行があったかどうかなどが争点となった事案の控訴審
控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):衛星放送事業者
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):音楽制作会社
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■結論
控訴棄却、附帯控訴原判決変更
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■争点
条文 著作権法114条2項、114条の5
1 著作隣接権侵害の不法行為の成否
2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否
3 損害額
4 被控訴人の申立て
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■事案の概要
『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信により,被控訴人が有する本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権,貸与権,譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金722万3480円(著作権法114条2項)の支払,(2)本件CDを廃盤にして,被控訴人の本件原盤,ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金839万1174円の支払,(3)民法709条に基づく上記(1)及び(2)に関する弁護士相談料に係る損害賠償金113万3232円の合計1674万7886円及びこれに対する平成23年4月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,前記(1)(1)につき,控訴人が,被控訴人のレコード製作者の著作隣接権を侵害したとして,控訴人に対し,7077円及びうち2000円に対する平成23年4月5日から,うち5077円に対する平成25年3月31日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で損害賠償金の支払を認め,その余の請求をいずれも棄却した。』
『控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
被控訴人は,附帯控訴を提起し,原審における1674万7886円及びこれに対する遅延損害金の請求中,前記(1)(1)著作隣接権侵害に係る損害を原審における722万3480円から778万1706円とし,上記請求を,1730万6112円及び遅延損害金の請求に拡張した。』(2頁以下)
『被控訴人代表者及び原審被告タッズらは,いずれも控訴せず,また,被控訴人も,原審被告タッズら及び同Bに対する請求に関しては控訴しなかった。したがって,被控訴人代表者の請求並びに被控訴人の原審被告タッズら及び同Bに対する請求は移審せず,それぞれの控訴期間の満了をもって,確定した。』
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■判決内容
<争点>
1 著作隣接権侵害の不法行為の成否
控訴人は、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たって被控訴人の許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務を負うものであるなどとして、結論として、原審同様、控訴人の不法行為責任を肯定しています(13頁以下)。
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2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否
原審同様、本件廃盤処置により被控訴人の所有権が侵害されて被控訴人主張の損害が発生したとは認められていません(19頁以下)。
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3 損害額
(1)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る複製権及び譲渡権の侵害
4952円(619円×8枚 著作権法114条2項)
(2)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る貸与権の侵害による損害
2000円(250円×8枚 著作権法114条2項)
(3)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害
配信関係の損害について、控訴審は、控訴人が本件楽曲に係る配信実績及び売上金について十分な調査をして資料を提出しているか、疑問を提示。また、控訴人自身がいまだ把握しきれていない本件楽曲の配信実績が存在する可能性も否定できない旨指摘した上で、被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害額を立証するために必要な事実を立証することは、当該事実の性質上極めて困難なものといわざるを得ないと判断。
口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて事実審の口頭弁論終結日である平成28年9月28日までの本件楽曲の無断配信の回数は400回と認定。また、配信1回当たり控訴人が受領した金額の平均はおおむね146円と認定しています(著作権法114条の5)。
5万8400円(146円×400回)
被控訴人の損害額は、5万8400円(146円×400回)から支払済みの1万9329円を控除した3万9071円と認定しています。
結論として、合計4万6023円が損害額として認定されています(22頁以下)。
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4 被控訴人の申立て
被控訴人の調査嘱託や文書提出命令の申立てについて、必要性がないなどとしていずれも認められていません(32頁以下)。
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■コメント
原審の判断が基本的に維持されています。損害額については、配信部分について増額の認定になっています。
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■過去のブログ記事
原審記事(2016年06月16日)