最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
BSS−PACKソフト営業秘密事件
東京地裁平成28.10.25平成28(ワ)360等不正競争行為差止請求事件、同承継参加申出事件、プログラム著作権確認請求事件PDF
別紙1(BSS−PACK 中核部(ミドルソフト)営業秘密部プログラム目録)
別紙2(プログラム目録)
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 萩原孝基
裁判官 中嶋邦人
*裁判所サイト公表 2016.10.27
*キーワード:プログラム、著作権譲渡契約、営業秘密
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■事案
ソフトウェアの著作権譲渡に伴って営業秘密も移転していたかどうかが争点となった事案
第1事件原告兼第2事件原告:ソフトウェア開発販売会社、代表者
第1事件被告兼第2事件被告:コンピュータ情報処理サービス会社
--------------------
■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法61条2項、不正競争防止法2条1項4号、5号、10号
1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等
--------------------
■事案の概要
『第1事件は,原告ソフトウェア部品社が,被告に対し,本件営業秘密部プログラムが第1事件原告の営業秘密に当たるところ,被告がこれを取得して使用し,被告製品を製造して販売したことが不正競争(不正競争防止法2条1項4号又は5号,10号)に当たると主張して,同法3条1項及び2項に基づき被告製品の販売差止め及び廃棄等を求めるとともに,第1事件承継参加人らが,被告に対し,原告ソフトウェア部品社と本件営業秘密部プログラムを共有するに至ったと主張して承継参加を申し出て,上記請求と同趣旨の請求をする事案である。
第2事件は,原告らが,被告に対し,本件先行ソフトウェア部品プログラムについて,(1)これを創作したことによる著作権,(2)「オリジナルソフトウェア部品」という名称のプログラム(以下「本件オリジナルソフトウェア部品プログラム」という。)を原著作物とする二次的著作物である本件先行ソフトウェア部品プログラムについての原著作者の著作権(以下,上記(1)の著作権と併せて「本件各著作権」という。)を有することの確認を求める事案である』
(3頁)
<経緯>
H02 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK(VAX/VMS版)」開発販売
H09 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK」開発販売
H15 被告が被告製品販売
H18 原告ビーエスエス社とサンライズ社が事業継続支援合意、著作権譲渡
H19 サンライズ社から株式会社フロンテックへ著作権譲渡
H21 株式会社フロンテックから被告へ著作権譲渡
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■判決内容
<争点>
1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等
原告らは、本件営業秘密部プログラムが原告らの営業秘密であり、また、本件各著作権が原告らに帰属する旨主張しました。これに対して被告はこれらに係る権利は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されたことから、第1事件及び第2事件の原告らの請求はいずれも認められない旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件合意及びこれに引き続いて締結された本件譲渡契約に関して、
・実質的に原告ビーエスエス社のBSS−PACKに関する事業を従業員ごと他の会社に移転させて、その事業をサンライズ社の支援の下で継続させることを念頭に置いたものである。
・本件譲渡契約の契約書上、譲渡対象については包括的な記載となっており、本件営業秘密部プログラム及び本件先行ソフトウェア部品プログラムを含め明示的に譲渡対象から除かれたプログラムはない。
・原告ビーエスエス社はサンライズ社に対し著作者人格権を行使しないとされた。
・本件登録プログラムについては著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて譲渡された。
といった点から、本件譲渡契約により譲渡されたのは旧BSS−PACKないしBSS−PACKに関するプログラム著作物の全てについての著作権その他の知的財産権であったと解するのが相当であり、本件営業秘密部プログラムについて、原告ビーエスエス社が有していたという営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムに係る著作権も譲渡対象であったと判断。
以上から、(1)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権を原告ビーエスエス社が有していたとしても、(2)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されており、原告らが現時点においてこれを有するということはできず、結論として、原告らの第1事件及び第2事件の請求はいずれも理由がないと判断されています。
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■コメント
対象となったソフトは、販売管理、購買管理、生産管理、財務管理、人事管理などからなる業務領域を網羅する企業基幹業務サポートのための統合業務ERP(Enterprise Resource Planning)情報システムパッケージ製品です。
本件については紛争となるような事案だったのか疑問が残りますが、エスクロウサービスなどにも触れられていて、ソフト開発・販売を巡る融資や金回りの現場の一端に触れる事案としては参考になるかもしれません。
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■参考サイト
株式会社サンライズ・テクノロジー(平成18年4月3日)
『BSS-PACK』ERPビジネスの組織設置のお知らせ
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■「BSS-PACK」関連訴訟
ソフトウェア提供パートナー契約事件
原審記事
控訴審記事
統合業務管理ERPソフト事件
控訴審記事
証書真否確認事件
知財高裁平成27.6.24平成27(ネ)10035証書真否確認請求控訴事件
判決PDF
BSS−PACKソフト営業秘密事件
東京地裁平成28.10.25平成28(ワ)360等不正競争行為差止請求事件、同承継参加申出事件、プログラム著作権確認請求事件PDF
別紙1(BSS−PACK 中核部(ミドルソフト)営業秘密部プログラム目録)
別紙2(プログラム目録)
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 萩原孝基
裁判官 中嶋邦人
*裁判所サイト公表 2016.10.27
*キーワード:プログラム、著作権譲渡契約、営業秘密
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■事案
ソフトウェアの著作権譲渡に伴って営業秘密も移転していたかどうかが争点となった事案
第1事件原告兼第2事件原告:ソフトウェア開発販売会社、代表者
第1事件被告兼第2事件被告:コンピュータ情報処理サービス会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法61条2項、不正競争防止法2条1項4号、5号、10号
1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等
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■事案の概要
『第1事件は,原告ソフトウェア部品社が,被告に対し,本件営業秘密部プログラムが第1事件原告の営業秘密に当たるところ,被告がこれを取得して使用し,被告製品を製造して販売したことが不正競争(不正競争防止法2条1項4号又は5号,10号)に当たると主張して,同法3条1項及び2項に基づき被告製品の販売差止め及び廃棄等を求めるとともに,第1事件承継参加人らが,被告に対し,原告ソフトウェア部品社と本件営業秘密部プログラムを共有するに至ったと主張して承継参加を申し出て,上記請求と同趣旨の請求をする事案である。
第2事件は,原告らが,被告に対し,本件先行ソフトウェア部品プログラムについて,(1)これを創作したことによる著作権,(2)「オリジナルソフトウェア部品」という名称のプログラム(以下「本件オリジナルソフトウェア部品プログラム」という。)を原著作物とする二次的著作物である本件先行ソフトウェア部品プログラムについての原著作者の著作権(以下,上記(1)の著作権と併せて「本件各著作権」という。)を有することの確認を求める事案である』
(3頁)
<経緯>
H02 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK(VAX/VMS版)」開発販売
H09 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK」開発販売
H15 被告が被告製品販売
H18 原告ビーエスエス社とサンライズ社が事業継続支援合意、著作権譲渡
H19 サンライズ社から株式会社フロンテックへ著作権譲渡
H21 株式会社フロンテックから被告へ著作権譲渡
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■判決内容
<争点>
1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等
原告らは、本件営業秘密部プログラムが原告らの営業秘密であり、また、本件各著作権が原告らに帰属する旨主張しました。これに対して被告はこれらに係る権利は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されたことから、第1事件及び第2事件の原告らの請求はいずれも認められない旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件合意及びこれに引き続いて締結された本件譲渡契約に関して、
・実質的に原告ビーエスエス社のBSS−PACKに関する事業を従業員ごと他の会社に移転させて、その事業をサンライズ社の支援の下で継続させることを念頭に置いたものである。
・本件譲渡契約の契約書上、譲渡対象については包括的な記載となっており、本件営業秘密部プログラム及び本件先行ソフトウェア部品プログラムを含め明示的に譲渡対象から除かれたプログラムはない。
・原告ビーエスエス社はサンライズ社に対し著作者人格権を行使しないとされた。
・本件登録プログラムについては著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて譲渡された。
といった点から、本件譲渡契約により譲渡されたのは旧BSS−PACKないしBSS−PACKに関するプログラム著作物の全てについての著作権その他の知的財産権であったと解するのが相当であり、本件営業秘密部プログラムについて、原告ビーエスエス社が有していたという営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムに係る著作権も譲渡対象であったと判断。
以上から、(1)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権を原告ビーエスエス社が有していたとしても、(2)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されており、原告らが現時点においてこれを有するということはできず、結論として、原告らの第1事件及び第2事件の請求はいずれも理由がないと判断されています。
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■コメント
対象となったソフトは、販売管理、購買管理、生産管理、財務管理、人事管理などからなる業務領域を網羅する企業基幹業務サポートのための統合業務ERP(Enterprise Resource Planning)情報システムパッケージ製品です。
本件については紛争となるような事案だったのか疑問が残りますが、エスクロウサービスなどにも触れられていて、ソフト開発・販売を巡る融資や金回りの現場の一端に触れる事案としては参考になるかもしれません。
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■参考サイト
株式会社サンライズ・テクノロジー(平成18年4月3日)
『BSS-PACK』ERPビジネスの組織設置のお知らせ
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■「BSS-PACK」関連訴訟
ソフトウェア提供パートナー契約事件
原審記事
控訴審記事
統合業務管理ERPソフト事件
控訴審記事
証書真否確認事件
知財高裁平成27.6.24平成27(ネ)10035証書真否確認請求控訴事件
判決PDF