最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件(控訴審)
知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10049印税等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 片瀬 亮
*裁判所サイト公表 2016.10.20
*キーワード:出版契約、印税支払時期
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■事案
ビジネス辞典の編著者が印税未払いを理由として出版社を訴えた事案の控訴審
控訴人(一審原告) :個人
被控訴人(一審被告):出版社
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■結論
原判決変更
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■争点
条文 民法415条、民法709条
1 印税額及び支払時期
2 不法行為の成否及び損害額
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■事案の概要
『本件は,被控訴人から出版された本件書籍の編著者である控訴人が,被控訴人との間の本件契約に基づく印税が未払であるなどと主張し,被控訴人に対し,(1)本件契約に基づく印税の一部140万円及びこれに対する支払日である平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)不法行為に基づく損害賠償金1080万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,(3)本件契約17条に係る文言についての控訴人の解釈が正しいことを認めるよう求め,また(4)本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について,本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める事案である。
原審は,控訴人の請求のうち,上記(3)及び(4)に係る訴えを却下し,その余をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,原判決中の控訴人の請求を棄却した部分のうち,(1)本件契約に基づく印税の一部140万円及びこれに対する平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)不法行為に基づく損害賠償金500万円及びこれに対する平成27年9月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において,控訴した(原判決が控訴人の請求に係る訴えを却下した部分(主文第1項)は不服の対象とされていない。)。』(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 印税額及び支払時期
(1)平成28年4月4日(発行日から2年後)以前に発生した印税額
控訴人(一審原告)は、本件書籍が増刷されたと主張しましたが、控訴審は認めていません(6頁以下)。
また、本件書籍の初刷部数は1000冊で、平成28年4月4日時点における本件書籍の在庫数は604冊であり、本件書籍の発行日から平成28年4月4日以前の本件書籍の市場への出荷数は396冊。
本体価格7000円に出荷数を乗じたものの20%に相当する金額が印税となることから、印税額は55万4400円であると控訴審は認定しています。
(2)平成28年4月5日以降に発生した印税額
平成28年4月5日以降の本件書籍の市場への出荷数は、同年7月22日までに出荷された10冊にとどまり、その印税額は1万4000円であると認定されています。
(3)支払時期について
平成28年4月4日(発行日から2年後)以前に発生した印税の支払時期は、本件契約17条2.1の規定により、同年5月16日であると認定。
平成28年4月5日以降に発生した印税の支払時期に関しては契約上明示されていないものの、同日以降同年7月22日までの印税1万4000円の支払時期は、同日から相当期間経過後であると認定。
結論としては、それぞれの印税について、被控訴人は支払義務を負うものの、受領拒絶があり履行遅滞の責任については負わないと判断されています。
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2 不法行為の成否及び損害額
被控訴人が本件書籍の店頭実売部数を過少報告し、正確な印税額の開示について必要な協力をしなかったとの事実を認めるに足りる証拠はないと控訴審は判断。控訴人の不法行為に関する主張を認めていません(10頁)。
結論として、本件契約に基づく印税56万8400円の支払を求める限度において控訴人の主張が認められています。
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■コメント
原審では、履行期到来済みの債権の存在は認められないと判断されて原告の印税支払い請求が認められていませんでしたが、控訴審では時間の経過があり(一審の口頭弁論終結日は平成28年2月25日。控訴審は平成28年9月21日)、履行期到来が認定されています。
増刷部分の原告の主張は原審、控訴審ともに認められておらず、実質的には原告敗訴の内容です。
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■過去のブログ記事
原審記事
「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件(控訴審)
知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10049印税等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 片瀬 亮
*裁判所サイト公表 2016.10.20
*キーワード:出版契約、印税支払時期
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■事案
ビジネス辞典の編著者が印税未払いを理由として出版社を訴えた事案の控訴審
控訴人(一審原告) :個人
被控訴人(一審被告):出版社
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■結論
原判決変更
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■争点
条文 民法415条、民法709条
1 印税額及び支払時期
2 不法行為の成否及び損害額
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■事案の概要
『本件は,被控訴人から出版された本件書籍の編著者である控訴人が,被控訴人との間の本件契約に基づく印税が未払であるなどと主張し,被控訴人に対し,(1)本件契約に基づく印税の一部140万円及びこれに対する支払日である平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)不法行為に基づく損害賠償金1080万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,(3)本件契約17条に係る文言についての控訴人の解釈が正しいことを認めるよう求め,また(4)本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について,本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める事案である。
原審は,控訴人の請求のうち,上記(3)及び(4)に係る訴えを却下し,その余をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,原判決中の控訴人の請求を棄却した部分のうち,(1)本件契約に基づく印税の一部140万円及びこれに対する平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)不法行為に基づく損害賠償金500万円及びこれに対する平成27年9月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において,控訴した(原判決が控訴人の請求に係る訴えを却下した部分(主文第1項)は不服の対象とされていない。)。』(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 印税額及び支払時期
(1)平成28年4月4日(発行日から2年後)以前に発生した印税額
控訴人(一審原告)は、本件書籍が増刷されたと主張しましたが、控訴審は認めていません(6頁以下)。
また、本件書籍の初刷部数は1000冊で、平成28年4月4日時点における本件書籍の在庫数は604冊であり、本件書籍の発行日から平成28年4月4日以前の本件書籍の市場への出荷数は396冊。
本体価格7000円に出荷数を乗じたものの20%に相当する金額が印税となることから、印税額は55万4400円であると控訴審は認定しています。
(2)平成28年4月5日以降に発生した印税額
平成28年4月5日以降の本件書籍の市場への出荷数は、同年7月22日までに出荷された10冊にとどまり、その印税額は1万4000円であると認定されています。
(3)支払時期について
平成28年4月4日(発行日から2年後)以前に発生した印税の支払時期は、本件契約17条2.1の規定により、同年5月16日であると認定。
平成28年4月5日以降に発生した印税の支払時期に関しては契約上明示されていないものの、同日以降同年7月22日までの印税1万4000円の支払時期は、同日から相当期間経過後であると認定。
結論としては、それぞれの印税について、被控訴人は支払義務を負うものの、受領拒絶があり履行遅滞の責任については負わないと判断されています。
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2 不法行為の成否及び損害額
被控訴人が本件書籍の店頭実売部数を過少報告し、正確な印税額の開示について必要な協力をしなかったとの事実を認めるに足りる証拠はないと控訴審は判断。控訴人の不法行為に関する主張を認めていません(10頁)。
結論として、本件契約に基づく印税56万8400円の支払を求める限度において控訴人の主張が認められています。
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■コメント
原審では、履行期到来済みの債権の存在は認められないと判断されて原告の印税支払い請求が認められていませんでしたが、控訴審では時間の経過があり(一審の口頭弁論終結日は平成28年2月25日。控訴審は平成28年9月21日)、履行期到来が認定されています。
増刷部分の原告の主張は原審、控訴審ともに認められておらず、実質的には原告敗訴の内容です。
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