最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

サプリ会員登録サイトHTML制作事件

東京地裁平成28.9.29平成27(ワ)5619損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    村井美喜子

*裁判所サイト公表 2016.10.18
*キーワード:サイト制作、HTML、創作性

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■事案

連鎖販売取引に関する通販管理システムのサイトのHTML部分の創作性が争点となった事案

原告:ソフト開発会社
被告:サプリ製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件プログラムの著作物性及び著作者

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■事案の概要

『本件は,原告が,通販管理システムの作成を被告から委託されて,同システムを機能させるためのコンピュータプログラムを作成し,被告に利用させていたところ,被告が利用契約の終了後も,上記プログラムを違法に複製し上記システムの利用を継続している旨主張して,被告に対し,上記プログラムの著作権(複製権)侵害に基づき,損害賠償金1896万4000円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成27年4月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H20.05 原被告間で通販管理システム利用覚書締結
H20.10 被告が原告作成の本件プログラムを利用
H21.10 覚書更新
H23.01 被告がライオンハートにサイト制作発注
H23.02 原告従業員Aと被告従業員D、ラインハート担当者Bが連絡
H25.07 被告が原告に契約不更新通知
H25.10 原被告間の契約終了

本件商品:ナチュラルメディスンギンコ

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■判決内容

<争点>

1 本件プログラムの著作物性及び著作者

原告は、通販管理システム(本件プログラム)のうち本件HTMLの著作権侵害について、被告から本件HTMLの制作を委託されて原告従業員Aが創作性を発揮して本件HTMLを制作したと主張しました。
これに対して被告は、そもそも原告に対して本件HTMLの制作を委託してはおらず、被告ないし被告が発注したシステム制作会社のライオンハートが本件HTMLを制作したものであると反論しました(12頁以下)。

本件HTML制作に際しての原告の役割について、裁判所は、被告の新規会員登録に関するホームページにおける記載内容は、被告の事業運営の一環として当然に被告が自ら決定したものと認められ、そこにおける文字の大きさ、配列や図柄などについても、被告従業員DがAに対して、本件画面に記載すべき文章の内容や文字の大きさ、配列等について細かく指示していたこと、ライオンハートが原告に対してデザインのデータ等をメールで送信していたと認定。
本件HTML制作に際しての原告(従業員A)の役割は、基本的に、被告に指示されたとおりの内容・形式で、かつライオンハートから送信されたデザイン等を用いて、本件HTMLを制作することであったと判断。
そして、原告従業員Aの具体的な作業を踏まえ、本件において、原告従業員Aが、本件HTML制作に一定程度関与した事実は認められるものの、基本的には、被告に指示されたとおりの内容・形式の文章を挿入し、かつライオンハートから送信されたデザイン等を利用した上で、ほぼ一義的に定まるタグを用いてHTMLを作成したにすぎないと認められ、それ以上に、Aがどのように創作性を発揮したかについては具体的主張もなく、そのような事実を認めるに足りる証拠もないと判断。
結論として、本件HTMLについて、原告従業員Aが創作的表現を作成したことを認めるに足りず、原告が本件HTMLの著作者であるとはいえないとしています(また、本件プログラムについても、原告従業員が創作的表現を作成したことを認めるに足りる証拠はないとしています)。

以上から、原告の請求は認められていません。

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■コメント

サイトシステム構築について複数の業者が制作に関与していることから、業者1社との契約が終了した場合に、それ以降のサイトシステムの利用や権利関係が不明確になった事案となります。
オンライン会員登録部分について、発注側が提出した内容・形式の文章、デザインで指示通りHTMLを記述しても、よほどのことがない限り新たな創作性はHTML制作者側に生じないという点が確認されています。