最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
カラー版怪獣ウルトラ図鑑復刻版事件(控訴審)
知財高裁平成28.6.29平成28(ネ)10019著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 片瀬 亮
*裁判所サイト公表 2016.6.30
*キーワード:契約、動機の錯誤、氏名表示権
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■事案
復刻版の書籍に掲載されたイラストの許諾の有無などが争点となった事案の控訴審
控訴人(一審原告) :イラストレーター
被控訴人(一審被告):出版社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法19条、民法95条
1 本件書籍発行についての控訴人の許諾の有無
2 控訴人の許諾についての錯誤の有無
3 本件書籍における氏名表示権侵害の有無
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,原判決別紙イラスト目録記載のイラスト(本件イラスト)の著作者であるところ,被控訴人による原判決別紙書籍目録記載の書籍(本件書籍)の複製等は,控訴人の有する本件イラストに係る著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,本件書籍の複製等の差止め,(2)同条2項に基づき,本件書籍及びその印刷用原版の廃棄,(3)著作権及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金737万円(印税相当額の損害570万円,慰謝料100万円及び弁護士費用67万円の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年6月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,控訴人は被控訴人に対して本件書籍の発行を許諾したところ,同許諾につき控訴人に錯誤があったということはできず,また,氏名表示権の侵害があったということもできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,原判決を不服として控訴したものである。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 本件書籍発行についての控訴人の許諾の有無
控訴人は、原書籍の存在すら知らず、被控訴人の担当者から本件書籍の内容の提示も受けていないから、原書籍に掲載され、本件書籍での使用許諾を求められているのが本件イラストであるとは知らなかった、むしろ、本件書籍での使用について許諾を求められているイラストは、本件イラストのような「特集ページ」に掲載されたものではなく、「記事ページ」に掲載されたものであると理解していたなどとして、控訴人と被控訴人との間では前提とする許諾の目的物が異なっていたから、意思の合致はなく、控訴人と被控訴人との間で本件イラストの使用につき許諾が成立することはない旨主張しました(11頁以下)。
この点について、控訴審は、被控訴人と控訴人との間において許諾の対象が一致していなかったということはできないとして、控訴人の主張を認めていません。
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2 控訴人の許諾についての錯誤の有無
控訴人は、本件書籍での使用について許諾を求められているイラストがどのようなものであるかを知らずに「特集ページ」ではなく「記事ページ」のイラストであると誤解していたから、仮に控訴人が許諾をしたものとされるとしてもその意思表示には錯誤がある旨主張しました(13頁以下)。
この点について、控訴審は、許諾の対象について錯誤があったということはできないと判断しています。
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3 本件書籍における氏名表示権侵害の有無
本件書籍における氏名表示の方法は、2ページの目次の左側に「さし絵」と記載した欄があり、そこに控訴人を含む6名の氏名を列記するというものでした。
控訴人は、本件書籍におけるようにイラストごとに著作者名を表示するのではなく、特定のページにその氏名をまとめて表示した場合、どのイラストを誰が描いたのか全く分からないとして、このような方法は著作権法19条が氏名表示権を規定する趣旨を没却するものであり許されない旨主張しました(14頁以下)。
この点について、控訴審は、
(1)本件書籍がテレビ番組に登場する主人公、武器、怪獣等を専ら子供向けに紹介する図鑑であり、本文を構成する約170ページのほとんどのページに大なり小なりイラスト又は写真が掲載されている
(2)本件書籍の原書籍においても、本件書籍におけるのと同様の表示がされていた
(3)単行本として発行される図鑑や事典において、そこに含まれるイラストの著作者が複数いる場合、イラストごとにそれに対応する作成者の氏名を表示せず、冒頭や末尾に一括して作成者の氏名を表示することも一般的に行われている
といった点から、本件書籍の内容や体裁において、イラストごとにそれに対応する作成者の氏名が表示されていなければ氏名表示がされたことにならないとまでいうことはできないとして、本件書籍における氏名表示の方法が公正な慣行に反して控訴人の本件イラストに係る氏名表示権を侵害するものであるということはできないと判断しています。
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■コメント
原審同様、棄却の判断となっています。
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■過去のブログ記事
2016年02月01日 原審記事
カラー版怪獣ウルトラ図鑑復刻版事件(控訴審)
知財高裁平成28.6.29平成28(ネ)10019著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官 柵木澄子
裁判官 片瀬 亮
*裁判所サイト公表 2016.6.30
*キーワード:契約、動機の錯誤、氏名表示権
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■事案
復刻版の書籍に掲載されたイラストの許諾の有無などが争点となった事案の控訴審
控訴人(一審原告) :イラストレーター
被控訴人(一審被告):出版社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法19条、民法95条
1 本件書籍発行についての控訴人の許諾の有無
2 控訴人の許諾についての錯誤の有無
3 本件書籍における氏名表示権侵害の有無
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,原判決別紙イラスト目録記載のイラスト(本件イラスト)の著作者であるところ,被控訴人による原判決別紙書籍目録記載の書籍(本件書籍)の複製等は,控訴人の有する本件イラストに係る著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,本件書籍の複製等の差止め,(2)同条2項に基づき,本件書籍及びその印刷用原版の廃棄,(3)著作権及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金737万円(印税相当額の損害570万円,慰謝料100万円及び弁護士費用67万円の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年6月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,控訴人は被控訴人に対して本件書籍の発行を許諾したところ,同許諾につき控訴人に錯誤があったということはできず,また,氏名表示権の侵害があったということもできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
そこで,控訴人が,原判決を不服として控訴したものである。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 本件書籍発行についての控訴人の許諾の有無
控訴人は、原書籍の存在すら知らず、被控訴人の担当者から本件書籍の内容の提示も受けていないから、原書籍に掲載され、本件書籍での使用許諾を求められているのが本件イラストであるとは知らなかった、むしろ、本件書籍での使用について許諾を求められているイラストは、本件イラストのような「特集ページ」に掲載されたものではなく、「記事ページ」に掲載されたものであると理解していたなどとして、控訴人と被控訴人との間では前提とする許諾の目的物が異なっていたから、意思の合致はなく、控訴人と被控訴人との間で本件イラストの使用につき許諾が成立することはない旨主張しました(11頁以下)。
この点について、控訴審は、被控訴人と控訴人との間において許諾の対象が一致していなかったということはできないとして、控訴人の主張を認めていません。
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2 控訴人の許諾についての錯誤の有無
控訴人は、本件書籍での使用について許諾を求められているイラストがどのようなものであるかを知らずに「特集ページ」ではなく「記事ページ」のイラストであると誤解していたから、仮に控訴人が許諾をしたものとされるとしてもその意思表示には錯誤がある旨主張しました(13頁以下)。
この点について、控訴審は、許諾の対象について錯誤があったということはできないと判断しています。
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3 本件書籍における氏名表示権侵害の有無
本件書籍における氏名表示の方法は、2ページの目次の左側に「さし絵」と記載した欄があり、そこに控訴人を含む6名の氏名を列記するというものでした。
控訴人は、本件書籍におけるようにイラストごとに著作者名を表示するのではなく、特定のページにその氏名をまとめて表示した場合、どのイラストを誰が描いたのか全く分からないとして、このような方法は著作権法19条が氏名表示権を規定する趣旨を没却するものであり許されない旨主張しました(14頁以下)。
この点について、控訴審は、
(1)本件書籍がテレビ番組に登場する主人公、武器、怪獣等を専ら子供向けに紹介する図鑑であり、本文を構成する約170ページのほとんどのページに大なり小なりイラスト又は写真が掲載されている
(2)本件書籍の原書籍においても、本件書籍におけるのと同様の表示がされていた
(3)単行本として発行される図鑑や事典において、そこに含まれるイラストの著作者が複数いる場合、イラストごとにそれに対応する作成者の氏名を表示せず、冒頭や末尾に一括して作成者の氏名を表示することも一般的に行われている
といった点から、本件書籍の内容や体裁において、イラストごとにそれに対応する作成者の氏名が表示されていなければ氏名表示がされたことにならないとまでいうことはできないとして、本件書籍における氏名表示の方法が公正な慣行に反して控訴人の本件イラストに係る氏名表示権を侵害するものであるということはできないと判断しています。
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■コメント
原審同様、棄却の判断となっています。
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■過去のブログ記事
2016年02月01日 原審記事