最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ボディーバストネックレス事件
東京地裁平成28.2.25平成28(ワ)15789著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 矢口俊哉
裁判官 広瀬達人
*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:著作物性、複製、氏名表示権
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■事案
ネックレスの彫刻デザインの類否が争点となった事案
原告:ジュエリー作家
被告:ファッションブランド日本法人
--------------------
■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、22条、19条
1 複製権侵害の成否
2 氏名表示権侵害の成否
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■事案の概要
『本件は,ジュエリー作家である原告が,被告が輸入,販売する別紙物件目録記載のアクセサリー(以下「被告製品」という。)について,原告が制作した別紙写真一覧の写真(以下「本件写真1」〜「本件写真12」といい,これらを併せて「本件各写真」という。)に写った彫刻それ自体又は指輪に接着された彫刻部分(以下,これらを「原告彫刻」という。)を複製したものであるから,被告による被告製品の国内への輸入又は国内での販売は,原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為とみなされると主張して,被告に対し,著作権法(以下「法」という。)112条に基づき被告製品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づき損害賠償金合計2000万円(内訳は,逸失利益4200万円の一部である1200万円及び慰謝料800万円)及びこれに対する平成27年3月20日(原告の著作権侵害警告が被告に到達した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,さらに,法115条に基づき謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H25.02 原告が原告彫刻を作成
H26.09 セリーヌ社が被告製品を発表、販売
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■判決内容
<争点>
1 複製権侵害の成否
(1)類否について
原告彫刻は、乳白色の板状部材の表面に女性の裸体を表現した彫刻で、乳首のすぐ下と陰部のすぐ上の位置で胴体を上下に水平方向に直線でカットし、かつ、左乳房の中心付近で垂直方向に直線でカットしたものでした。
被告製品との類否について、裁判所は、原告彫刻と被告製品とは、女性の身体のカットの構図において共通の特徴がみられるものの、このような構図それ自体に創作性は乏しいと判断。
また、原告彫刻においては、全体に豊満で肉感的な印象を与えるものであるのに対して、被告製品は全体として平坦でひきしまった印象を与えるものであることが認められるところ、こうした相違からすると、被告製品から原告彫刻の表現上の特徴を直接感得することはできないと判断。
両者が類似しているとは認めていません(16頁以下)。
(2)依拠性について
「念のため」として、依拠性についても検討が加えられていますが、結論として認められていません(17頁以下)。
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2 氏名表示権侵害の成否
原告は、被告製品の形態が原告彫刻と寸分違わぬものであり、また、被告製品が原告彫刻に依拠して製作されたことを前提として、被告製品は国内で作成したとしたならば著作者人格権(氏名表示権)の侵害となるべき行為によって作成された物(法113条1項1号)に当たるから、被告が被告製品を輸入、販売、販売の申出をする行為は原告の氏名表示権を侵害する行為とみなされる旨主張しました。
しかし、裁判所は、被告製品が原告彫刻と類似しているとも、原告彫刻に依拠して製作されたとも認められないことから、被告製品は国内で作成したとしても原告の氏名表示権の侵害となるべき行為によって作成された物には当たらないとして、原告の主張を認めていません(20頁)。
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■コメント
平成26年9月28日、パリにおいてセリーヌ社が「CELINE 2015年春夏コレクション」を発表しましたが、その発表作品中に被告製品がありました。
ジュエリー目的でよくありそうなモチーフの彫刻作品となると、デッドコピーでもない限り、類否や依拠性の判断は、ハードルが高いかと思われます。
ボディーバストネックレス事件
東京地裁平成28.2.25平成28(ワ)15789著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 矢口俊哉
裁判官 広瀬達人
*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:著作物性、複製、氏名表示権
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■事案
ネックレスの彫刻デザインの類否が争点となった事案
原告:ジュエリー作家
被告:ファッションブランド日本法人
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、22条、19条
1 複製権侵害の成否
2 氏名表示権侵害の成否
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■事案の概要
『本件は,ジュエリー作家である原告が,被告が輸入,販売する別紙物件目録記載のアクセサリー(以下「被告製品」という。)について,原告が制作した別紙写真一覧の写真(以下「本件写真1」〜「本件写真12」といい,これらを併せて「本件各写真」という。)に写った彫刻それ自体又は指輪に接着された彫刻部分(以下,これらを「原告彫刻」という。)を複製したものであるから,被告による被告製品の国内への輸入又は国内での販売は,原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為とみなされると主張して,被告に対し,著作権法(以下「法」という。)112条に基づき被告製品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づき損害賠償金合計2000万円(内訳は,逸失利益4200万円の一部である1200万円及び慰謝料800万円)及びこれに対する平成27年3月20日(原告の著作権侵害警告が被告に到達した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,さらに,法115条に基づき謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H25.02 原告が原告彫刻を作成
H26.09 セリーヌ社が被告製品を発表、販売
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■判決内容
<争点>
1 複製権侵害の成否
(1)類否について
原告彫刻は、乳白色の板状部材の表面に女性の裸体を表現した彫刻で、乳首のすぐ下と陰部のすぐ上の位置で胴体を上下に水平方向に直線でカットし、かつ、左乳房の中心付近で垂直方向に直線でカットしたものでした。
被告製品との類否について、裁判所は、原告彫刻と被告製品とは、女性の身体のカットの構図において共通の特徴がみられるものの、このような構図それ自体に創作性は乏しいと判断。
また、原告彫刻においては、全体に豊満で肉感的な印象を与えるものであるのに対して、被告製品は全体として平坦でひきしまった印象を与えるものであることが認められるところ、こうした相違からすると、被告製品から原告彫刻の表現上の特徴を直接感得することはできないと判断。
両者が類似しているとは認めていません(16頁以下)。
(2)依拠性について
「念のため」として、依拠性についても検討が加えられていますが、結論として認められていません(17頁以下)。
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2 氏名表示権侵害の成否
原告は、被告製品の形態が原告彫刻と寸分違わぬものであり、また、被告製品が原告彫刻に依拠して製作されたことを前提として、被告製品は国内で作成したとしたならば著作者人格権(氏名表示権)の侵害となるべき行為によって作成された物(法113条1項1号)に当たるから、被告が被告製品を輸入、販売、販売の申出をする行為は原告の氏名表示権を侵害する行為とみなされる旨主張しました。
しかし、裁判所は、被告製品が原告彫刻と類似しているとも、原告彫刻に依拠して製作されたとも認められないことから、被告製品は国内で作成したとしても原告の氏名表示権の侵害となるべき行為によって作成された物には当たらないとして、原告の主張を認めていません(20頁)。
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■コメント
平成26年9月28日、パリにおいてセリーヌ社が「CELINE 2015年春夏コレクション」を発表しましたが、その発表作品中に被告製品がありました。
ジュエリー目的でよくありそうなモチーフの彫刻作品となると、デッドコピーでもない限り、類否や依拠性の判断は、ハードルが高いかと思われます。