最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ゴルフクラブシャフトデザイン事件
東京地裁平成28.4.21平成27(ワ)21304著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 藤原典子
裁判官 萩原孝基
*裁判所サイト公表 2016.5.24
*キーワード:工業デザイン、応用美術論、著作物性
--------------------
■事案
ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性が争点となった事案
原告:グラフィックデザイナー
被告:ゴルフ用品製造販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、2条2項
1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
2 本件カタログデザインの著作物性
--------------------
■事案の概要
『本件は,原告が,被告に対し,別紙原告デザイン目録記載1のゴルフクラブのシャフトの外装デザイン(以下「本件シャフトデザイン」という。)及びその基となった同記載2の原画(以下「本件原画」という。)並びに同記載3のカタログの表紙デザイン(以下「本件カタログデザイン」という。)はいずれも原告の著作物であるところ,被告の販売する被告シャフトは本件シャフトデザインの特徴を全て踏襲した上で配色,パターンの位置等を変えたものであるから本件シャフトデザイン(予備的に本件原画)に係る原告の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)及び同一性保持権を侵害し,また,被告の頒布する被告カタログは本件カタログデザインの特徴を全て踏襲した上で配色,パターンの位置等を変えたものであるから本件カタログデザインに係る原告の同一性保持権を侵害しているとして,(1)被告シャフト5〜8による著作権侵害につき民法703条,704条に基づく使用料相当額の不当利得金5400万円及び利息の返還,(2)被告シャフト及び被告カタログによる同一性保持権侵害につ き民法709条に基づく慰謝料(一部請求)425万円及び遅延損害金の支払,(3)被告シャフト及び被告カタログによる同一性保持権侵害につき著作権法112条1項に基づく製造ないし頒布等の差止め及び同条2項に基づく廃棄,(4)被告シャフトによる同一性保持権侵害につき同法115条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。』
(2頁以下)
<経緯>
H14 被告が広告業者にシャフトデザイン制作を発注
広告業者が原告に外注
原告が納品、デザイン料10万円受領
H14.11
被告が「Tour AD I-65」製造販売
被告が広告業者にカタログ製作発注
広告業者が原告に外注
原告が納品、デザイン料20万円受領
H15 15年度カタログ(本件カタログ)頒布
H26 26年度被告カタログ製作、頒布
H27 27年度被告カタログ製作、頒布
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
裁判所は、著作物性(著作権法2条1項1号)、美術の著作物(2条2項)の意義について言及した上で、
「純粋な美術ではなくいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,ゴルフクラブのシャフトのように実用に供され,産業上利用される製品のデザイン等は,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えている場合を除き,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。」(7頁)
として、応用美術論について説示。そして、
「本件シャフトデザイン及び本件原画は,ゴルフクラブのユーザーの目を引くことなど専ら商業上の目的のため,発注者である被告の意向に沿って,実用品であるシャフトの外装デザインとして作成されたことが明らかである。一方,本件の関係各証拠上,本件シャフトデザイン及び本件原画が,シャフトの外装デザインという用途を離れて,それ自体として美的鑑賞の対象とされるものであることはうかがわれない。」
と判断。
本件シャフトデザイン及び本件原画は、いずれも著作権法上の著作物に当たらないと判断されています。
--------------------
2 本件カタログデザインの著作物性
原告は、本件カタログデザインは本件シャフトデザインの特徴的部分を平面上に表現したものであるとして著作権法上の著作物に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、原告の主張は本件シャフトデザインに著作物性が認められることを前提とするものであるが、これを認めることができない以上、本件カタログデザインについても本件シャフトデザインについて判示したのと同様の理由によって著作権法上の著作物に当たらないと判断しています(8頁)。
結論として、原告の主張はいずれも認められていません。
--------------------
■コメント
別紙1をみると、ゴルフシャフトのデザインやカタログ表紙のデザインがどのようなものであったかが分かります。
(原告原画(一部))
(シャフトデザイン(一部))
縞々模様が10年以上に亘ってシャフトの基本デザインとして採用されている点で、デザイナーとしても自分の作品としての思い入れが積もったのかもしれません。
そもそも論としては、間に入っている広告代理店のハンドリングの悪さ(代理店がデザイナーに外注する際に、契約書を作っていなかったと想像されます。また、この内容で裁判にまでしてしまっており、クライアントに迷惑を掛けない対応ができなかった)に起因する事案です。
なお、被告のIR情報を見ても、「事業等のリスク」に本訴訟案件の掲載がないため、具体的なリスクと認識されていないともいえそうです。
投資家情報
--------------------
■参考サイト
GRAPHITE DESIGN ゴルフ・シャフト Tour AD
ゴルフクラブシャフトデザイン事件
東京地裁平成28.4.21平成27(ワ)21304著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 藤原典子
裁判官 萩原孝基
*裁判所サイト公表 2016.5.24
*キーワード:工業デザイン、応用美術論、著作物性
--------------------
■事案
ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性が争点となった事案
原告:グラフィックデザイナー
被告:ゴルフ用品製造販売会社
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、2条2項
1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
2 本件カタログデザインの著作物性
--------------------
■事案の概要
『本件は,原告が,被告に対し,別紙原告デザイン目録記載1のゴルフクラブのシャフトの外装デザイン(以下「本件シャフトデザイン」という。)及びその基となった同記載2の原画(以下「本件原画」という。)並びに同記載3のカタログの表紙デザイン(以下「本件カタログデザイン」という。)はいずれも原告の著作物であるところ,被告の販売する被告シャフトは本件シャフトデザインの特徴を全て踏襲した上で配色,パターンの位置等を変えたものであるから本件シャフトデザイン(予備的に本件原画)に係る原告の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)及び同一性保持権を侵害し,また,被告の頒布する被告カタログは本件カタログデザインの特徴を全て踏襲した上で配色,パターンの位置等を変えたものであるから本件カタログデザインに係る原告の同一性保持権を侵害しているとして,(1)被告シャフト5〜8による著作権侵害につき民法703条,704条に基づく使用料相当額の不当利得金5400万円及び利息の返還,(2)被告シャフト及び被告カタログによる同一性保持権侵害につ き民法709条に基づく慰謝料(一部請求)425万円及び遅延損害金の支払,(3)被告シャフト及び被告カタログによる同一性保持権侵害につき著作権法112条1項に基づく製造ないし頒布等の差止め及び同条2項に基づく廃棄,(4)被告シャフトによる同一性保持権侵害につき同法115条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。』
(2頁以下)
<経緯>
H14 被告が広告業者にシャフトデザイン制作を発注
広告業者が原告に外注
原告が納品、デザイン料10万円受領
H14.11
被告が「Tour AD I-65」製造販売
被告が広告業者にカタログ製作発注
広告業者が原告に外注
原告が納品、デザイン料20万円受領
H15 15年度カタログ(本件カタログ)頒布
H26 26年度被告カタログ製作、頒布
H27 27年度被告カタログ製作、頒布
--------------------
■判決内容
<争点>
1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
裁判所は、著作物性(著作権法2条1項1号)、美術の著作物(2条2項)の意義について言及した上で、
「純粋な美術ではなくいわゆる応用美術の領域に属するもの,すなわち,ゴルフクラブのシャフトのように実用に供され,産業上利用される製品のデザイン等は,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えている場合を除き,著作権法上の著作物に含まれないものと解される。」(7頁)
として、応用美術論について説示。そして、
「本件シャフトデザイン及び本件原画は,ゴルフクラブのユーザーの目を引くことなど専ら商業上の目的のため,発注者である被告の意向に沿って,実用品であるシャフトの外装デザインとして作成されたことが明らかである。一方,本件の関係各証拠上,本件シャフトデザイン及び本件原画が,シャフトの外装デザインという用途を離れて,それ自体として美的鑑賞の対象とされるものであることはうかがわれない。」
と判断。
本件シャフトデザイン及び本件原画は、いずれも著作権法上の著作物に当たらないと判断されています。
--------------------
2 本件カタログデザインの著作物性
原告は、本件カタログデザインは本件シャフトデザインの特徴的部分を平面上に表現したものであるとして著作権法上の著作物に当たると主張しました。
この点について、裁判所は、原告の主張は本件シャフトデザインに著作物性が認められることを前提とするものであるが、これを認めることができない以上、本件カタログデザインについても本件シャフトデザインについて判示したのと同様の理由によって著作権法上の著作物に当たらないと判断しています(8頁)。
結論として、原告の主張はいずれも認められていません。
--------------------
■コメント
別紙1をみると、ゴルフシャフトのデザインやカタログ表紙のデザインがどのようなものであったかが分かります。
(原告原画(一部))
(シャフトデザイン(一部))
縞々模様が10年以上に亘ってシャフトの基本デザインとして採用されている点で、デザイナーとしても自分の作品としての思い入れが積もったのかもしれません。
そもそも論としては、間に入っている広告代理店のハンドリングの悪さ(代理店がデザイナーに外注する際に、契約書を作っていなかったと想像されます。また、この内容で裁判にまでしてしまっており、クライアントに迷惑を掛けない対応ができなかった)に起因する事案です。
なお、被告のIR情報を見ても、「事業等のリスク」に本訴訟案件の掲載がないため、具体的なリスクと認識されていないともいえそうです。
投資家情報
--------------------
■参考サイト
GRAPHITE DESIGN ゴルフ・シャフト Tour AD