最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
EM菌新聞記事事件
東京地裁平成28.4.28平成27(ワ)18469損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 藤原典子
裁判官 中嶋邦人
*裁判所サイト公表 2016.5.9
*キーワード:著作物性、引用、複製権、同一性保持権
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■事案
有用微生物群(EM)に関する新聞記事が研究者の著作権等を侵害するかどうかが争点となった事案
原告:大学名誉教授
被告:新聞社
--------------------
■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、20条、民法709条
1 本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか
2 原告を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか
--------------------
■事案の概要
『本件は,原告が,新聞社である被告に対し,被告が発行する新聞の記事に原告の執筆したブログの一部を引用したことが原告の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)の侵害に当たるとともに,原告を取材せずに記事を掲載した行為が不法行為に当たると主張して,(1)民法709条に基づく損害賠償金352万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)著作権法115条及び人格権に基づく名誉回復措置として謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H19.10.1 原告がブログ記事(本件原告記載)を掲載
H24.7.03 被告が本件記事1を青森版に掲載
H24.7.11 被告が本件記事2を青森版に掲載
原告ブログ:「新・夢に生きる」
本件記事1:「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」
本件記事2:「科学的効果疑問のEM菌 3町が町民に奨励」
【別紙対照表】
原告ブログ記事:
「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」
本件記事1:
「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」
本件記事2:
「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」
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■判決内容
<争点>
1 本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか
原告は、本件原告記載は有用微生物群(EM)に関する考え方をできる限りコンパクトに伝えるために工夫を凝らしたものであり、原告の個性が表現された著作物であるとした上で、本件記事中の被告記載1及び2は、本件原告記載の「B先生が確認した」、「縦波の」との文言を削除して原告の意に反する改変を加えた上で出典を明示せずに無断で引用したものであって、報道の目的上正当なものともいえないから原告の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)を侵害する旨主張しました(5頁以下)。
この点について、裁判所は、本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであり、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであって、原告の思想そのものということができるとして、著作権法において保護の対象となる著作物(2条1項1号)に当たらないと判断。
結論として、被告による複製権侵害は認められず、また、これを前提とする同一性保持権侵害も認められないとしています。
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2 原告を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか
原告は、被告が原告を取材していないにもかかわらず、あたかも原告を取材して得たコメントを掲載したと読まれる記事(本件記事1及び2)を掲載したとして、当該行為が不法行為に当たる旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、本件被告記載1及び2の記載に接した一般の新聞読者の普通の注意力に照らすと、本件記事1及び2が被告が原告を取材して得られたコメントを掲載した記事として読まれる可能性があるというべきであり、また、被告が公表している「記者行動基準」に規定する取材方法に抵触しかねない行為であったと判断。
もっとも、記者行動基準は社内指針にすぎないこと、また、本件被告記載1及び2は、公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではないと認められるとして、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断。
結論として、被告の記事掲載行為が不法行為に当たるとする原告の主張は認められていません。
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■コメント
原告のブログ記事(ウェブマガジン)は、2016年4月2日のもので105回を数える連載記事で、問題とされた記事は、2007年10月1日付「波動技術実践研究会発足記念フォーラム(9月8日)」となります。
http://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru05.html
EM菌新聞記事事件
東京地裁平成28.4.28平成27(ワ)18469損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 藤原典子
裁判官 中嶋邦人
*裁判所サイト公表 2016.5.9
*キーワード:著作物性、引用、複製権、同一性保持権
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■事案
有用微生物群(EM)に関する新聞記事が研究者の著作権等を侵害するかどうかが争点となった事案
原告:大学名誉教授
被告:新聞社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、20条、民法709条
1 本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか
2 原告を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか
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■事案の概要
『本件は,原告が,新聞社である被告に対し,被告が発行する新聞の記事に原告の執筆したブログの一部を引用したことが原告の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)の侵害に当たるとともに,原告を取材せずに記事を掲載した行為が不法行為に当たると主張して,(1)民法709条に基づく損害賠償金352万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)著作権法115条及び人格権に基づく名誉回復措置として謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(1頁以下)
<経緯>
H19.10.1 原告がブログ記事(本件原告記載)を掲載
H24.7.03 被告が本件記事1を青森版に掲載
H24.7.11 被告が本件記事2を青森版に掲載
原告ブログ:「新・夢に生きる」
本件記事1:「EM菌効果『疑問』検証せぬまま授業」
本件記事2:「科学的効果疑問のEM菌 3町が町民に奨励」
【別紙対照表】
原告ブログ記事:
「私はEMの本質的な効果は,B先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。」
本件記事1:
「EM菌の効果について,開発者のA・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。」
本件記事2:
「開発者のA・琉球大名誉教授は,効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。」
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■判決内容
<争点>
1 本件被告記載1及び2が原告の複製権又は同一性保持権を侵害するか
原告は、本件原告記載は有用微生物群(EM)に関する考え方をできる限りコンパクトに伝えるために工夫を凝らしたものであり、原告の個性が表現された著作物であるとした上で、本件記事中の被告記載1及び2は、本件原告記載の「B先生が確認した」、「縦波の」との文言を削除して原告の意に反する改変を加えた上で出典を明示せずに無断で引用したものであって、報道の目的上正当なものともいえないから原告の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)を侵害する旨主張しました(5頁以下)。
この点について、裁判所は、本件において本件原告記載と本件被告記載1及び2が表現上共通するのは「重力波と想定される」「波動による(もの)」との部分のみであり、この部分はEMの効果に関する原告の学術的見解を簡潔に示したものであって、原告の思想そのものということができるとして、著作権法において保護の対象となる著作物(2条1項1号)に当たらないと判断。
結論として、被告による複製権侵害は認められず、また、これを前提とする同一性保持権侵害も認められないとしています。
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2 原告を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか
原告は、被告が原告を取材していないにもかかわらず、あたかも原告を取材して得たコメントを掲載したと読まれる記事(本件記事1及び2)を掲載したとして、当該行為が不法行為に当たる旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、本件被告記載1及び2の記載に接した一般の新聞読者の普通の注意力に照らすと、本件記事1及び2が被告が原告を取材して得られたコメントを掲載した記事として読まれる可能性があるというべきであり、また、被告が公表している「記者行動基準」に規定する取材方法に抵触しかねない行為であったと判断。
もっとも、記者行動基準は社内指針にすぎないこと、また、本件被告記載1及び2は、公にされていた本件原告記事を参考にして執筆されたものであって、その内容はEMの本質的効果に関する原告の見解に反するものではないと認められるとして、不法行為と評価すべき違法性があったとはいえないと判断。
結論として、被告の記事掲載行為が不法行為に当たるとする原告の主張は認められていません。
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■コメント
原告のブログ記事(ウェブマガジン)は、2016年4月2日のもので105回を数える連載記事で、問題とされた記事は、2007年10月1日付「波動技術実践研究会発足記念フォーラム(9月8日)」となります。
http://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru05.html