最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

Yahoo!知恵袋投稿写真事件

東京地裁平成28.3.4平成27(ワ)37302損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官      広瀬 孝
裁判官      勝又来未子

*裁判所サイト公表 2016.3.14
*キーワード:擬制自白、写真、無断掲載、損害論

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■事案

創価学会池田名誉会長の肖像画像などが無断でネット掲示板に投稿されたことから掲載者に対して損害賠償を請求した事案

原告:宗教法人
被告:個人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法20条、21条、23条、27条、114条3項

1 侵害論
2 損害論

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■事案の概要

『本件は,別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の著作者であると主張する原告が,別紙投稿記事目録記載1ないし29の各記事(以下,同目録の番号に従って「被告記事1」などといい,各記事を併せて「被告各記事」という。)をインターネット上の電子掲示板に投稿した被告に対し,本件各記事に掲載された写真は,原告が本件写真について有する著作権(複製権,翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものであるとして,不法行為に基づく損害賠償として350万円及びこれに対する平成28年1月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H19.12 原告職員Bが本件写真を撮影

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

被告は、電子掲示板「Yahoo!知恵袋」に原告の許諾を得ることなく29件の被告各記事を投稿していました。
被告記事1ないし14においては、本件写真の被写体の額に目を1個ないし3個書き入れたものを掲載し、被告記事19、22、23及び27においては、本件写真の被写体の目の周囲を茶色に塗り、頬の皺を赤く塗ったものを掲載し、被告記事21、25及び28においては、本件写真の被写体の顔の周囲を切り取ったものを掲載していました。
さらに、被告は、被告記事15ないし18、20、24,26及び29において、本件写真の複製を掲載していました。

被告は、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面を提出しなかったことから、原告の主張する請求原因事実についてこれを自白したものとみなされ、被告は、被告各記事を作成して投稿したことにより原告の本件写真に係る著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害したと裁判所は認定しています(4頁以下)。

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2 損害論

(1)使用料相当額損害

一般的な写真の使用料金(1件1か月1万円)を参考に(29件×3か月=87万円)、また、名誉会長を揶揄する目的で本件写真を著作者である原告の制作意図に著しく反する態様で掲載したことなどを勘案して100万円が認定されています(5頁以下)。

なお、原告は、被告の行為について原告が受けるべき損害額は、通常の許諾の場合の約2倍に相当する額と考えるべきである旨主張しましたが、著作権法114条3項による賠償額があくまで填補賠償であることを考慮すれば、裏付けとなる事実が何ら提出されていない本件においては、損害額を通常の許諾の場合の2倍に相当する額と認定すべき根拠はないというべきであるとして、裁判所はこの点の原告の主張を認めていません。

(2)非財産的損害

著作者人格権(同一性保持権)侵害による原告の非財産的損害は50万円と認定されています。

(3)弁護士費用相当額損害

30万円が認定されています。   以上、合計180万円

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■コメント

昨年のプロバイダに対する発信者情報開示請求事件の案件となります。無断投稿者が特定されたものの、被告は裁判を無視していて損害賠償請求訴訟で擬制自白が成立しています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成27.4.27平成26(ワ)26974発信者情報開示請求事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/093/085093_hanrei.pdf
2015年05月22日記事
Yahoo!知恵袋投稿記事発信者情報開示事件