最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
スティック型加湿器形態模倣事件
東京地裁平成28.1.14平成27(ワ)7033不正競争差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 藤原典子
裁判官 中嶋邦人
*裁判所サイト公表 2016.1.22
*キーワード:商品形態模倣行為性、応用美術、著作物性
被告商品:スティック加湿器
--------------------
■事案
スティック型加湿器のデザインの著作物性などが争点となった事案
原告:プロダクトデザイナーら
被告:家電輸入卸会社、雑貨店
--------------------
■結論
請求棄却
--------------------
■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項3号
1 原告加湿器1及び2の「商品」該当性
2 原告加湿器1及び2の著作物性
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■事案の概要
『本件は,別紙原告加湿器目録記載1〜3の加湿器(以下,それぞれを同目録記載の番号により「原告加湿器1」などという。)の開発者である原告らが,被告らに対し,被告商品の形態は原告加湿器1及び2の形態に依拠し,これらを模倣したものであって,被告らによる被告商品の輸入及び販売は上記加湿器に係る原告らの著作権(譲渡権又は二次的著作物の譲渡権)を侵害するとともに,不正競争(不正競争防止法2条1項3号)に当たると主張して,(1)同法3条1項及び2項又は著作権法112条1項及び2項(選択的請求)に基づき,被告商品の輸入等の差止め及び廃棄,(2)民法709条,719条1項及び不正競争防止法5条3項2号又は著作権法114条3項(選択的請求)に基づき,被告らにつき損害賠償金120万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払,被告セラヴィにつき損害賠償金120万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(2頁以下)
<経緯>
H23.11 原告が原告加湿器1を展示会に出展
H24.06 原告が原告加湿器2を展示会に出展
H25 被告らが被告製品を輸入、販売
H27.01 原告が原告加湿器3を販売
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■判決内容
<争点>
1 原告加湿器1及び2の「商品」該当性
原告加湿器1及び2の「商品」該当性(不正競争防止法2条1項3号)について、裁判所は、
「同号が他人の「商品」の形態の模倣に係る不正競争を規定した趣旨は,市場において商品化するために資金,労力等を投下した当該他人を保護することにあると解される。そして,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的(1条参照)に照らせば,上記「商品」に当たるというためには,市場における流通の対象となる物(現に流通し,又は少なくとも流通の準備段階にある物)をいうと解するのが相当である。」と説示した上で、本件について「商品」該当性について検討を加えています。
裁判所は、原告加湿器1及び2は、各展示会の当時の構成では一般の家庭等において容易に使用し得ないものであって、開発途中の試作品というべきものであったこと、被告製品の輸入及び販売が開始された平成25年秋頃の時点でも原告らにおいて原告加湿器1及び2のような形態の加湿器を製品化して販売する具体的な予定はなかったことから、原告加湿器1及び2は、市場における流通の対象となる物とは認められないとして、不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないと判断しています(11頁以下)。
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2 原告加湿器1及び2の著作物性
原告加湿器1及び2の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、著作物性の意義や応用美術に関して言及した上で、
「原告加湿器1及び2は,試験管様のスティック形状の加湿器であって,本体の円筒状部の下端に内部に水を取り込むための吸水口が,本体の上部に取り付けられたキャップの上端に噴霧口がそれぞれ取り付けられており,この吸水口から内部に取り込んだ水を蒸気にして噴霧口から噴出される構造となっていることが認められる。そして,以上の点で原告加湿器1及び2が従来の加湿器にない外観上の特徴を有しているとしても,これらは加湿器としての機能を実現するための構造と解されるのであって,その実用的な機能を離れて見た場合には,原告加湿器1及び2は細長い試験管形状の構造物であるにとどまり,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできない。」(13頁)
として、その著作物性を否定しています。
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■コメント
水を入れたコップに差し込むような小型の試験管型加湿器のデザインの模倣性が問題となりました。
不正競争防止法の点で、試作品として展示会で出展された機器は、そもそも不正競争防止法上の「商品」とはいえない、という判断の点は参考になります。
スティック型加湿器形態模倣事件
東京地裁平成28.1.14平成27(ワ)7033不正競争差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 藤原典子
裁判官 中嶋邦人
*裁判所サイト公表 2016.1.22
*キーワード:商品形態模倣行為性、応用美術、著作物性
被告商品:スティック加湿器
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■事案
スティック型加湿器のデザインの著作物性などが争点となった事案
原告:プロダクトデザイナーら
被告:家電輸入卸会社、雑貨店
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項3号
1 原告加湿器1及び2の「商品」該当性
2 原告加湿器1及び2の著作物性
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■事案の概要
『本件は,別紙原告加湿器目録記載1〜3の加湿器(以下,それぞれを同目録記載の番号により「原告加湿器1」などという。)の開発者である原告らが,被告らに対し,被告商品の形態は原告加湿器1及び2の形態に依拠し,これらを模倣したものであって,被告らによる被告商品の輸入及び販売は上記加湿器に係る原告らの著作権(譲渡権又は二次的著作物の譲渡権)を侵害するとともに,不正競争(不正競争防止法2条1項3号)に当たると主張して,(1)同法3条1項及び2項又は著作権法112条1項及び2項(選択的請求)に基づき,被告商品の輸入等の差止め及び廃棄,(2)民法709条,719条1項及び不正競争防止法5条3項2号又は著作権法114条3項(選択的請求)に基づき,被告らにつき損害賠償金120万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成27年3月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払,被告セラヴィにつき損害賠償金120万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(2頁以下)
<経緯>
H23.11 原告が原告加湿器1を展示会に出展
H24.06 原告が原告加湿器2を展示会に出展
H25 被告らが被告製品を輸入、販売
H27.01 原告が原告加湿器3を販売
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■判決内容
<争点>
1 原告加湿器1及び2の「商品」該当性
原告加湿器1及び2の「商品」該当性(不正競争防止法2条1項3号)について、裁判所は、
「同号が他人の「商品」の形態の模倣に係る不正競争を規定した趣旨は,市場において商品化するために資金,労力等を投下した当該他人を保護することにあると解される。そして,事業者間の公正な競争を確保するという同法の目的(1条参照)に照らせば,上記「商品」に当たるというためには,市場における流通の対象となる物(現に流通し,又は少なくとも流通の準備段階にある物)をいうと解するのが相当である。」と説示した上で、本件について「商品」該当性について検討を加えています。
裁判所は、原告加湿器1及び2は、各展示会の当時の構成では一般の家庭等において容易に使用し得ないものであって、開発途中の試作品というべきものであったこと、被告製品の輸入及び販売が開始された平成25年秋頃の時点でも原告らにおいて原告加湿器1及び2のような形態の加湿器を製品化して販売する具体的な予定はなかったことから、原告加湿器1及び2は、市場における流通の対象となる物とは認められないとして、不正競争防止法2条1項3号にいう「商品」に当たらないと判断しています(11頁以下)。
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2 原告加湿器1及び2の著作物性
原告加湿器1及び2の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、著作物性の意義や応用美術に関して言及した上で、
「原告加湿器1及び2は,試験管様のスティック形状の加湿器であって,本体の円筒状部の下端に内部に水を取り込むための吸水口が,本体の上部に取り付けられたキャップの上端に噴霧口がそれぞれ取り付けられており,この吸水口から内部に取り込んだ水を蒸気にして噴霧口から噴出される構造となっていることが認められる。そして,以上の点で原告加湿器1及び2が従来の加湿器にない外観上の特徴を有しているとしても,これらは加湿器としての機能を実現するための構造と解されるのであって,その実用的な機能を離れて見た場合には,原告加湿器1及び2は細長い試験管形状の構造物であるにとどまり,美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできない。」(13頁)
として、その著作物性を否定しています。
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■コメント
水を入れたコップに差し込むような小型の試験管型加湿器のデザインの模倣性が問題となりました。
不正競争防止法の点で、試作品として展示会で出展された機器は、そもそも不正競争防止法上の「商品」とはいえない、という判断の点は参考になります。