最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
ファッション写真制作業務委託契約事件
東京地裁平成27.11.20平成25(ワ)25251著作権侵害損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官 今井弘晃
裁判官 勝又来未子
*裁判所サイト公表 2015.12.7
*キーワード:写真、業務委託契約、利用許諾
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■事案
ファッション写真の制作業務委託契約において、画像の利用許諾範囲などが争点となった事案
原告:写真家
被告:レディスファッション販売会社、ファッションブランド関連会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法61条、63条
1 原告各写真の著作権譲渡の有無
2 原告各写真の利用許諾の有無及びその内容
3 被告Dazzyによる著作者人格権侵害の存否
4 被告ロエンによる著作者人格権侵害の存否
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■事案の概要
『本件は,写真家である原告が,自ら撮影した別紙原告写真目録記載の各写真について,(1)被告Dazzyに対し,同目録記載6の写真をトリミング加工してオフィシャルサイトに掲載している行為が原告の有する著作権(複製権,公衆送信権)を侵害し,同トリミング加工及び同写真を宣伝文句等とともに一つのウェブページとしたことが原告の有する同一性保持権を,原告の氏名の不表示が原告の有する氏名表示権をそれぞれ侵害し,また,上記各写真のデータを被告ロエンに引渡すために複製したことが複製権侵害に当たると主張して,別紙被告Dazzy写真目録記載の写真の公衆送信の差止め並びに損害賠償金600万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年10月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被告ロエンに対し,原告の許諾を得ることなく,別紙原告写真目録記載の各写真をトリミング加工して,原告の氏名を表示せずに雑誌に掲載し,同雑誌を発行,販売した行為が原告の有する著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害すると主張して,損害賠償金1060万円及びこれに対する平成25年10月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償として弁護士費用相当額30万円(各15万円)及びこれに対する平成25年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H25.02 被告Dazzyからの依頼で原告が写真撮影
被告Dazzyがサイトに掲載
H25.05 被告ロエンがロエン誌掲載のために画像データを利用
H25.06 原告が被告Dazzyに対して損害賠償請求
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■判決内容
<争点>
1 原告各写真の著作権譲渡の有無
被告らは、原告各写真の著作権が被告Dazzyに譲渡されたと主張しましたが、契約書等の書面作成がないこと、原被告間で著作権の扱いに関してどのような会話をしたのかについて具体的な主張立証がないこと、請求書に代金に著作権譲渡代金が含まれる旨の記載がないこと、原告が原告各写真のデータを被告Dazzyに納品した後も自ら撮影した写真を加工して宣伝用のページの案を編集し、被告Dazzyに送付するなどしていたことなどから、原告が被告Dazzyとの間で原告各写真の著作権を譲渡する旨の合意をしたと認めることはできないと裁判所は判断しています(11頁以下)。
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2 原告各写真の利用許諾の有無及びその内容
原告が被告Dazzyから広告宣伝用の写真の撮影を依頼されて原告各写真を作成したこと、原告が被告Dazzyに対して「カタログ写真」の撮影代金として31万5000円を請求したこと、被告Dazzyに対して、「写真は御社のものですので、どのようにご使用されてもよろしい」、「どのように使うかは御社次第」などと述べていたことなどから、原告は、被告Dazzyが原告各写真を広告宣伝用として自由に利用することを前提として、写真撮影を請け負い、また、その成果物である原告各写真のデータを被告Dazzyに交付したということができると裁判所は認定。
原告は、被告Dazzyに対して少なくとも広告宣伝目的においては改変することや掲載する媒体の選択等も含めて自由に利用できるものとして原告各写真の利用を許諾したと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(12頁以下)。
また、広告の素材である写真の加工等を含む広告の製作や広告宣伝行為を第三者に依頼することは、通常行われることであるとして、被告ロエンが被告Dazzyの指示を受けてロエン誌に掲載する被告Dazzyの広告ページの素材として、原告各写真を改変したこと及び改変した原告各写真を含む広告ページのデータをロエン誌の発行元であるセブン&アイ出版に送付した行為は、利用許諾の範囲内の行為というべきであると裁判所は判断しています。
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3 被告Dazzyによる著作者人格権侵害の存否
原告は、被告Dazzyに対して原告各写真を改変することや原告の氏名表示をすることなく原告各写真を広告等に掲載することについて黙示の同意をしていたと認めるのが相当であると裁判所は判断。
被告DazzyがDazzyサイトに原告写真6を掲載するに当たり、トリミング加工したこと及び原告の氏名を表示しなかったことは、いずれも原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害するものではないと判断されています(15頁)。
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4 被告ロエンによる著作者人格権侵害の存否
被告Dazzyが第三者に広告の製作を依頼して原告各写真を含む広告を製作させる場合も同意の対象に含まれるとして、被告ロエンが被告Dazzyの指示に従って原告各写真を改変した上で改変した原告各写真を用いて原告の氏名表示のない広告ページを作成し、セブン&アイ出版に上記広告ページのデータを送付してロエン誌に掲載させたことは、いずれも原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害するものではないと裁判所は判断しています(15頁以下)。
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■コメント
ファンション系の商品カタログや広告・宣伝用の写真撮影に関する業務委託契約において、写真家とクライアントの間で撮影された写真の利用許諾の範囲が争点となった事案です。
イタリア人写真家は、各写真について一切の利用を許諾していないと主張しており、そもそも、どうして大きなボタンの掛け違いが生じたのか、いまひとつ、背景が良く分からない事案です。
「Dazzyカタログ写真撮影12時間(メイクアップ、ヘアー、撮影設置助手、焦点設置助手含む。写真修正、リタッチング、DVDによる納品の代金を含む。)」の代金として、31万5000円(税込)が支払われている点、費用感としてどうだったのか。
この点、エージェントで現場のかたに伺ってみましたが、「ギャラ安め」だそうです。
所属事務所のウェブサイトで専属写真家さんが、他の写真家さんの作品と並んで掲出されるのを嫌がる、というお話はよく伺うところで(エージェントは、気を遣います)、そうしたクリエーターさんのキモチを踏まえると、
「私が撮影いたしました写真はWebストア用ではなく,アルマーニやバナナリパブリックやディーゼルのような,雑誌広告用やポスターや新作カタログにむいております。今回の写真は御社のWebサイトに掲載されております写真スタイルとは異なりますので,他のフォトグラファーの方が撮影されたお写真とは混合されないほうがよろしいかと思います。もちろん,写真は御社のものですので,どのようにご使用されてもよろしいのですが。」(判決文PDF10頁)という原告写真家さんの意向、作品の扱われ片へのこだわりが、あるいはポイントだったのかもしれません。
ファッション写真制作業務委託契約事件
東京地裁平成27.11.20平成25(ワ)25251著作権侵害損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官 今井弘晃
裁判官 勝又来未子
*裁判所サイト公表 2015.12.7
*キーワード:写真、業務委託契約、利用許諾
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■事案
ファッション写真の制作業務委託契約において、画像の利用許諾範囲などが争点となった事案
原告:写真家
被告:レディスファッション販売会社、ファッションブランド関連会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法61条、63条
1 原告各写真の著作権譲渡の有無
2 原告各写真の利用許諾の有無及びその内容
3 被告Dazzyによる著作者人格権侵害の存否
4 被告ロエンによる著作者人格権侵害の存否
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■事案の概要
『本件は,写真家である原告が,自ら撮影した別紙原告写真目録記載の各写真について,(1)被告Dazzyに対し,同目録記載6の写真をトリミング加工してオフィシャルサイトに掲載している行為が原告の有する著作権(複製権,公衆送信権)を侵害し,同トリミング加工及び同写真を宣伝文句等とともに一つのウェブページとしたことが原告の有する同一性保持権を,原告の氏名の不表示が原告の有する氏名表示権をそれぞれ侵害し,また,上記各写真のデータを被告ロエンに引渡すために複製したことが複製権侵害に当たると主張して,別紙被告Dazzy写真目録記載の写真の公衆送信の差止め並びに損害賠償金600万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年10月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被告ロエンに対し,原告の許諾を得ることなく,別紙原告写真目録記載の各写真をトリミング加工して,原告の氏名を表示せずに雑誌に掲載し,同雑誌を発行,販売した行為が原告の有する著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害すると主張して,損害賠償金1060万円及びこれに対する平成25年10月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償として弁護士費用相当額30万円(各15万円)及びこれに対する平成25年10月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)
<経緯>
H25.02 被告Dazzyからの依頼で原告が写真撮影
被告Dazzyがサイトに掲載
H25.05 被告ロエンがロエン誌掲載のために画像データを利用
H25.06 原告が被告Dazzyに対して損害賠償請求
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■判決内容
<争点>
1 原告各写真の著作権譲渡の有無
被告らは、原告各写真の著作権が被告Dazzyに譲渡されたと主張しましたが、契約書等の書面作成がないこと、原被告間で著作権の扱いに関してどのような会話をしたのかについて具体的な主張立証がないこと、請求書に代金に著作権譲渡代金が含まれる旨の記載がないこと、原告が原告各写真のデータを被告Dazzyに納品した後も自ら撮影した写真を加工して宣伝用のページの案を編集し、被告Dazzyに送付するなどしていたことなどから、原告が被告Dazzyとの間で原告各写真の著作権を譲渡する旨の合意をしたと認めることはできないと裁判所は判断しています(11頁以下)。
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2 原告各写真の利用許諾の有無及びその内容
原告が被告Dazzyから広告宣伝用の写真の撮影を依頼されて原告各写真を作成したこと、原告が被告Dazzyに対して「カタログ写真」の撮影代金として31万5000円を請求したこと、被告Dazzyに対して、「写真は御社のものですので、どのようにご使用されてもよろしい」、「どのように使うかは御社次第」などと述べていたことなどから、原告は、被告Dazzyが原告各写真を広告宣伝用として自由に利用することを前提として、写真撮影を請け負い、また、その成果物である原告各写真のデータを被告Dazzyに交付したということができると裁判所は認定。
原告は、被告Dazzyに対して少なくとも広告宣伝目的においては改変することや掲載する媒体の選択等も含めて自由に利用できるものとして原告各写真の利用を許諾したと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(12頁以下)。
また、広告の素材である写真の加工等を含む広告の製作や広告宣伝行為を第三者に依頼することは、通常行われることであるとして、被告ロエンが被告Dazzyの指示を受けてロエン誌に掲載する被告Dazzyの広告ページの素材として、原告各写真を改変したこと及び改変した原告各写真を含む広告ページのデータをロエン誌の発行元であるセブン&アイ出版に送付した行為は、利用許諾の範囲内の行為というべきであると裁判所は判断しています。
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3 被告Dazzyによる著作者人格権侵害の存否
原告は、被告Dazzyに対して原告各写真を改変することや原告の氏名表示をすることなく原告各写真を広告等に掲載することについて黙示の同意をしていたと認めるのが相当であると裁判所は判断。
被告DazzyがDazzyサイトに原告写真6を掲載するに当たり、トリミング加工したこと及び原告の氏名を表示しなかったことは、いずれも原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害するものではないと判断されています(15頁)。
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4 被告ロエンによる著作者人格権侵害の存否
被告Dazzyが第三者に広告の製作を依頼して原告各写真を含む広告を製作させる場合も同意の対象に含まれるとして、被告ロエンが被告Dazzyの指示に従って原告各写真を改変した上で改変した原告各写真を用いて原告の氏名表示のない広告ページを作成し、セブン&アイ出版に上記広告ページのデータを送付してロエン誌に掲載させたことは、いずれも原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害するものではないと裁判所は判断しています(15頁以下)。
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■コメント
ファンション系の商品カタログや広告・宣伝用の写真撮影に関する業務委託契約において、写真家とクライアントの間で撮影された写真の利用許諾の範囲が争点となった事案です。
イタリア人写真家は、各写真について一切の利用を許諾していないと主張しており、そもそも、どうして大きなボタンの掛け違いが生じたのか、いまひとつ、背景が良く分からない事案です。
「Dazzyカタログ写真撮影12時間(メイクアップ、ヘアー、撮影設置助手、焦点設置助手含む。写真修正、リタッチング、DVDによる納品の代金を含む。)」の代金として、31万5000円(税込)が支払われている点、費用感としてどうだったのか。
この点、エージェントで現場のかたに伺ってみましたが、「ギャラ安め」だそうです。
所属事務所のウェブサイトで専属写真家さんが、他の写真家さんの作品と並んで掲出されるのを嫌がる、というお話はよく伺うところで(エージェントは、気を遣います)、そうしたクリエーターさんのキモチを踏まえると、
「私が撮影いたしました写真はWebストア用ではなく,アルマーニやバナナリパブリックやディーゼルのような,雑誌広告用やポスターや新作カタログにむいております。今回の写真は御社のWebサイトに掲載されております写真スタイルとは異なりますので,他のフォトグラファーの方が撮影されたお写真とは混合されないほうがよろしいかと思います。もちろん,写真は御社のものですので,どのようにご使用されてもよろしいのですが。」(判決文PDF10頁)という原告写真家さんの意向、作品の扱われ片へのこだわりが、あるいはポイントだったのかもしれません。