最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
KPIマネジメントツールテンプレート制作業務委託契約事件(控訴審)
知財高裁平成27.10.28平成26(ネ)10116著作権に基づく差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 田中正哉
裁判官 神谷厚毅
*裁判所サイト公表 2015.11.04
*キーワード:データベース、著作物性、複製権、ロイヤリティ、インセンティブ
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■事案
KPIマネジメントツール(経営可視化支援ソリューション)用のテンプレート制作契約を巡ってロイヤリティ未払い分の有無などが争われた事案の控訴審
控訴人 (1審原告):公認会計士
被控訴人(1審被告):ソフト制作販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10の3号、21条
1 著作権侵害に基づく請求について
2 本件業務委託契約に基づくロイヤリティ請求について
3 本件インセンティブ契約に基づくインセンティブ請求について
4 不当利得返還請求について
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人による別紙目録記載の製品(以下「被控訴人製品」という場合がある。)の販売が,控訴人が被控訴人との間で平成18年4月1日に締結した業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)に基づいて作成した著作物である「標準テンプレートおよび文書化モデルサンプル」と題する書面(以下「本件書面」という。)及び本件書面を基に制作された著作物である「テンプレート」(以下「本件テンプレート」という。)の著作権侵害行為に当たるなどとして,著作権法112条1項に基づいて,被控訴人製品の販売等の差止めを求めるとともに,(1)主位的に,上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償4500万円(平成18年から平成24年までの損害額),予備的に,本件業務委託契約に基づく未払ロイヤリティ3645万2578円(平成20年4月から平成24年1月までの分),(2)控訴人が被控訴人との間で平成18年7月1日に締結した販売インセンティブ基本契約(以下「本件インセンティブ契約」という。)に基づく未払インセンティブ2641万0399円(平成19年3月分48万1000円,同年4月から平成20年3月までの分448万4241円及び平成20年4月から平成24年1月までの分2144万5158円の合計額),(3)不当利得返還請求に係る上記(1)及び(2)と同額の利得の一部請求として1000万円(ただし,上記(3)に係る請求は,上記(1)及び(2)に係る請求の予備的請求)及びこれに対する平成24年3月1日(催告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,控訴人主張の被控訴人による本件書面及び本件テンプレートに係る著作権侵害の事実は認められず,また,控訴人主張の未払ロイヤリティ及び未払インセンティブに係る発生原因事実も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 著作権侵害に基づく請求について
(1)本件テンプレートの著作権者について
控訴人(1審原告)は、本件テンプレートについて単独の著作権又は少なくとも共同著作権を有する旨主張しました(35頁以下)。
被控訴人(1審被告)は、控訴人主張の本件テンプレートのうち、入力参照事例としてのテンプレート(「日本版SOX法対応テンプレート」)が控訴人が作成した本件書面を基にして制作されたものであって、控訴人と被控訴人が共同で制作した著作物であることは認めているのに対して、本件ツールボックスが控訴人の著作物あるいは控訴人及び被控訴人の共同著作物であることは否認し争っていました。
本件ツールボックスが控訴人の著作物又は共同著作物に該当するかどうかについて、裁判所は、本件ツールボックスは、業務記述書、RCM等の文書を自動的に作成し、エクセルシートに出力できる機能を有するものであるから、エクセルのVBA(Visual Basic for Applications)等を利用してプログラミングされたものと推認され、本件ツールボックスのプログラムの具体的な記述は、被控訴人の担当者が職務上行ったものと認められるとして、職務著作(著作権法15条2項)としてその著作者は被控訴人であると判断しています。
(2)被控訴人による本件書面及び本件テンプレートの著作権侵害の有無等
被控訴人によるQPR J−SOXの製造、販売が控訴人主張の本件書面及び本件テンプレートの著作権(複製権ないし翻案権)の侵害行為に該当するものということはできないとして、控訴人主張の被控訴人によるQPR J−SOXの販売等の差止めを認めるべき理由はないと裁判所は判断しています(38頁以下)。
(3)控訴人の損害額
被控訴人が、控訴人に対して本件業務委託契約及び本件インセンティブ契約に基づいて「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOX(QPR J−SOX基本パッケージ)の販売実績(追加ライセンスのみの販売分及びテンプレートのみの販売分を含む。)を報告した計算書記載の販売実績以外に、被控訴人において平成18年から平成24年までの間に上記テンプレートを同梱したQPR J−SOXの販売実績があったことを認めるに足りる証拠はないとして、控訴人の主張はその前提において理由がないと判断されています(40頁以下)。
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2 本件業務委託契約に基づくロイヤリティ請求について
本件業務委託契約に基づくロイヤリティ請求(平成20年4月から平成24年1月までの間の被控訴人による本件テンプレートの販売に係る本件業務委託契約に基づくロイヤリティの支払義務の存否等について、被控訴人が平成20年4月から平成24年1月までの間に「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOXを販売したものと認めることはできず、本件業務委託契約1条2項に基づくロイヤリティの発生原因である「日本版SOX法対応テンプレート」を販売した事実があったものとは認められないとして、控訴人の上記主張は理由がないと裁判所は判断しています(47頁以下)。
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3 本件インセンティブ契約に基づくインセンティブ請求について
(1)被控訴人のTKC社に対する「日本版SOX法対応テンプレート」の販売に係る本件インセンティブ契約に基づくインセンティブの支払義務の存否等
被控訴人は、平成19年3月にTKC社に対して「日本版SOX法対応テンプレート」を販売したが、「日本版SOX法対応テンプレート」は「QPR製品」(「QPR ProcessGuide」及び「QPR ScoreCard」)に同梱した製品として販売されたものではなく、「本件インセンティブ契約の対象となる製品」に該当するものと認めることができないと判断されています(48頁)。
(2)平成19年4月から平成20年3月までの間の被控訴人によるQPRJ−SOXの販売に係る本件インセンティブ契約に基づくインセンティブの未払額等
控訴人と被控訴人との間において本件減額合意が成立したことが認められ、本件減額合意により平成19年4月分以降の「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOX基本パッケージの販売分に対するインセンティブは発生していないというべきであるとして、被控訴人が上記販売に係るインセンティブの支払義務を負うとの控訴人の主張は理由がないと裁判所は判断しています(50頁)。
(3)平成20年4月から平成24年1月までの間の被控訴人によるQPRJ−SOXの販売に係る本件インセンティブ契約に基づくインセンティブの支払義務の存否等
被控訴人が平成20年4月から平成24年1月までの間に「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOXを販売したものと認めることはできないとして、控訴人の上記主張は理由がないと裁判所は判断しています(56頁)。
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4 不当利得返還請求について
ロイヤリティ及びインセンティブ相当額についての不当利得の成否について、裁判所は、被控訴人においてロイヤリティ及びインセンティブの支払義務があるものとはいえないとして、控訴人の主張はその前提を欠くものであり、理由がないと判断しています(56頁)。
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■コメント
結論としては、原審同様、原告の主張は認められていません。
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■過去のブログ記事
2014年10月10日 原審記事
KPIマネジメントツールテンプレート制作業務委託契約事件(控訴審)
知財高裁平成27.10.28平成26(ネ)10116著作権に基づく差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官 田中正哉
裁判官 神谷厚毅
*裁判所サイト公表 2015.11.04
*キーワード:データベース、著作物性、複製権、ロイヤリティ、インセンティブ
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■事案
KPIマネジメントツール(経営可視化支援ソリューション)用のテンプレート制作契約を巡ってロイヤリティ未払い分の有無などが争われた事案の控訴審
控訴人 (1審原告):公認会計士
被控訴人(1審被告):ソフト制作販売会社
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■結論
控訴棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、10の3号、21条
1 著作権侵害に基づく請求について
2 本件業務委託契約に基づくロイヤリティ請求について
3 本件インセンティブ契約に基づくインセンティブ請求について
4 不当利得返還請求について
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■事案の概要
『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人による別紙目録記載の製品(以下「被控訴人製品」という場合がある。)の販売が,控訴人が被控訴人との間で平成18年4月1日に締結した業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)に基づいて作成した著作物である「標準テンプレートおよび文書化モデルサンプル」と題する書面(以下「本件書面」という。)及び本件書面を基に制作された著作物である「テンプレート」(以下「本件テンプレート」という。)の著作権侵害行為に当たるなどとして,著作権法112条1項に基づいて,被控訴人製品の販売等の差止めを求めるとともに,(1)主位的に,上記著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償4500万円(平成18年から平成24年までの損害額),予備的に,本件業務委託契約に基づく未払ロイヤリティ3645万2578円(平成20年4月から平成24年1月までの分),(2)控訴人が被控訴人との間で平成18年7月1日に締結した販売インセンティブ基本契約(以下「本件インセンティブ契約」という。)に基づく未払インセンティブ2641万0399円(平成19年3月分48万1000円,同年4月から平成20年3月までの分448万4241円及び平成20年4月から平成24年1月までの分2144万5158円の合計額),(3)不当利得返還請求に係る上記(1)及び(2)と同額の利得の一部請求として1000万円(ただし,上記(3)に係る請求は,上記(1)及び(2)に係る請求の予備的請求)及びこれに対する平成24年3月1日(催告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,控訴人主張の被控訴人による本件書面及び本件テンプレートに係る著作権侵害の事実は認められず,また,控訴人主張の未払ロイヤリティ及び未払インセンティブに係る発生原因事実も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。』
(2頁以下)
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■判決内容
<争点>
1 著作権侵害に基づく請求について
(1)本件テンプレートの著作権者について
控訴人(1審原告)は、本件テンプレートについて単独の著作権又は少なくとも共同著作権を有する旨主張しました(35頁以下)。
被控訴人(1審被告)は、控訴人主張の本件テンプレートのうち、入力参照事例としてのテンプレート(「日本版SOX法対応テンプレート」)が控訴人が作成した本件書面を基にして制作されたものであって、控訴人と被控訴人が共同で制作した著作物であることは認めているのに対して、本件ツールボックスが控訴人の著作物あるいは控訴人及び被控訴人の共同著作物であることは否認し争っていました。
本件ツールボックスが控訴人の著作物又は共同著作物に該当するかどうかについて、裁判所は、本件ツールボックスは、業務記述書、RCM等の文書を自動的に作成し、エクセルシートに出力できる機能を有するものであるから、エクセルのVBA(Visual Basic for Applications)等を利用してプログラミングされたものと推認され、本件ツールボックスのプログラムの具体的な記述は、被控訴人の担当者が職務上行ったものと認められるとして、職務著作(著作権法15条2項)としてその著作者は被控訴人であると判断しています。
(2)被控訴人による本件書面及び本件テンプレートの著作権侵害の有無等
被控訴人によるQPR J−SOXの製造、販売が控訴人主張の本件書面及び本件テンプレートの著作権(複製権ないし翻案権)の侵害行為に該当するものということはできないとして、控訴人主張の被控訴人によるQPR J−SOXの販売等の差止めを認めるべき理由はないと裁判所は判断しています(38頁以下)。
(3)控訴人の損害額
被控訴人が、控訴人に対して本件業務委託契約及び本件インセンティブ契約に基づいて「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOX(QPR J−SOX基本パッケージ)の販売実績(追加ライセンスのみの販売分及びテンプレートのみの販売分を含む。)を報告した計算書記載の販売実績以外に、被控訴人において平成18年から平成24年までの間に上記テンプレートを同梱したQPR J−SOXの販売実績があったことを認めるに足りる証拠はないとして、控訴人の主張はその前提において理由がないと判断されています(40頁以下)。
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2 本件業務委託契約に基づくロイヤリティ請求について
本件業務委託契約に基づくロイヤリティ請求(平成20年4月から平成24年1月までの間の被控訴人による本件テンプレートの販売に係る本件業務委託契約に基づくロイヤリティの支払義務の存否等について、被控訴人が平成20年4月から平成24年1月までの間に「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOXを販売したものと認めることはできず、本件業務委託契約1条2項に基づくロイヤリティの発生原因である「日本版SOX法対応テンプレート」を販売した事実があったものとは認められないとして、控訴人の上記主張は理由がないと裁判所は判断しています(47頁以下)。
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3 本件インセンティブ契約に基づくインセンティブ請求について
(1)被控訴人のTKC社に対する「日本版SOX法対応テンプレート」の販売に係る本件インセンティブ契約に基づくインセンティブの支払義務の存否等
被控訴人は、平成19年3月にTKC社に対して「日本版SOX法対応テンプレート」を販売したが、「日本版SOX法対応テンプレート」は「QPR製品」(「QPR ProcessGuide」及び「QPR ScoreCard」)に同梱した製品として販売されたものではなく、「本件インセンティブ契約の対象となる製品」に該当するものと認めることができないと判断されています(48頁)。
(2)平成19年4月から平成20年3月までの間の被控訴人によるQPRJ−SOXの販売に係る本件インセンティブ契約に基づくインセンティブの未払額等
控訴人と被控訴人との間において本件減額合意が成立したことが認められ、本件減額合意により平成19年4月分以降の「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOX基本パッケージの販売分に対するインセンティブは発生していないというべきであるとして、被控訴人が上記販売に係るインセンティブの支払義務を負うとの控訴人の主張は理由がないと裁判所は判断しています(50頁)。
(3)平成20年4月から平成24年1月までの間の被控訴人によるQPRJ−SOXの販売に係る本件インセンティブ契約に基づくインセンティブの支払義務の存否等
被控訴人が平成20年4月から平成24年1月までの間に「日本版SOX法対応テンプレート」を同梱したQPR J−SOXを販売したものと認めることはできないとして、控訴人の上記主張は理由がないと裁判所は判断しています(56頁)。
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4 不当利得返還請求について
ロイヤリティ及びインセンティブ相当額についての不当利得の成否について、裁判所は、被控訴人においてロイヤリティ及びインセンティブの支払義務があるものとはいえないとして、控訴人の主張はその前提を欠くものであり、理由がないと判断しています(56頁)。
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■コメント
結論としては、原審同様、原告の主張は認められていません。
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■過去のブログ記事
2014年10月10日 原審記事