最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

棟方志功美術額絵シリーズ事件(控訴審)

知財高裁平成27.10.14平成27(ネ)10041損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 大鷹一郎
裁判官      大西勝滋
裁判官      神谷厚毅

*裁判所サイト公表 2015.10.16
*キーワード:相続、共有、消滅時効

   --------------------

■事案

棟方志功の遺族間で作品の利用に関する許諾違反があったかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審被告) :作家の遺族、広告制作会社
被控訴人(1審原告):作家の遺族

   --------------------

■結論

控訴棄却

   --------------------

■争点

条文 著作権法65条2項、114条2項

1 被控訴人が有する本件著作権の共有持分割合
2 控訴人らによる不法行為の成否
3 被控訴人の損害額
4 消滅時効完成の有無
5 本件管理合意による被控訴人の損害賠償請求権の消滅の有無


   --------------------

■事案の概要

『本件は,「板画家」の亡A(以下「亡A」という。)が制作した著作物である原判決別紙記載の作品24点(原判決の別紙に記載されたもののうち「一月」ないし「十二月」の部分を除いたもの。以下,これらを併せて「本件作品」という。)についての著作権(以下「本件著作権」という。)の共有著作権者である被控訴人が,控訴人X(以下「控訴人X」という。)及び控訴人株式会社ケイ・アソシエイツ(以下「控訴人会社」という。)が被控訴人に無断で本件作品の複製を他人に許諾し,その複製をさせた行為が被控訴人の共有著作権(複製権)の侵害に当たるなどと主張して,控訴人らに対し,民法719条1項,著作権法117条に基づき,損害賠償として1260万円及びこれに対する不法行為の日である平成14年8月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』

『原判決は,控訴人会社においては凸版印刷株式会社(以下「凸版印刷」という。)に対し本件作品の複製を許諾し,その複製をさせ,本件著作権の共有著作権者の一人である控訴人Xにおいては,控訴人の同意を得ることなく,上記許諾を承諾したことが,被控訴人に対する共同不法行為を構成するとして,控訴人らに対し,損害賠償として1008万円及び内金84万円に対する平成15年1月31日から,内金84万円に対する同年2月28日から,内金84万円に対する同年3月31日から,内金84万円に対する同年4月30日から,内金84万円に対する同年5月31日から,内金84万円に対する同年6月30日から,内金84万円に対する同年7月31日から,内金84万円に対する同年8月31日から,内金84万円に対する同年9月30日から,内金84万円に対する同年10月31日から,内金84万円に対する同年11月30日から,内金84万円に対する同年12月31日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を命ずる限度で被控訴人の請求を一部認容した。
控訴人らは,原判決を不服として本件控訴を提起した。』
(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 被控訴人が有する本件著作権の共有持分割合

控訴人は、亡B(亡Aの妻)は、その生前に出版社との出版契約書作成までの間にDに対し亡Aの全作品の著作権の10分の7の共有持分権を譲渡していたとして、亡Bの遺産としての亡Aの全作品の著作権の共有持分権は10分の3であり、被控訴人が有する亡Aの全作品の著作権の共有持分割合はその2分の1の10分の1.5にすぎない旨主張しました。
結論として、裁判所は、亡Bが乙8の1及び2が作成されるまでの間にDに対し亡Aの全作品の著作権の10分の7の共有持分権を譲渡していた事実を認めることはできないとして、控訴人の主張を認めていません(8頁以下)。

   --------------------

2 控訴人らによる不法行為の成否
3 被控訴人の損害額
4 消滅時効完成の有無
5 本件管理合意による被控訴人の損害賠償請求権の消滅の有無

基本的に原審の判断が維持されています(11頁以下)。

   --------------------

■コメント

棟方志功作品を巡る紛争の控訴審となります。一部認容した原審の結論が控訴審でも維持されています。

   --------------------

■過去のブログ記事

2015年03月10日記事
原審