最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「白雪姫」格安DVD事件

東京地裁平成27.8.28平成26(ワ)4972著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官      廣瀬 孝
裁判官      勝又来未子

*裁判所サイト公表 2015.9.11
*キーワード:許諾、損害論

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■事案

保護期間が満了したアニメ映画「白雪姫」などに日本語吹き替え音声、日本語字幕を付したDVDの複製、販売を巡って許諾の有無が争われた事案

原告:映像ソフト企画制作会社ら
被告:記録媒体企画製造販売会社、同社代表取締役

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法22条、114条2項

1 複製及び販売の許諾の有無
2 被告Aに対する請求の可否
3 原告らの損害額
4 相殺の可否

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■事案の概要

『本件は,原告らが,被告らは被告商品を輸入,複製及び頒布し,もって原告らの有する著作権(複製権及び譲渡権)を侵害していると主張して,被告らに対し,著作権法112条1項に基づき,被告商品の輸入,複製及び頒布の差止めを求めるとともに,民法709条又は703条に基づき,連帯して損害金又は不当利得金405万円及びこれに対する被告Aにつき平成26年5月19日(訴状送達の日の翌日)から,被告会社につき同月20日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
被告らは,原告アートステーションの代表者であるB(以下「B」という。)から複製及び販売の許諾を受けていたなどと主張して,これを争っている。』(3頁)

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■判決内容

<争点>

1 複製及び販売の許諾の有無

被告らは、平成22年に原告アートステーション代表者Bから被告商品10作品(被告商品には原告商品と同一の日本語音声及び日本語字幕が収録されている)の複製及び販売の許諾を数量限定なく受けており、被告会社による被告商品の輸入、複製、頒布行為は原告らの著作権の侵害行為に該当しないと主張しました。
しかし、裁判所は、本件証拠上、被告らが数量限定のない許諾を受けていたことを直接裏付ける契約書、合意書その他B作成の書面は見当たらないとして、被告の主張を認めていません(5頁以下)。

結論として、Bが8作品・各1300枚のプレスについては許可していたものと認められるものの、これを超えて何らの限定を設けずに被告商品10作品の複製及び販売の許諾をしていたとまでは認められないと認定。被告会社による被告商品の輸入、複製、頒布行為のうち8作品・各1300枚を超える部分については、原告らの著作権の侵害行為に該当すると判断されています。

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2 被告Aに対する請求の可否

原告らは、本件の首謀者は被告会社代表取締役の被告Aであり、被告会社は会社としての資産もないなどとして被告Aに対しても差止め及び損害賠償の請求をしました。
しかし、裁判所は、本件証拠上、被告A自身が被告商品を輸入、複製、頒布した事実はこれを認めるに足りず、被告会社の法人格を否認すべきほどの事情も見当たらないとして、原告らの被告Aに対する請求を認めていません(8頁)。

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3 原告らの損害額

原告らは、被告商品1枚当たりの利益額を270円とし、被告会社による販売数量は合計3万枚と主張しました。
しかし、裁判所は、原告らはこれを裏付ける客観的資料を何ら提出しておらず、本件証拠上も被告会社の具体的な利益額及び販売数量を認めるに足りる客観的証拠は見当たらないとして、被告会社の自認する利益額及び販売数量を採用。
被告商品1枚当たりの利益額は17円、販売数量は合計2万枚で、このうち1万0400枚については許諾を得ていたとして、著作権の侵害によって被告会社が得た利益額の総額は16万3200円となり(17円×(2万枚−1万0400枚))、著作権法114条2項によって原告らそれぞれが被告会社に請求することのできる損害賠償の額は、各持分2分の1に相当する8万1600円ずつとなると判断しています(8頁)。

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4 相殺の可否

被告らは相殺を主張しましたが、その自働債権は被告会社の原告アートステーション代表者個人のBに対する貸金債権であり、原告らに対する債権ではないとして、被告らの相殺の主張は認められていません(8頁以下)。

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■コメント

パブリックドメインとなった「トムとジェリー」作品に続き、「白雪姫」など10作品に関する制作販売許諾内容についての紛争事案となります。
なお、最高裁判所サイトに同日公表された関連事件として、10作品に関するDVD販売を取り扱った出版社に対する判決があります。

対コスミック出版事件
東京地裁平成27.8.28平成25(ワ)32465著作権侵害差止等請求事件PDF