最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
カラオケ装置リース業者破産免責事件
大阪地裁平成27.8.27平成24(ワ)9838著作権侵害差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 田原美奈子
裁判官 大川潤子
*裁判所サイト公表 2015.9.8
*キーワード:カラオケ、リース、ジャスラック、破産、免責、悪意、非免責債権
--------------------
■事案
破産により免責が確定したカラオケ装置リース業者の元代表者の行為が破産法上の悪意で加えた不法行為にあたり、非免責債権に該当するかどうかが争点となった事案
原告:日本音楽著作権協会
被告:カラオケ装置リース業者元代表者
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 破産法253条1項2号
1 破産法253条1項2号の「悪意」
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■事案の概要
『本件は,音楽著作物(歌詞・楽曲)の著作権者から信託を受けて,音楽著作物を管理している原告が,カラオケ装置のリース業者(以下「リース業者」という。)である株式会社ミューティアル(以下「訴外会社」という。)の代表者であった被告に対し,著作権(演奏権,上映権)侵害を理由として,民法709条に基づき4012万2390円(著作物使用料相当額3647万4900円及び弁護士費用相当額364万7490円の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成26年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
なお,本件訴訟では,当初,訴外会社も被告とされていたが,その後両者ともに破産手続が開始したことから,原告は,訴外会社に対する訴えを取り下げるとともに,免責が確定した被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求を,悪意で加えた不法行為(破産法253条1項2号)に基づく損害賠償請求であると主張するようになった。』
(1頁以下)
<経緯>
H14 被告が訴外会社設立
H23 原告が訴外会社に警告
H24 本件訴訟
H26 訴外会社、被告が破産手続開始決定を受ける
破産手続廃止決定及び免責許可決定、確定
原告が訴外会社に対する訴えを取り下げ
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■判決内容
<争点>
1 破産法253条1項2号の「悪意」
原告は、被告はリース業者の負うべき注意義務を熟知しながら故意に無視しており、また、その行為態様は道義的に非難されるべき悪質なものであり、原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は、破産法253条1項2号にいう被告が「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」というべきであると主張しました(9頁以下)。
この点について裁判所は、破産法253条1項3号に、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)」とあることに鑑みると、同項2号の「悪意」が「故意」と異なる内容を含むことは明らかであって、したがって「悪意」は単なる「故意」を超えた、権利侵害に向けた積極的な害意を意味するものと解するのが相当であると説示した上で、本件について検討。
故意により注意義務を怠る経営をし、リース先の無許諾店舗でなされる著作権侵害に加功していたとみるのが相当であるとしつつも、
「確かに被告の一連の対応が,いずれもリース会社としての対応如何で避けられ得る著作権侵害がなされることを全く意に介していないとして非難されるべきことは否定できないが,訴外会社ひいては被告にとっては,リース先との契約を増やして利益を増大させることに意味があるのであって,それ以外に原告の管理する著作物の著作権を侵害することそのもの自体に意味があるとは考え難いところである。」として、自らの利益増大の目的を超えて原告に対する害意があったとまでは認めがたいと判断。
本件において被告に成立が認められ得る不法行為をもって「悪意で加えた不法行為」というには足りないとして、原告の主張を認めていません。
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■コメント
カラオケ機器リース先無許諾店舗が116店舗にも及ぶ悪質なリース会社よる著作権侵害事案ですが、単純な故意にすぎないとして破産免責で逃げられる(非免責債権にあたらない)という点で、破産法の解釈論としてはともかく、具体的なあてはめとしては、たいへん残念な結果の判断となっています。
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■参照条文
破産法
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
カラオケ装置リース業者破産免責事件
大阪地裁平成27.8.27平成24(ワ)9838著作権侵害差止等請求事件PDF
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官 田原美奈子
裁判官 大川潤子
*裁判所サイト公表 2015.9.8
*キーワード:カラオケ、リース、ジャスラック、破産、免責、悪意、非免責債権
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■事案
破産により免責が確定したカラオケ装置リース業者の元代表者の行為が破産法上の悪意で加えた不法行為にあたり、非免責債権に該当するかどうかが争点となった事案
原告:日本音楽著作権協会
被告:カラオケ装置リース業者元代表者
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 破産法253条1項2号
1 破産法253条1項2号の「悪意」
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■事案の概要
『本件は,音楽著作物(歌詞・楽曲)の著作権者から信託を受けて,音楽著作物を管理している原告が,カラオケ装置のリース業者(以下「リース業者」という。)である株式会社ミューティアル(以下「訴外会社」という。)の代表者であった被告に対し,著作権(演奏権,上映権)侵害を理由として,民法709条に基づき4012万2390円(著作物使用料相当額3647万4900円及び弁護士費用相当額364万7490円の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成26年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
なお,本件訴訟では,当初,訴外会社も被告とされていたが,その後両者ともに破産手続が開始したことから,原告は,訴外会社に対する訴えを取り下げるとともに,免責が確定した被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求を,悪意で加えた不法行為(破産法253条1項2号)に基づく損害賠償請求であると主張するようになった。』
(1頁以下)
<経緯>
H14 被告が訴外会社設立
H23 原告が訴外会社に警告
H24 本件訴訟
H26 訴外会社、被告が破産手続開始決定を受ける
破産手続廃止決定及び免責許可決定、確定
原告が訴外会社に対する訴えを取り下げ
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■判決内容
<争点>
1 破産法253条1項2号の「悪意」
原告は、被告はリース業者の負うべき注意義務を熟知しながら故意に無視しており、また、その行為態様は道義的に非難されるべき悪質なものであり、原告の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は、破産法253条1項2号にいう被告が「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」というべきであると主張しました(9頁以下)。
この点について裁判所は、破産法253条1項3号に、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)」とあることに鑑みると、同項2号の「悪意」が「故意」と異なる内容を含むことは明らかであって、したがって「悪意」は単なる「故意」を超えた、権利侵害に向けた積極的な害意を意味するものと解するのが相当であると説示した上で、本件について検討。
故意により注意義務を怠る経営をし、リース先の無許諾店舗でなされる著作権侵害に加功していたとみるのが相当であるとしつつも、
「確かに被告の一連の対応が,いずれもリース会社としての対応如何で避けられ得る著作権侵害がなされることを全く意に介していないとして非難されるべきことは否定できないが,訴外会社ひいては被告にとっては,リース先との契約を増やして利益を増大させることに意味があるのであって,それ以外に原告の管理する著作物の著作権を侵害することそのもの自体に意味があるとは考え難いところである。」として、自らの利益増大の目的を超えて原告に対する害意があったとまでは認めがたいと判断。
本件において被告に成立が認められ得る不法行為をもって「悪意で加えた不法行為」というには足りないとして、原告の主張を認めていません。
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■コメント
カラオケ機器リース先無許諾店舗が116店舗にも及ぶ悪質なリース会社よる著作権侵害事案ですが、単純な故意にすぎないとして破産免責で逃げられる(非免責債権にあたらない)という点で、破産法の解釈論としてはともかく、具体的なあてはめとしては、たいへん残念な結果の判断となっています。
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■参照条文
破産法
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権