最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
字幕制作ソフト事件
東京地裁平成27.6.25平成25(ワ)18110損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 廣瀬達人
裁判官 宇野遥子
*裁判所サイト公表 2015.8.12
*キーワード:退職従業員、プログラム、複製、翻案
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■事案
退職従業員による字幕制作用ソフトウェアの複製、翻案が争点となった事案
原告:字幕システム開発会社
被告:字幕制作ソフト開発会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、27条
1 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものであるか
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告の製造,販売する「Babel」という名称の字幕制作用ソフトウェア(以下「被告プログラム」という。)は,被告が原告の著作物であるプログラムを複製又は翻案したものであるから,被告が被告プログラムを製造,販売することは原告の著作権(具体的には,複製権,翻案権ないし譲渡権と解される。)を侵害する旨主張して,被告に対し,著作権法112条に基づき,被告プログラムの複製や販売等の差止め及び同プログラムの廃棄を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償金4844万1393円及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日(平成25年7月20日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)
<経緯>
H14.04 Softradeから原告が旧SSTのライセンス取得
H18 原告がSSTG1を完成
H22 原告元開発責任者Bが被告に従業員として勤務
H22 被告が被告プログラム開発
H24 被告が被告プログラムを展示会で展示
H25.02 被告が被告プログラムを販売
H25.03 被告プログラムのソースプログラム等を対象とする証拠保全決定
H25.05 13の被告プログラムのソースプログラムを対象とする証拠保全決定
被告プログラム:「Babel」
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■判決内容
<争点>
1 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものであるか
被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであるかについて(11頁以下)、裁判所は、
・原告プログラムのTemplate.mdbのファイルデータを複製したことについては当事者間に争いがない。
また、本件プログラムのバグ(エクセルファイルをxlsx形式で処理する際のエラーメッセージの点)等の類似性から、被告プログラムが原告プログラムを翻案したものであることを弱いながらも一定程度推認させる。
としつつも、
・原告プログラムと被告プログラムそれぞれの具体的表現が不明である。
・両者の機能やユーザーインターフェイスには一定程度の相違点がある。
といった点から、裁判所は、被告プログラムが原告プログラムの表現形式上の本質的な特徴を直接感得することができる著作物ではない可能性が十分にあると判断。
本件全証拠に照らしても被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであることを認めるに足りないとして、原告の主張を認めていません。
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■コメント
原告プログラムは、映画やDVD等の字幕制作ソフトウェア市場において業界標準となっているソフトで、販売価格は基本編集機能が税込29万4000円、高等編集オプションが税込19万9500円といったものでした。これに対して、被告プログラムも原告プログラムと同等の機能を目標として開発され、基本バージョンの販売価格は税込15万7500円といった価格設定となっています(2頁以下)。
本件訴訟は退職従業員も関わる事案なのですが、不正競争防止法は争点となっていません。もっとも、原告プレスリリースによると、別訴で対応しているようです。
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■参考サイト
原告会社プレスリリース
株式会社フェイス(字幕制作ソフト「Babel」開発・販売元)を東京地方裁判所に提訴しました。
(2013年7月11日)
株式会社フェイスとの著作権侵害訴訟第一審判決について(2015年7月6日)
被告会社プレスリリース(2015年6月30日)
株式会社カンバスからの著作権侵害訴訟で勝訴
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■追記(2015.08.18)
企業法務戦士の雑感(2015.08.12)
プログラムをめぐる著作権侵害訴訟の難しさ
字幕制作ソフト事件
東京地裁平成27.6.25平成25(ワ)18110損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官 廣瀬達人
裁判官 宇野遥子
*裁判所サイト公表 2015.8.12
*キーワード:退職従業員、プログラム、複製、翻案
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■事案
退職従業員による字幕制作用ソフトウェアの複製、翻案が争点となった事案
原告:字幕システム開発会社
被告:字幕制作ソフト開発会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法21条、27条
1 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものであるか
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告の製造,販売する「Babel」という名称の字幕制作用ソフトウェア(以下「被告プログラム」という。)は,被告が原告の著作物であるプログラムを複製又は翻案したものであるから,被告が被告プログラムを製造,販売することは原告の著作権(具体的には,複製権,翻案権ないし譲渡権と解される。)を侵害する旨主張して,被告に対し,著作権法112条に基づき,被告プログラムの複製や販売等の差止め及び同プログラムの廃棄を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償金4844万1393円及びこれに対する不法行為の後である訴状送達の日の翌日(平成25年7月20日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)
<経緯>
H14.04 Softradeから原告が旧SSTのライセンス取得
H18 原告がSSTG1を完成
H22 原告元開発責任者Bが被告に従業員として勤務
H22 被告が被告プログラム開発
H24 被告が被告プログラムを展示会で展示
H25.02 被告が被告プログラムを販売
H25.03 被告プログラムのソースプログラム等を対象とする証拠保全決定
H25.05 13の被告プログラムのソースプログラムを対象とする証拠保全決定
被告プログラム:「Babel」
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■判決内容
<争点>
1 被告プログラムは原告プログラムを複製又は翻案したものであるか
被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであるかについて(11頁以下)、裁判所は、
・原告プログラムのTemplate.mdbのファイルデータを複製したことについては当事者間に争いがない。
また、本件プログラムのバグ(エクセルファイルをxlsx形式で処理する際のエラーメッセージの点)等の類似性から、被告プログラムが原告プログラムを翻案したものであることを弱いながらも一定程度推認させる。
としつつも、
・原告プログラムと被告プログラムそれぞれの具体的表現が不明である。
・両者の機能やユーザーインターフェイスには一定程度の相違点がある。
といった点から、裁判所は、被告プログラムが原告プログラムの表現形式上の本質的な特徴を直接感得することができる著作物ではない可能性が十分にあると判断。
本件全証拠に照らしても被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであることを認めるに足りないとして、原告の主張を認めていません。
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■コメント
原告プログラムは、映画やDVD等の字幕制作ソフトウェア市場において業界標準となっているソフトで、販売価格は基本編集機能が税込29万4000円、高等編集オプションが税込19万9500円といったものでした。これに対して、被告プログラムも原告プログラムと同等の機能を目標として開発され、基本バージョンの販売価格は税込15万7500円といった価格設定となっています(2頁以下)。
本件訴訟は退職従業員も関わる事案なのですが、不正競争防止法は争点となっていません。もっとも、原告プレスリリースによると、別訴で対応しているようです。
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■参考サイト
原告会社プレスリリース
株式会社フェイス(字幕制作ソフト「Babel」開発・販売元)を東京地方裁判所に提訴しました。
(2013年7月11日)
株式会社フェイスとの著作権侵害訴訟第一審判決について(2015年7月6日)
被告会社プレスリリース(2015年6月30日)
株式会社カンバスからの著作権侵害訴訟で勝訴
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■追記(2015.08.18)
企業法務戦士の雑感(2015.08.12)
プログラムをめぐる著作権侵害訴訟の難しさ