最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

建築CADソフト海賊版販売事件(控訴審)

知財高裁平成27.6.18平成27(ネ)10039損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 富田善範
裁判官      大鷹一郎
裁判官      鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2015.6.23
*キーワード:損害論、使用料相当額

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■事案

ヤフオクで販売された海賊版建築CADソフトについて損害論が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :建築設計関連プログラム開発会社
被控訴人(1審被告):個人

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■結論

一部変更

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■争点

条文 著作権法114条3項

1 損害論

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人が控訴人の建築CADソフトウェア製品(製品名「DRA−CAD10」。以下「本件ソフトフェア」という。)のプログラムを一部改変したソフトウェア(以下「本件商品」という。)を本件ソフトフェアであるとしてインターネットオークションサイトに出品し,そのプログラムファイルをウェブサイトにアップロードし,落札者にダウンロードさせた行為が控訴人が有する本件ソフトフェアのプログラムの著作権(複製権,送信可能化権,翻案権)の侵害に当たるなどと主張して,被控訴人に対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として1117万2000円及び訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めた事案である。』

『原判決は,被控訴人は,適式の呼出しを受けながら,原審の本件口頭弁論期日に出頭せず,答弁書その他の準備書面も提出しないので,被控訴人において控訴人主張の別紙記載の請求原因事実を自白したものとみなした上で,控訴人が著作権法114条3項に基づいて損害賠償を請求することができる控訴人の損害額は,本件ソフトフェアの標準小売価格に相当な実施料率である50パーセントを乗じて算定した558万6000円である旨認定し,同額及び訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を被控訴人に命じる限度で,控訴人の請求を一部認容した。
 これに対し控訴人は,原判決中,控訴人敗訴部分を不服として本件控訴を提起した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 損害論

原審及び控訴審でも擬制自白により控訴人(1審原告)のプログラム著作物の複製権、送信可能化権、著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償請求が認められています(7頁)。

損害論について、控訴人は、著作権法114条3項に基づく控訴人の損害額は本件商品の販売数量56本に本件ソフトウェアの標準小売価格19万9500円(消費税込み)を乗じた合計1117万2000円と認定すべきである旨主張しました。

この点について、控訴審では、
(1)業務用パッケージソフトウェア製品として顧客に直接販売等している
(2)使用許諾書の存在
(3)定価を19万9500円(消費税込み)と定めている
(4)営業担当者経由の直接販売又はオンライン販売をする場合は定価から10パーセント値引き
(5)ダウンロード販売は行っていない

といった点から、本件ソフトウェアの定価は本件ソフトウェアの使用許諾料に相当するものであり、控訴人は、顧客(ユーザー)に対し直接販売(オンライン販売を含む。)をする場合の本件ソフトフェアの使用許諾料を定価から10パーセント控除した17万9550円に設定していると判断。
本件ソフトウェアのプログラムに関する著作権の行使について「受けるべき金銭の額に相当する額」(114条3項)は、本件ソフトフェアの定価19万9500円から10パーセントを控除した17万9550円に本件商品の販売数量56本を乗じた1005万4800円と認めるのが相当であると判断しています。

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■コメント

原審では、実施料率を50パーセントとして、19万9500円(標準小売価格)×56回(ダウンロード販売数)×0.5(実施料率)=558万6000円を損害額として認定していました。
これに対して、控訴審では0.9と増額で見直されています。
海賊版販売における損害額について、控訴審では一定の理解を得られましたが、それでも定価満額での認定とはなりませんでした。

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■過去のブログ記事

原審記事