最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「爆サイ中傷被害者の会(仮」発信者情報開示請求事件
東京地裁平成27.5.15平成27(ワ)1107発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 鈴木千帆
裁判官 本井修平
*裁判所サイト公表 2015.06.11
*キーワード:発信者情報開示、プロバイダ責任制限法
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■事案
ブログに書き込まれた無断転載写真などについて発信者情報を得るためにメールアドレスを管理する経由プロバイダに対して行われた発信者情報開示請求事案
原告:ウェブサイト制作会社
被告:経由プロバイダ事業者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 プロバイダ責任制限法4条1項
1 開示関係役務提供者該当性
2 権利侵害の明白性の有無
3 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
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■事案の概要
『本件は,別紙記事目録に記載のURLのウェブサイト上に掲載された記事(以下「本件記事」という。)に,原告のロゴマーク(以下「原告ロゴマーク」という。)及び原告の社内風景等を撮影した複数の写真(以下,複数の写真をまとめて「本件写真」といい,原告ロゴマークと本件写真を合わせて「本件写真等」という。)が掲載されたことにより,原告の著作権が侵害されたとして,本件記事の投稿者(以下「本件発信者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため,本件発信者に係る情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単に「法」という。)4条1項に基づき,被告に対し,別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)
<経緯>
本件記事がlivedoorブログ「爆サイ中傷被害者の会(仮」に掲載
H26.07 Line社に対する本件発信者電子メールアドレス開示請求認容判決
H26.08 原告が本件メールアドレスを管理している被告に発信者情報開示請求
H26.10 被告が本件発信者に意見照会書通知
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■判決内容
<争点>
1 開示関係役務提供者該当性
原告は、本件発信者のメールアドレスのドメイン名登録情報から被告が本件メールアドレスを管理していることを特定し、被告に対して発信者情報開示請求を行いました。
被告は、電子メール等の1対1の通信は「特定電気通信」には含まれないとして、被告が「開示関係役務提供者」に該当する余地はないと反論しました(5頁以下)。
この点について、裁判所は、電子掲示板等に係る特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するための当該特定電気通信設備を管理運営するコンテンツプロバイダと本件発信者との間の1対1の通信を媒介する、いわゆる経由プロバイダであっても、法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当する(最高裁平成22年4月8日第一小法廷判決参照)と説示。
本件についてみると、被告は、本件発信者による本件ブログの開設や本件記事の投稿に係る経由プロバイダであると認められるとして、被告は、法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当すると判断しています。
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2 権利侵害の明白性の有無
本件写真の著作物性や著作権の帰属について、裁判所は、原告が平成25年1月頃に新規従業員を募集するに当たって株式会社求人おきなわの運営するウェブサイト上における求人広告を依頼した際、当該求人広告に原告の社内風景等の写真を掲載することになったため、原告従業員が社内風景等を撮影したものであり、原告の特徴や企業としてPRしたいところを表現しようとしたものであって、撮影者である原告従業員の個性が表出されていること、また、原告の発意に基づき、原告名義で公表するため製作されたものであることが認められると判断。
本件写真は、いずれも原告の職務著作(著作権法15条1項)と認められています。
そして、本件記事に掲載された写真は、本件写真をそのまま転載したものであることから、本件記事上に本件写真を掲載されたことにより、少なくとも本件写真に係る原告の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると判断されています(6頁)。
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3 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
原告は、本件発信者に対して、著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意向を示しており、上記損害賠償請求権の行使のためには、被告の保有する別紙「発信者情報目録」記載1の情報及び同目録記載2の情報のうち「発信者の住所」について、それぞれ開示を受けることが必要であると裁判所は判断。
結論として、「発信者の住所」などの開示が認められています(6頁以下)。
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■コメント
ブログ開設者の特定のために、ブログ運営事業者とメールアドレス管理事業者の2社に対して情報開示請求の手続を経ており、原告としては労力が掛かったかと想像します。
ところで、ブログの名称にある「爆サイ」とは、ネット上のローカルコミュニティサイト(http://bakusai.com/)で、「2ちゃんねる」との違いは、地域に特化している点のようです。
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■参考判例
最判平成22.4.8 平成21(受)1049発信者情報開示請求事件
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■参考サイト
企業法務戦士の雑感(2010-04-13)
[企業法務]最高裁判決が出した二つの答え
「爆サイ中傷被害者の会(仮」発信者情報開示請求事件
東京地裁平成27.5.15平成27(ワ)1107発信者情報開示請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 鈴木千帆
裁判官 本井修平
*裁判所サイト公表 2015.06.11
*キーワード:発信者情報開示、プロバイダ責任制限法
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■事案
ブログに書き込まれた無断転載写真などについて発信者情報を得るためにメールアドレスを管理する経由プロバイダに対して行われた発信者情報開示請求事案
原告:ウェブサイト制作会社
被告:経由プロバイダ事業者
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 プロバイダ責任制限法4条1項
1 開示関係役務提供者該当性
2 権利侵害の明白性の有無
3 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
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■事案の概要
『本件は,別紙記事目録に記載のURLのウェブサイト上に掲載された記事(以下「本件記事」という。)に,原告のロゴマーク(以下「原告ロゴマーク」という。)及び原告の社内風景等を撮影した複数の写真(以下,複数の写真をまとめて「本件写真」といい,原告ロゴマークと本件写真を合わせて「本件写真等」という。)が掲載されたことにより,原告の著作権が侵害されたとして,本件記事の投稿者(以下「本件発信者」という。)に対する損害賠償請求権の行使のため,本件発信者に係る情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単に「法」という。)4条1項に基づき,被告に対し,別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を求める事案である。』(1頁以下)
<経緯>
本件記事がlivedoorブログ「爆サイ中傷被害者の会(仮」に掲載
H26.07 Line社に対する本件発信者電子メールアドレス開示請求認容判決
H26.08 原告が本件メールアドレスを管理している被告に発信者情報開示請求
H26.10 被告が本件発信者に意見照会書通知
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■判決内容
<争点>
1 開示関係役務提供者該当性
原告は、本件発信者のメールアドレスのドメイン名登録情報から被告が本件メールアドレスを管理していることを特定し、被告に対して発信者情報開示請求を行いました。
被告は、電子メール等の1対1の通信は「特定電気通信」には含まれないとして、被告が「開示関係役務提供者」に該当する余地はないと反論しました(5頁以下)。
この点について、裁判所は、電子掲示板等に係る特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するための当該特定電気通信設備を管理運営するコンテンツプロバイダと本件発信者との間の1対1の通信を媒介する、いわゆる経由プロバイダであっても、法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当する(最高裁平成22年4月8日第一小法廷判決参照)と説示。
本件についてみると、被告は、本件発信者による本件ブログの開設や本件記事の投稿に係る経由プロバイダであると認められるとして、被告は、法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当すると判断しています。
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2 権利侵害の明白性の有無
本件写真の著作物性や著作権の帰属について、裁判所は、原告が平成25年1月頃に新規従業員を募集するに当たって株式会社求人おきなわの運営するウェブサイト上における求人広告を依頼した際、当該求人広告に原告の社内風景等の写真を掲載することになったため、原告従業員が社内風景等を撮影したものであり、原告の特徴や企業としてPRしたいところを表現しようとしたものであって、撮影者である原告従業員の個性が表出されていること、また、原告の発意に基づき、原告名義で公表するため製作されたものであることが認められると判断。
本件写真は、いずれも原告の職務著作(著作権法15条1項)と認められています。
そして、本件記事に掲載された写真は、本件写真をそのまま転載したものであることから、本件記事上に本件写真を掲載されたことにより、少なくとも本件写真に係る原告の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると判断されています(6頁)。
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3 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
原告は、本件発信者に対して、著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意向を示しており、上記損害賠償請求権の行使のためには、被告の保有する別紙「発信者情報目録」記載1の情報及び同目録記載2の情報のうち「発信者の住所」について、それぞれ開示を受けることが必要であると裁判所は判断。
結論として、「発信者の住所」などの開示が認められています(6頁以下)。
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■コメント
ブログ開設者の特定のために、ブログ運営事業者とメールアドレス管理事業者の2社に対して情報開示請求の手続を経ており、原告としては労力が掛かったかと想像します。
ところで、ブログの名称にある「爆サイ」とは、ネット上のローカルコミュニティサイト(http://bakusai.com/)で、「2ちゃんねる」との違いは、地域に特化している点のようです。
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■参考判例
最判平成22.4.8 平成21(受)1049発信者情報開示請求事件
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■参考サイト
企業法務戦士の雑感(2010-04-13)
[企業法務]最高裁判決が出した二つの答え