最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
アニメ「三人の騎士」DVD事件(対コスミック出版)
東京地裁平成27.3.16平成26(ワ)4962著作権及び商標権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 西村康夫
裁判官 本井修平
*裁判所サイト公表 2015.4.10
*キーワード:著作物性、譲渡権、消尽、損害論、限界利益
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■事案
保護期間が満了したアニメ映画「三人の騎士」に日本語吹き替え、字幕を付したDVDを巡って争われた事案(対出版社)
原告:映像ソフト企画製造販売会社ら
被告:出版社
被告補助参加人:記録媒体企画製造販売会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、26条の2、114条2項
1 被告の本案前の申立てについて
2 著作権の帰属
3 著作権侵害性
4 譲渡権の消尽について
5 差止めについて
6 損害について
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■事案の概要
『ア 原告らは,被告に対し,著作権法21条,26条の2,112条1項,113条1項に基づき,本件著作物の複製物である日本語吹替え音声及び日本語字幕を含む被告DVDの輸入,複製及び頒布の差止めを求めるとともに,
イ 原告らは,被告に対し,民法709条,著作権法114条2項に基づき,各400万円及びこれに対する不法行為の以後の日である平成26年6月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,
ウ 原告コスモ・コーディネートは,著作権持分侵害による差止請求との選択的請求として,商標法36条に基づき,被告DVDの輸入,複製及び頒布の差止めを求める。』事案(2頁以下)
原告商品:アニメ「三人の騎士」DVD(1)
被告商品:「名作アニメ劇場」10枚組BOXセット 10作品収録中の1作品「三人の騎士」
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■判決内容
<争点>
1 被告の本案前の申立てについて
被告は、原告らの著作権侵害に基づく本件訴えが東京地裁平成25年(ワ)32465事件(別件訴訟)と同一の訴えであるとして、民事訴訟法142条に基づき却下されるべきである旨の本案前の申立てをしましたが、裁判所は認めていません(9頁)。
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2 著作権の帰属
(1)日本語台詞原稿及び日本語字幕の著作物性
アニメ「三人の騎士」の日本語の台詞原稿及び字幕部分(本件著作物)の著作物性について、原作映画の英語音声を日本語に翻訳した日本語台詞原稿及び日本語字幕であって、その翻訳には翻訳者の個性が発揮され創作性(著作権法2条1項1号)があると判断されています(9頁以下)。
(2)著作権の帰属
本件著作物の著作権の帰属について、結論として、原告らにそれぞれ持分2分の1で共有していることが認められています。
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3 著作権侵害性
被告が被告DVDを販売していること、また、被告DVDの日本語吹替え音声及び日本語字幕が本件著作物の複製物である原告らDVDの日本語吹替え音声及び日本語字幕と同一であることはいずれも争いがなく、被告は、言語の著作物としての本件著作物の複製物である被告DVDを販売していることから、原告らの譲渡権(26条の2)を侵害しているものと認められています(13頁以下)。
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4 譲渡権の消尽について
被告は、原告らは被告補助参加人が本件台詞原稿及び本件字幕を収録したDVDを製造し、被告に販売することを承諾していたのであるから、被告補助参加人から被告に対する譲渡によって原告らの譲渡権は消尽している旨(26条の2第2項4号)と主張しました(13頁以下)。
結論としては、裁判所は、原告らが被告補助参加人による被告DVDの製造販売を承諾していたと認めるに足りる証拠はないなどとして、被告の主張を認めていません。
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5 差止めについて
被告による被告DVDの販売は、原告らの有する本件著作物の著作権(譲渡権)持分を侵害する行為となることから、原告らは著作権法112条1項に基づき被告DVDの販売の差止めを求めることができると判断されています(17頁以下)。
なお、被告による輸入、複製の差止めを求める部分については、被告が自ら輸入、複製をしているとは認められず、他に被告が輸入、複製をするおそれがあることを基礎付ける事情も認められないとして、差止めの必要性が認められていません。また、頒布のうち、販売以外の態様の差止めを求める部分についても同様に差止めの必要性が認められていません。
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6 損害について
販売枚数2万8220枚×1枚あたりの利益56円×言語部分の寄与率0.2=158万0320円(114条2項)。
原告らの著作権共有持分はそれぞれ2分の1であり、原告らがそれぞれ被告に請求できる損害賠償の額は、各79万0160円(158万0320円×1/2)となると認定されています(18頁以下)。
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■コメント
保護期間が満了したアニメ映画「三人の騎士」に日本語吹き替え、字幕を付したDVDを無断で複製販売した事案で、侵害商品となるDVD商品を取り扱った出版社を相手とした訴訟となります。
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■過去のブログ記事
アニメ映画「三人の騎士」DVD事件(対メディアジャパン)
アニメ「三人の騎士」DVD事件(対コスミック出版)
東京地裁平成27.3.16平成26(ワ)4962著作権及び商標権侵害差止等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官 西村康夫
裁判官 本井修平
*裁判所サイト公表 2015.4.10
*キーワード:著作物性、譲渡権、消尽、損害論、限界利益
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■事案
保護期間が満了したアニメ映画「三人の騎士」に日本語吹き替え、字幕を付したDVDを巡って争われた事案(対出版社)
原告:映像ソフト企画製造販売会社ら
被告:出版社
被告補助参加人:記録媒体企画製造販売会社
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、26条の2、114条2項
1 被告の本案前の申立てについて
2 著作権の帰属
3 著作権侵害性
4 譲渡権の消尽について
5 差止めについて
6 損害について
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■事案の概要
『ア 原告らは,被告に対し,著作権法21条,26条の2,112条1項,113条1項に基づき,本件著作物の複製物である日本語吹替え音声及び日本語字幕を含む被告DVDの輸入,複製及び頒布の差止めを求めるとともに,
イ 原告らは,被告に対し,民法709条,著作権法114条2項に基づき,各400万円及びこれに対する不法行為の以後の日である平成26年6月30日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,
ウ 原告コスモ・コーディネートは,著作権持分侵害による差止請求との選択的請求として,商標法36条に基づき,被告DVDの輸入,複製及び頒布の差止めを求める。』事案(2頁以下)
原告商品:アニメ「三人の騎士」DVD(1)
被告商品:「名作アニメ劇場」10枚組BOXセット 10作品収録中の1作品「三人の騎士」
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■判決内容
<争点>
1 被告の本案前の申立てについて
被告は、原告らの著作権侵害に基づく本件訴えが東京地裁平成25年(ワ)32465事件(別件訴訟)と同一の訴えであるとして、民事訴訟法142条に基づき却下されるべきである旨の本案前の申立てをしましたが、裁判所は認めていません(9頁)。
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2 著作権の帰属
(1)日本語台詞原稿及び日本語字幕の著作物性
アニメ「三人の騎士」の日本語の台詞原稿及び字幕部分(本件著作物)の著作物性について、原作映画の英語音声を日本語に翻訳した日本語台詞原稿及び日本語字幕であって、その翻訳には翻訳者の個性が発揮され創作性(著作権法2条1項1号)があると判断されています(9頁以下)。
(2)著作権の帰属
本件著作物の著作権の帰属について、結論として、原告らにそれぞれ持分2分の1で共有していることが認められています。
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3 著作権侵害性
被告が被告DVDを販売していること、また、被告DVDの日本語吹替え音声及び日本語字幕が本件著作物の複製物である原告らDVDの日本語吹替え音声及び日本語字幕と同一であることはいずれも争いがなく、被告は、言語の著作物としての本件著作物の複製物である被告DVDを販売していることから、原告らの譲渡権(26条の2)を侵害しているものと認められています(13頁以下)。
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4 譲渡権の消尽について
被告は、原告らは被告補助参加人が本件台詞原稿及び本件字幕を収録したDVDを製造し、被告に販売することを承諾していたのであるから、被告補助参加人から被告に対する譲渡によって原告らの譲渡権は消尽している旨(26条の2第2項4号)と主張しました(13頁以下)。
結論としては、裁判所は、原告らが被告補助参加人による被告DVDの製造販売を承諾していたと認めるに足りる証拠はないなどとして、被告の主張を認めていません。
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5 差止めについて
被告による被告DVDの販売は、原告らの有する本件著作物の著作権(譲渡権)持分を侵害する行為となることから、原告らは著作権法112条1項に基づき被告DVDの販売の差止めを求めることができると判断されています(17頁以下)。
なお、被告による輸入、複製の差止めを求める部分については、被告が自ら輸入、複製をしているとは認められず、他に被告が輸入、複製をするおそれがあることを基礎付ける事情も認められないとして、差止めの必要性が認められていません。また、頒布のうち、販売以外の態様の差止めを求める部分についても同様に差止めの必要性が認められていません。
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6 損害について
販売枚数2万8220枚×1枚あたりの利益56円×言語部分の寄与率0.2=158万0320円(114条2項)。
原告らの著作権共有持分はそれぞれ2分の1であり、原告らがそれぞれ被告に請求できる損害賠償の額は、各79万0160円(158万0320円×1/2)となると認定されています(18頁以下)。
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■コメント
保護期間が満了したアニメ映画「三人の騎士」に日本語吹き替え、字幕を付したDVDを無断で複製販売した事案で、侵害商品となるDVD商品を取り扱った出版社を相手とした訴訟となります。
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■過去のブログ記事
アニメ映画「三人の騎士」DVD事件(対メディアジャパン)