最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
業務用通信カラオケ機器不正開局事件
東京地裁平成26.10.23平成25(ワ)19107損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 清野正彦
裁判官 高橋 彩
*裁判所サイト公表 2014.11.12
*キーワード:カラオケリース契約、損害額、原盤、著作隣接権、使用料相当額
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■事案
業務用通信カラオケ機器のリース事業者による不正使用における損害額の算定が争点となった事案
原告:業務用通信カラオケ機器製造販売会社
被告:通信カラオケ機器リース会社、被告会社代表者ら
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法114条3項
1 本件不正開局による損害額
2 著作隣接権侵害による損害の有無及び額
3 弁護士費用の損害額
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告株式会社ダイヤ電機(以下「被告会社」という。)とその役員であった被告A(以下「被告A」という。)及び被告B(以下「被告B」という。)に対し,被告らが,(1)原告との契約関係に基づいて飲食店等に設置すべきカラオケ機器につき正規の手続を執らずに飲食店等にカラオケ機器を利用させたことが一般不法行為に,(2)原告がレコード製作者としての権利を有する楽曲データを複製したことが著作隣接権(複製権)侵害に当たるとして,不法行為(民法709条,719条1項)に基づく損害賠償金の支払を求めた事案である。』(2頁)
<経緯>
H14.8 原告と被告会社が通信カラオケネットワークシステム契約締結
被告会社が株式会社ワキタからカラオケ端末を購入
被告らが不正開局
H25.3 ワキタが損害を填補
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■判決内容
<争点>
1 本件不正開局による損害額
被告らは、原告又は株式会社ワキタから購入したカラオケ端末を利用者にリースする際に、情報利用料の支払を免れるために本来は試用のために各利用者に一度しか認められていないセットアップ開局と解除の申請を途切れることなく繰り返し、これによって情報利用料を支払わずに利用者の利用に供していました。
カラオケ端末は、正規の開局手続を行わないと新しい楽曲データの配信を受けることができないことから、被告らは繰り返し全楽曲データを複製・保存したHDDを作成し(本件複製)、このHDDを不正に利用されている各カラオケ端末のHDDと随時交換していました。
(なお、ワキタは、平成25年3月27日、原告に対して被告会社がワキタから購入したカラオケ端末の本件不正開局による損害の填補として311万2960円を支払っています。)
本件不正開局及び本件複製に関して、被告らが共同不法行為責任を負うこと自体については争いがなく、本件不正開局による損害額(不正利用期間ののべ月数に対応する情報利用料相当額)として裁判所は、合計813万5000円を認定しています(9頁以下)。
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2 著作隣接権侵害による損害の有無及び額
(1)損害の有無
被告らは、本件不正開局による逸失利益についての損害賠償請求と楽曲データの複製権侵害についての損害賠償請求は重複し同一の内容であるから両立せず、また、被告らによる本件複製は正規の開局手続を経ていれば本件契約により許諾される範囲内の行為であるから、前記1の逸失利益のほかに本件複製による損害は発生していないと主張しました(11頁以下)。
しかし、裁判所は、本件不正開局と本件複製は別の行為であり、侵害される利益(前者は契約に基づく情報利用料請求権であり、後者はレコード製作者の著作隣接権)も異なること、また、第三者にリースする際にカラオケ端末に複製をした後、更に他のHDDに全楽曲データを複製することが本件契約の許諾の範囲に含まれていないのは明らかであり、被告らの主張は本件契約の契約条項に反するものであって採用できないと判断。本件不正開局による情報利用料に係る逸失利益による損害のほか、本件複製による損害が発生したと判断しています。
(2)使用料相当額
本件複製による著作隣接権(複製権)侵害に関する損害額(使用料相当額)は、3366万3900円(1曲1回当たり4円×のべ曲数841万5975曲)であると認定されています(12頁以下)。
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3 弁護士費用の損害額
弁護士費用相当額として380万円が損害額として認定されています(14頁)。
結論として、合計4510万9438円が損害額として認められています。
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■コメント
カラオケリース料を免れようとしてリース業者がカラオケ機器に細工をしており、逮捕者も出た悪質な事案となります。
損害額としては、情報使用料のほかに、カラオケ原盤の複製部分についても多額の使用料が認定されています。
なお、JASRACプレスリリースによると、2014年現在で、カラオケリース事業者に対する本案訴訟が全国で8例あったということで、思ったよりもカラオケリース事業者による不適切な取扱い事例があることが分かりました。
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■参考サイト
JASRACプレスリリース
「違法に複製したカラオケ楽曲データを搭載した通信カラオケ機器を店舗等にリースした男性らを逮捕」
2012年5月8日
株式会社ブライナ「知財情報局」
「違法複製楽曲データ搭載の通信カラオケ機器をリース、会社代表逮捕」
2012年5月10日記事
業務用通信カラオケ機器不正開局事件
東京地裁平成26.10.23平成25(ワ)19107損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 清野正彦
裁判官 高橋 彩
*裁判所サイト公表 2014.11.12
*キーワード:カラオケリース契約、損害額、原盤、著作隣接権、使用料相当額
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■事案
業務用通信カラオケ機器のリース事業者による不正使用における損害額の算定が争点となった事案
原告:業務用通信カラオケ機器製造販売会社
被告:通信カラオケ機器リース会社、被告会社代表者ら
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■結論
請求一部認容
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■争点
条文 著作権法114条3項
1 本件不正開局による損害額
2 著作隣接権侵害による損害の有無及び額
3 弁護士費用の損害額
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■事案の概要
『本件は,原告が,被告株式会社ダイヤ電機(以下「被告会社」という。)とその役員であった被告A(以下「被告A」という。)及び被告B(以下「被告B」という。)に対し,被告らが,(1)原告との契約関係に基づいて飲食店等に設置すべきカラオケ機器につき正規の手続を執らずに飲食店等にカラオケ機器を利用させたことが一般不法行為に,(2)原告がレコード製作者としての権利を有する楽曲データを複製したことが著作隣接権(複製権)侵害に当たるとして,不法行為(民法709条,719条1項)に基づく損害賠償金の支払を求めた事案である。』(2頁)
<経緯>
H14.8 原告と被告会社が通信カラオケネットワークシステム契約締結
被告会社が株式会社ワキタからカラオケ端末を購入
被告らが不正開局
H25.3 ワキタが損害を填補
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■判決内容
<争点>
1 本件不正開局による損害額
被告らは、原告又は株式会社ワキタから購入したカラオケ端末を利用者にリースする際に、情報利用料の支払を免れるために本来は試用のために各利用者に一度しか認められていないセットアップ開局と解除の申請を途切れることなく繰り返し、これによって情報利用料を支払わずに利用者の利用に供していました。
カラオケ端末は、正規の開局手続を行わないと新しい楽曲データの配信を受けることができないことから、被告らは繰り返し全楽曲データを複製・保存したHDDを作成し(本件複製)、このHDDを不正に利用されている各カラオケ端末のHDDと随時交換していました。
(なお、ワキタは、平成25年3月27日、原告に対して被告会社がワキタから購入したカラオケ端末の本件不正開局による損害の填補として311万2960円を支払っています。)
本件不正開局及び本件複製に関して、被告らが共同不法行為責任を負うこと自体については争いがなく、本件不正開局による損害額(不正利用期間ののべ月数に対応する情報利用料相当額)として裁判所は、合計813万5000円を認定しています(9頁以下)。
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2 著作隣接権侵害による損害の有無及び額
(1)損害の有無
被告らは、本件不正開局による逸失利益についての損害賠償請求と楽曲データの複製権侵害についての損害賠償請求は重複し同一の内容であるから両立せず、また、被告らによる本件複製は正規の開局手続を経ていれば本件契約により許諾される範囲内の行為であるから、前記1の逸失利益のほかに本件複製による損害は発生していないと主張しました(11頁以下)。
しかし、裁判所は、本件不正開局と本件複製は別の行為であり、侵害される利益(前者は契約に基づく情報利用料請求権であり、後者はレコード製作者の著作隣接権)も異なること、また、第三者にリースする際にカラオケ端末に複製をした後、更に他のHDDに全楽曲データを複製することが本件契約の許諾の範囲に含まれていないのは明らかであり、被告らの主張は本件契約の契約条項に反するものであって採用できないと判断。本件不正開局による情報利用料に係る逸失利益による損害のほか、本件複製による損害が発生したと判断しています。
(2)使用料相当額
本件複製による著作隣接権(複製権)侵害に関する損害額(使用料相当額)は、3366万3900円(1曲1回当たり4円×のべ曲数841万5975曲)であると認定されています(12頁以下)。
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3 弁護士費用の損害額
弁護士費用相当額として380万円が損害額として認定されています(14頁)。
結論として、合計4510万9438円が損害額として認められています。
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■コメント
カラオケリース料を免れようとしてリース業者がカラオケ機器に細工をしており、逮捕者も出た悪質な事案となります。
損害額としては、情報使用料のほかに、カラオケ原盤の複製部分についても多額の使用料が認定されています。
なお、JASRACプレスリリースによると、2014年現在で、カラオケリース事業者に対する本案訴訟が全国で8例あったということで、思ったよりもカラオケリース事業者による不適切な取扱い事例があることが分かりました。
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■参考サイト
JASRACプレスリリース
「違法に複製したカラオケ楽曲データを搭載した通信カラオケ機器を店舗等にリースした男性らを逮捕」
2012年5月8日
株式会社ブライナ「知財情報局」
「違法複製楽曲データ搭載の通信カラオケ機器をリース、会社代表逮捕」
2012年5月10日記事