最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

リフォーム工事写真事件

大阪地裁平成26.10.21平成25(ワ)6295著作権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官      田原美奈子
裁判官      松阿彌隆

*裁判所サイト公表 2014.10.23
*キーワード:雇用、委託、競業避止義務、職務著作、代理店契約

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■事案

営業代理店が撮影したリフォーム工事施工状況の写真の著作権の帰属などが争われた事案

原告:ソーラーシステム販売会社
被告:リフォーム工事業者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法15条1項

1 被告が雇用契約上の競業避止義務違反による損害賠償義務を負うか
2 本件写真について原告が著作権を取得したか

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告は原告の従業員であったと主張して,(1)雇用契約上の競業避止義務違反に基づく損害賠償請求として,被告が第三者から受注した建築関係工事の報酬相当額の支払を求め,(2)被告が自己のウェブサイトにおいて使用する写真について,原告が著作権を有するとして,その使用の差止め等を求めた事案である。』(2頁)

<経緯>

H16.12 被告が会社設立
H18.4  被告の会社と原告が本件業務委託契約締結
H18.7  本件業務委託契約の内容を変更
H19.3  歩合の変更
H22.8  被告が案件2を工事
H23.9  原告がP5宅のリフォーム工事。被告が仕上がりを撮影
H24.4  被告が案件1の工事を受注

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■判決内容

<争点>

1 被告が雇用契約上の競業避止義務違反による損害賠償義務を負うか

原告と被告が設立した会社との間の業務委託契約について、原告が太陽熱温水器のアフターメンテナンスの顧客を一定数紹介し、被告の会社が原告より紹介を受けた顧客からの利益の一部を原告に配分すること等を内容とする契約でした。その後契約内容を変更しましたが(本件合意)、裁判所は、いずれも法人である原告と被告の会社との間の業務委託契約であり、これにより原被告間に雇用契約が成立するとは解し得ないものであると判断。また、被告の会社において原告が紹介した案件以外にも工事等を受注する場合のあることが予定されていたというべきであると認定。
その上で、被告が雇用契約上の競業避止義務違反による損害賠償義務を負うかについて、本件合意には、被告及びP2が原告の従業員として営業活動に就労する旨の記載があり、給与体制、基本給といった文言が使用されてはいるものの、派遣元となる被告の会社の代表者として原告方で就労していたにすぎず、就労先と雇用関係があるとはいえないこと、また、支払いについても、被告らの営業活動による利益に応じた配当手当のみが支給されるといった点から、雇用契約に基づく給与の支払と評価することはできないと裁判所は判断。
原被告間に競業避止義務を伴う雇用契約が成立したとの前提自体が認められないとして、雇用契約上の競業避止義務違反を理由とする原告の請求は認められていません(12頁以下)。

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2 本件写真について原告が著作権を取得したか

被告が原告の施行した現場においてリフォーム工事の仕上がりを撮影し、本件写真を被告が運営するウェブサイト上で無断使用することは、本件写真についての原告の公衆送信権(著作権法15条1項、23条1項)を侵害するものであると主張しました(14頁)。
この点について、裁判所は、

(1)本件写真を撮影したのは被告である
(2)その撮影は被告の施工した部分を記録に残したいという被告自身の発意に基づくものである
(3)住宅所有者の家人の了解を得て行われている
(4)当該写真の撮影についての原告からの個別の指示等はなかった
(5)原告において受注した物件の工事概要等について、組織的、体系的に写真を撮影し、これを管理していた等の事情が認められない

といった点から、職務著作(15条1項)の成立を否定、原告が著作権者であることを前提とする差止請求及び損害賠償請求は、いずれも理由がないと判断しています。

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■コメント

リフォーム工事施行の代理店契約に関連する紛争となります。中心となる論点は競業制限の範囲であり代理店契約内容の解釈となります。リフォーム工事の施行状況の撮影といった点も、本来であれば、代理店契約の際の取決め内容如何かと思われます。