最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ディスクパブリッシャーソフト事件(控訴審)

知財高裁平成26.3.12平成25(ネ)10008著作権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 富田善範
裁判官      田中芳樹
裁判官      荒井章光

*裁判所サイト公表 2014.5.12
*キーワード:著作物性、複製、翻案、営業秘密

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■事案

競合ソフトの開発販売に関して著作権侵害性、営業秘密に係る不正競争行為性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審被告):ソフト開発販売会社
被控訴人(一審原告):ソフト開発販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条1項10号の2、10条1項9号、21条、27条、不正競争防止法2条1項7号、2条6項

1 被控訴人が被控訴人プログラムを製造、販売する行為についての本件プログラムの著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)侵害の成否
2 被控訴人が被控訴人プログラムを製造、販売する行為についての不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否

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■事案の概要

『本件は,被控訴人プログラムを製造,販売する被控訴人が,被控訴人プログラムは控訴人の著作物である本件プログラムを複製又は翻案したものであり,被控訴人が被控訴人プログラムを製造,販売する行為は,控訴人が有する本件プログラムの著作権(複製権(著作権法21条)又は翻案権(同法27条)及び譲渡権(同法26条の2第1項))侵害に該当するとともに,控訴人の営業秘密である本件プログラム等の不正使用(不正競争防止法2条1項7号)に該当することを理由に,被控訴人に対し,著作権法112条1項及び不正競争防止法3条1項に基づく被控訴人プログラムの製造,販売の差止請求権を有するなどと控訴人が主張しているがそのような請求権は存在しないとして,控訴人の上記各差止請求権の不存在の確認を求めた事案である。』

『原判決は,被控訴人プログラムの具体的記述から本件プログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することができないから,被控訴人プログラムが本件プログラムを複製又は翻案したものと認めることはできない,被控訴人が本件プログラムの表現上の創作性を有する部分を使用して被控訴人プログラムを製造し,販売したものとはいえない以上,被控訴人が控訴人の営業秘密である本件プログラムの表現上の創作性を有する部分を使用して被控訴人プログラムを製造し,販売したものとはいえない,エプソンチャイナ社からの本件要望事項それ自体が控訴人において秘密として管理されていたことを認めるに足りる証拠はなく,被控訴人が本件要望事項を利用し,これを搭載した被控訴人プログラムを製造したことについての具体的な主張立証もないとして,被控訴人の請求をいずれも認容したため,控訴人がこれを不服として本件控訴に及んだ。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人が被控訴人プログラムを製造、販売する行為についての本件プログラムの著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)侵害の成否

1.プログラムの著作物性の判断基準(22頁以下)

プログラムの著作物性(2条1項10号の2)の判断基準について、知財高裁は、「プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要する」(22頁)と説示。
また、複製(21条、2条1項15号)、翻案(27条)の意義について言及した上で、複製又は翻案に該当するためには、既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との同一性を有する部分が著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であると述べています。
そして、「プログラムの具体的記述自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,作成者の個性が表現されたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。」(23頁)旨示しています。

2.本件プログラムの表現上の創作性(23頁以下)

原判決別紙1ないし12の本件プログラムと被控訴人プログラムの対比について、裁判所は、

・マイクロソフト社があらかじめ用意している関数である
・アイデア又は解法部分である
・具体的な表現が異なっている
・ありふれた表現にすぎない
・プログラムの機能(アイデア)である
・オープンソースソフトウェアの部分である
・名称や文法部分である

などの理由から、控訴人の指摘する本件プログラムと被控訴人プログラムとの共通部分において、本件プログラムの表現上の創作性を認めることができないと判断。
結論として、被控訴人プログラムが本件プログラムを複製又は翻案したものということはできないとして、控訴人の主張を認めていません。

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2 被控訴人が被控訴人プログラムを製造、販売する行為についての不正競争防止法2条1項7号の不正競争行為の成否

1.本件プログラムに関するアイデアについて

(1)本件プログラムについて

控訴人は、本件プログラム自体が不正競争防止法2条1項7号により保護される営業秘密であると主張しました。
しかし、裁判所は、被控訴人プログラムが本件プログラムを複製又は翻案したものと認めることはできず、被控訴人が本件プログラムの表現上の創作性を有する部分を使用して被控訴人プログラムを製造、販売したものとはいえない以上、その余の点について検討するまでもなく控訴人の上記主張は採用することができないと判断しています(37頁以下)。

(2)本件アイデアについて

控訴人は、控訴人の従業員であるBが本件プログラムの製作を指示する際に開示した情報(乙32添付の表に記載された情報)及び本件プログラム製作の前提となるアイデアが営業秘密に該当すると主張しました(38頁以下)。
しかし、裁判所は、上記各情報が被控訴人プログラムにおいて使用されていることを認めるに足りる的確な証拠はないとして控訴人の主張を認めていません(38頁)。

2.本件要望事項について

本件要望事項は、エプソンチャイナ社から控訴人に対して指摘された本件プログラムの改善に関する要望事項でしたが、控訴人及びエプソンチャイナ社との間で本件要望事項が秘密として管理されていたことを認めるに足りる的確な証拠はないなどとして、裁判所は控訴人の主張を認めていません(38頁以下)。

結論として、著作権法、不正競争防止法いずれの争点についても控訴人の主張が認められず、被控訴人の著作権侵害差止請求権等の不存在確認に係る本訴請求はいずれも理由があり、これを認容した原判決は相当であって本件控訴は理由がないとして、棄却の判断となっています。

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■コメント

プログラム著作物の著作物性や類否、また、営業秘密管理の有無などが争点となった事案の控訴審です。
原審同様、著作権侵害性、不正競争行為性が否定されています。

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■過去のブログ記事

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