最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「TRIPP TRAPP」椅子形態模倣事件(対カトージ)
東京地裁平成26.4.17平成25(ワ)8040著作権侵害行為差止等請求事件PDF
別紙1から3
別紙3
別紙3から6
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 清野正彦
裁判官 植田裕紀久
*裁判所サイト公表 2014.4.22
*キーワード:純粋美術、応用美術、著作物性、商品等表示、一般不法行為
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■事案
子供用の椅子の形態模倣性に関してデザインの著作物性や不正競争行為性が争点となった事案
原告:工芸デザイン権利保有会社、家具製造販売会社
被告:育児用品、家具販売会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項1号、2号、民法709条
1 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無
2 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
3 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性
4 一般不法行為上の違法性の有無
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■事案の概要
『本件は,原告らが,被告に対し,被告の製造・販売する被告製品の形態が「TRIPP TRAPP」(トリップ・トラップ)という製品名の原告らの製造等に係る椅子(別紙1「原告製品目録」記載のもの。以下「原告製品」という。)の形態に酷似しており,被告の行為が,原告製品のデザインに係る原告オプスヴィック社の著作権(複製権若しくは翻案権)及び原告ストッケ社の著作権の独占的利用権を侵害するとともに,原告らの周知又は著名な商品等表示と類似する商品等表示を使用した商品の販売等をする不正競争行為に当たり,そうでないとしても原告らの信用等を毀損する一般不法行為に当たると主張して,(1)著作権法112条,不正競争防止法(以下「不競法」という。)3条に基づく被告製品の製造・販売等の差止め及び破棄,(2)著作権法114条2項,3項,不競法4条,5条2項,3項1号,民法709条に基づく損害賠償及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金(その起算日は不法行為日以降の日である平成25年6月20日)の支払,(3)不競法14条に基づく謝罪広告の掲載をそれぞれ求めた事案である。』(2頁以下)
<経緯>
S47 原告製品がデザインされ、製造・販売・輸出
H23 被告製品1製造・販売
原告製品 :TRIPP TRAPP(トリップ・トラップ)
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■判決内容
<争点>
1 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無
裁判所は、「原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である」と応用美術論について説示した上で、本件については、実用的な機能を離れて見た場合、美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えているとは認め難く、そのデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないと判断しています(10頁以下)。
結論として、原告らの著作権又はその独占的利用権の侵害に基づく請求は認められていません。
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2 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
(1)周知性のある商品等表示該当性
商品形態の商品等表示性について、裁判所は、「商品の形態であっても,それが他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有している場合には,二次的に商品の出所を表示する機能を有することもあり,それが,長期間継続的かつ独占的に使用されたり,短期間であっても強力に宣伝広告されたりした結果,出所識別機能を獲得した場合には,周知性のある商品等表示に当たる」と説示した上で、原告製品は従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているとして、原告製品の形態が需要者の間に広く認識されているものであれば、その形態は不競法2条1項1号にいう周知性のある商品等表示に当たり、同号所定の不正競争行為の成立を認める余地があると判断しています(11頁以下)。
(2)類似性の有無
被告製品の形態が原告製品の商品等表示である形態と類似のものに当たるか否かについて、「取引の実情の下で,取引者又は需要者が両製品の形態の外観に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべき」として日本ウーマン・パワー最高裁事件判決(最高裁昭和58年10月7日第二小法廷判決)に触れた上で、被告製品の特徴を検討。被告製品は、原告製品の2つの特徴のうち、第1の形態的特徴を備えておらず、原告製品の商品等表示とは重要な点で相違し、それが第2の形態的特徴を備えていることを考慮しても取引の実情の下において取引者又は需要者が両形態の外観に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるとは認められないと判断。
結論として、被告製品の形態が原告製品の商品等表示と類似のものに当たるということはできないとしています(14頁以下)。
以上から、不競法2条1項1号の不正競争行為該当性は否定されています。
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3 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性
原告らは、原告製品の形態は遅くとも平成18年2月の時点では著名な商品等表示になっていたと主張しましたが、裁判所は、原告製品の形態が原告らの著名な商品等表示になっていたと認めることはできないと判断しています(16頁)。
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4 一般不法行為上の違法性の有無
裁判所は、被告製品の形態が原告製品の形態に類似するとはいえず、また、取引者又は需要者において両製品の出所に混同を来していると認めるにも足りないとして、被告製品の製造・販売によって原告らの信用等が侵害されたとは認められないと判断。
結論として、被告製品の製造・販売が一般不法行為上違法であるということはできないとされています。
以上から、原告らの請求はすべて棄却されています。
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■コメント
原告製品であるTRIPP TRAPP(トリップ・トラップ)については、アップリカを被告とした訴訟がありましたが、本件の椅子については、類似性が否定されています。
別紙を一瞥する限りでは、支柱部材Cの有る・無し、で椅子の印象がまったく違うものとなるため、非類似の判断も仕方がないとの印象です。
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■過去のブログ記事
アップリカ椅子形態模倣事件 記事
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■参考判例
東京地裁平成22.11.18平成21(ワ)1193著作権侵害行為差止請求事件PDF
「TRIPP TRAPP」椅子形態模倣事件(対カトージ)
東京地裁平成26.4.17平成25(ワ)8040著作権侵害行為差止等請求事件PDF
別紙1から3
別紙3
別紙3から6
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官 清野正彦
裁判官 植田裕紀久
*裁判所サイト公表 2014.4.22
*キーワード:純粋美術、応用美術、著作物性、商品等表示、一般不法行為
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■事案
子供用の椅子の形態模倣性に関してデザインの著作物性や不正競争行為性が争点となった事案
原告:工芸デザイン権利保有会社、家具製造販売会社
被告:育児用品、家具販売会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、不正競争防止法2条1項1号、2号、民法709条
1 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無
2 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
3 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性
4 一般不法行為上の違法性の有無
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■事案の概要
『本件は,原告らが,被告に対し,被告の製造・販売する被告製品の形態が「TRIPP TRAPP」(トリップ・トラップ)という製品名の原告らの製造等に係る椅子(別紙1「原告製品目録」記載のもの。以下「原告製品」という。)の形態に酷似しており,被告の行為が,原告製品のデザインに係る原告オプスヴィック社の著作権(複製権若しくは翻案権)及び原告ストッケ社の著作権の独占的利用権を侵害するとともに,原告らの周知又は著名な商品等表示と類似する商品等表示を使用した商品の販売等をする不正競争行為に当たり,そうでないとしても原告らの信用等を毀損する一般不法行為に当たると主張して,(1)著作権法112条,不正競争防止法(以下「不競法」という。)3条に基づく被告製品の製造・販売等の差止め及び破棄,(2)著作権法114条2項,3項,不競法4条,5条2項,3項1号,民法709条に基づく損害賠償及びこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金(その起算日は不法行為日以降の日である平成25年6月20日)の支払,(3)不競法14条に基づく謝罪広告の掲載をそれぞれ求めた事案である。』(2頁以下)
<経緯>
S47 原告製品がデザインされ、製造・販売・輸出
H23 被告製品1製造・販売
原告製品 :TRIPP TRAPP(トリップ・トラップ)
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■判決内容
<争点>
1 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無
裁判所は、「原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である」と応用美術論について説示した上で、本件については、実用的な機能を離れて見た場合、美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えているとは認め難く、そのデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないと判断しています(10頁以下)。
結論として、原告らの著作権又はその独占的利用権の侵害に基づく請求は認められていません。
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2 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
(1)周知性のある商品等表示該当性
商品形態の商品等表示性について、裁判所は、「商品の形態であっても,それが他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有している場合には,二次的に商品の出所を表示する機能を有することもあり,それが,長期間継続的かつ独占的に使用されたり,短期間であっても強力に宣伝広告されたりした結果,出所識別機能を獲得した場合には,周知性のある商品等表示に当たる」と説示した上で、原告製品は従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているとして、原告製品の形態が需要者の間に広く認識されているものであれば、その形態は不競法2条1項1号にいう周知性のある商品等表示に当たり、同号所定の不正競争行為の成立を認める余地があると判断しています(11頁以下)。
(2)類似性の有無
被告製品の形態が原告製品の商品等表示である形態と類似のものに当たるか否かについて、「取引の実情の下で,取引者又は需要者が両製品の形態の外観に基づく印象,記憶,連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断すべき」として日本ウーマン・パワー最高裁事件判決(最高裁昭和58年10月7日第二小法廷判決)に触れた上で、被告製品の特徴を検討。被告製品は、原告製品の2つの特徴のうち、第1の形態的特徴を備えておらず、原告製品の商品等表示とは重要な点で相違し、それが第2の形態的特徴を備えていることを考慮しても取引の実情の下において取引者又は需要者が両形態の外観に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるとは認められないと判断。
結論として、被告製品の形態が原告製品の商品等表示と類似のものに当たるということはできないとしています(14頁以下)。
以上から、不競法2条1項1号の不正競争行為該当性は否定されています。
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3 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性
原告らは、原告製品の形態は遅くとも平成18年2月の時点では著名な商品等表示になっていたと主張しましたが、裁判所は、原告製品の形態が原告らの著名な商品等表示になっていたと認めることはできないと判断しています(16頁)。
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4 一般不法行為上の違法性の有無
裁判所は、被告製品の形態が原告製品の形態に類似するとはいえず、また、取引者又は需要者において両製品の出所に混同を来していると認めるにも足りないとして、被告製品の製造・販売によって原告らの信用等が侵害されたとは認められないと判断。
結論として、被告製品の製造・販売が一般不法行為上違法であるということはできないとされています。
以上から、原告らの請求はすべて棄却されています。
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■コメント
原告製品であるTRIPP TRAPP(トリップ・トラップ)については、アップリカを被告とした訴訟がありましたが、本件の椅子については、類似性が否定されています。
別紙を一瞥する限りでは、支柱部材Cの有る・無し、で椅子の印象がまったく違うものとなるため、非類似の判断も仕方がないとの印象です。
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■過去のブログ記事
アップリカ椅子形態模倣事件 記事
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■参考判例
東京地裁平成22.11.18平成21(ワ)1193著作権侵害行為差止請求事件PDF