最高裁判所HP 知的財産裁判例集より
「プロ野球ドリームナイン」ソーシャルゲーム事件
東京地裁平成25.11.29平成23(ワ)29184損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官 今井弘晃
裁判官 実本 滋
*裁判所サイト公表 2014.3.13
*キーワード:著作物性、複製、翻案、著名商品等表示、形態模倣、一般不法行為論
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■事案
プロ野球トレーディングカードを題材としたSNSゲームの類否が争点となった事案
原告:エンタテインメントコンテンツ企画制作会社
被告:コンテンツ制作配信会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条1項1号、2号、3号、民法709条
1 被告ゲームの制作・配信行為は原告の著作権を侵害するか
2 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか
3 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項3号の不正競争に該当する
か
4 被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか
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■事案の概要
『本件は,「プロ野球ドリームナイン」というタイトルのゲーム(以下「原告ゲーム」という。)をソーシャルネットワーキングサービス上で提供・配信している原告が,別紙ゲーム目録記載のゲーム(以下「被告ゲーム」という。)を提供・配信している被告に対して,主位的に,被告が原告ゲームを複製ないし翻案して,自動公衆送信することによって,原告の有する著作権(複製権,翻案権,公衆送信権)を侵害している,また,原告ゲームの影像や構成は周知又は著名な商品等表示若しくは形態であるところ,被告ゲームの影像や構成等は,原告ゲームの影像や構成と同一又は類似しているから,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号ないし3号の不正競争に該当すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項又は不競法3条の規定に基づき,被告ゲームの配信(公衆送信,送信可能化)の差止めを求めるとともに,著作権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求,又は不競法4条に基づく損害賠償請求として5595万1875円及びこれに対する平成23年9月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに弁護士費用相当額として260万円及びこれに対する平成24年2月21日(同月14日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,被告が行う被告ゲームの提供・配信は,原告ゲームを提供・配信することによって生じる原告の営業活動上の利益を不法に侵害する一般不法行為に該当すると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として1716万4696円及びこれに対する平成24年2月21日(同月14日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』(2頁以下)
<経緯>
H23.04 原告ゲーム配信開始
H23.08 被告ゲーム配信開始
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■判決内容
<争点>
1 被告ゲームの制作・配信行為は原告の著作権を侵害するか
被告ゲームの制作・配信行為が原告の著作権を侵害するかどうかについて、裁判所は著作物性や複製、翻案の意義に関して言及した上で、原告ゲームと被告ゲームの個別表現等における著作権侵害の成否を検討しています(72頁以下)。
(1)個別表現
「選手ガチャ」「強化」「試合(リーグ)」「選手カード」について、表現の内容を検討した上で、原被告ゲームを対比。共通する部分もあるものの、具体的表現に多くの相違点があり、結論として複製又は翻案に当たらないと判断しています。
(2)まとまった表現
個別表現の表示の一連のまとまった表現に関しても複製又は翻案に当たらないとしています。
(3)ゲーム全体
(a)各要素の画面遷移(103頁以下)
「選手ガチャ」などの各要素の画面の選択及び配列において共通する点があるとはいえ、それはありふれた表現であって創作性が乏しい表現であり、複製又は翻案に当たらないと判断しています。
(b)ゲーム全体(118頁以下)
ゲームのルールに関わる部分は、それ自体アイデアにすぎず具体的表現とはいえず、仮に何らかの表現と捉えた場合でも、
・利用者の便宜のための画面や操作手順からの制約
・実在のプロ野球を題材とするトレーディングカードゲームからの制約
から特に特徴的な点、独創性があると認められない限り創作性は認められないとして、結論としては被告ゲームは複製又は翻案に当たらないとしています。
結論として、原告ゲームと被告ゲームは個別の表現においても、表現全体においてもアイデアなど表現それ自体でない部分又はありふれた表現において共通するにすぎないとして、被告ゲームについて複製権侵害又は翻案権侵害ということはできず、また公衆送信権侵害したということもできないと判断しています。
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2 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか
(1)原告ゲームの進行及びゲームの影像と同進行に伴う変化の態様
原告は、原告ゲームの進行及びゲームの影像と同進行に伴う変化の態様は周知の商品等表示性又は著名な商品等表示性が認められるべきであると主張しました(120頁以下)。
この点について裁判所は、ゲームの進行は抽象的な観念にすぎず、それを基礎として具体的な表示となるものとしてゲームの影像とその変化の態様が商品等表示性が認められることがあり得るとしても、ゲームの進行自体が独立して取引の対象とされて周知または著名な商品等表示として認めるに足りる的確な証拠はない、として、不正競争防止法2条1項1号及び同項2号所定の「商品等表示」には当たらないと判断しています。
(2)原告ゲームの影像とその変化の態様
次に、原告ゲームの影像とその変化の態様について、ゲームの影像が他に例を見ない独創的な特徴を有する構成であり、かつ、そのような特徴を備えた影像が特定のゲームの全過程にわたって繰り返されて長時間にわたって画面に表示されることなどにより当該影像が需要者の間に広く認識されているような場合には、当該影像が不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当することがあり得る。また、当該影像が著名といえる場合には、当該影像が同項2号にいう「商品等表示」に該当することがあり得ると裁判所は説示。
しかし、原告ゲームは、利用者が参加して楽しむというインタラクティブ性を有していることに由来する制約、野球というスポーツのルールに由来する一定の制約、プロ野球界の実在の球団及び選手の画像等を利用することに由来する一定の制約、トレーディングカードゲームの形態やルールに由来する一定の制約がある。さらに、原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」及び「試合」といった各個別の項目における表現及び遊び方についても類似のゲームが既に採用している表現及び遊び方を採用しているにすぎない。そのため、それらをどのように選択し組み合わせて配列・構成したとしても、それらの諸要素を利用したゲームであれば相当程度似通ったものとならざるを得ないというべきであり、原告ゲームは個々の要素を個別に判断しても、また、その配列・構成を全体的に観察しても他に例を見ない独創的な特徴を有するものであると認めることはできないと判断。
さらに、原告ゲームについては、その全過程にわたって繰り返されて長時間にわたって画面に表示されて原告ゲームの影像とその変化の態様が需要者の間に広く認識されていたとか、著名であったと認めるに足りる的確な証拠もないと判断。
結論として、原告ゲームは、その影像が周知または著名な商品等表示であると認めることはできず、2条1項1号、2号による原告の請求はいずれも理由がないとしています。
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3 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項3号の不正競争に該当する
か
原告は、原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」「試合」の五つの要素における各画面表示の展開の組み合わせ及び各表示画面内の表示を総合したものが不正競争防止法2条1項3号の「形態」に当たると主張しました(123頁以下)。
この点について裁判所は、
「不競法2条1項3号は,他人の労力,資金の成果を,他の形態をとる選択肢があるにもかかわらず,ことさら商品を完全に模倣して,その他人と競争する行為を不正競争行為として規制するものであるところ,不競法における「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいうところ(同法2条4項),それは知覚によって認識することができる有形的な商品の具体的な形状をいうものであり,無形のアイデア,商品の機能及び商品の抽象的な形態の特徴は含まれないと解すべきである。」
と説示した上で、本件については、原告が主張する原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」「試合」の五つの要素における各画面表示の展開の組み合わせといったものは、原告ゲームの遊び方、進行方法若しくはゲームのルールであって、それ自体無形のアイデア、商品の機能若しくは抽象的な形態の特徴にとどまるというべきであるとして、2条1項3号の「形態」に当たると認めることはできないと判断しています。
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4 被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか
原告は、被告が原告ゲームのゲームシステムを完全に模倣してフリーライドしているとして一般不法行為論(民法709条)を主張しました(124頁以下)。
裁判所は、北朝鮮映画事件最高裁判決(最高裁平成23.12.8平成21(受)602)に言及するなどした上で本件を検討。原告が主張するところの保護されるべき利益については、原告ゲームの個別的、全体的な表現若しくはゲームの遊び方、進行方法、ゲームのルールといったアイデアや抽象的な特徴に基づく利益と何ら異なるものではなく、それらの点が著作権法及び不競法によっては保護されないものであり、また、本件全証拠を精査しても被告が被告ゲームを配信し、収益を得る行為がことさら原告に損害を与えることを目的として行われたなどの自由競争の範囲を逸脱する行為であると認めるに足りる事実も窺われないと判断。
結論として、被告が被告ゲームを制作しこれを配信する行為には著作権法の規律の対象とする著作物の利用若しくは不競法の定める不正競争行為の規制による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情は認められないとして、原告の主張を認めていません。
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■コメント
原告ゲームはグリーのプラットフォームで配信されていて、被告ゲームはDeNAで配信されているので、グリーとDeNAといえば、釣りゲームに関する紛争を思い出しますので(「釣りゲータウン2」事件 知財高裁平成24.8.8平成24(ネ)10027著作権侵害差止等請求控訴事件)、代理戦争ではないにしても本件の提訴にあたってどの程度プラットフォーム側の意向が影響したのか関心があるところですが、原告ゲームは両社で配信されているため、これは深読みでしょうか。
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■参考サイト
原告ゲーム
ドリナイ公式サイト プロ野球ドリームナイン
被告ゲーム
大熱狂!!プロ野球カード《公式》株式会社gloops(グループス)
「プロ野球ドリームナイン」ソーシャルゲーム事件
東京地裁平成25.11.29平成23(ワ)29184損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林保
裁判官 今井弘晃
裁判官 実本 滋
*裁判所サイト公表 2014.3.13
*キーワード:著作物性、複製、翻案、著名商品等表示、形態模倣、一般不法行為論
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■事案
プロ野球トレーディングカードを題材としたSNSゲームの類否が争点となった事案
原告:エンタテインメントコンテンツ企画制作会社
被告:コンテンツ制作配信会社
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■結論
請求棄却
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■争点
条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条1項1号、2号、3号、民法709条
1 被告ゲームの制作・配信行為は原告の著作権を侵害するか
2 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか
3 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項3号の不正競争に該当する
か
4 被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか
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■事案の概要
『本件は,「プロ野球ドリームナイン」というタイトルのゲーム(以下「原告ゲーム」という。)をソーシャルネットワーキングサービス上で提供・配信している原告が,別紙ゲーム目録記載のゲーム(以下「被告ゲーム」という。)を提供・配信している被告に対して,主位的に,被告が原告ゲームを複製ないし翻案して,自動公衆送信することによって,原告の有する著作権(複製権,翻案権,公衆送信権)を侵害している,また,原告ゲームの影像や構成は周知又は著名な商品等表示若しくは形態であるところ,被告ゲームの影像や構成等は,原告ゲームの影像や構成と同一又は類似しているから,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号ないし3号の不正競争に該当すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項又は不競法3条の規定に基づき,被告ゲームの配信(公衆送信,送信可能化)の差止めを求めるとともに,著作権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求,又は不競法4条に基づく損害賠償請求として5595万1875円及びこれに対する平成23年9月21日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,並びに弁護士費用相当額として260万円及びこれに対する平成24年2月21日(同月14日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,被告が行う被告ゲームの提供・配信は,原告ゲームを提供・配信することによって生じる原告の営業活動上の利益を不法に侵害する一般不法行為に該当すると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として1716万4696円及びこれに対する平成24年2月21日(同月14日付け訴えの変更申立書の送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』(2頁以下)
<経緯>
H23.04 原告ゲーム配信開始
H23.08 被告ゲーム配信開始
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■判決内容
<争点>
1 被告ゲームの制作・配信行為は原告の著作権を侵害するか
被告ゲームの制作・配信行為が原告の著作権を侵害するかどうかについて、裁判所は著作物性や複製、翻案の意義に関して言及した上で、原告ゲームと被告ゲームの個別表現等における著作権侵害の成否を検討しています(72頁以下)。
(1)個別表現
「選手ガチャ」「強化」「試合(リーグ)」「選手カード」について、表現の内容を検討した上で、原被告ゲームを対比。共通する部分もあるものの、具体的表現に多くの相違点があり、結論として複製又は翻案に当たらないと判断しています。
(2)まとまった表現
個別表現の表示の一連のまとまった表現に関しても複製又は翻案に当たらないとしています。
(3)ゲーム全体
(a)各要素の画面遷移(103頁以下)
「選手ガチャ」などの各要素の画面の選択及び配列において共通する点があるとはいえ、それはありふれた表現であって創作性が乏しい表現であり、複製又は翻案に当たらないと判断しています。
(b)ゲーム全体(118頁以下)
ゲームのルールに関わる部分は、それ自体アイデアにすぎず具体的表現とはいえず、仮に何らかの表現と捉えた場合でも、
・利用者の便宜のための画面や操作手順からの制約
・実在のプロ野球を題材とするトレーディングカードゲームからの制約
から特に特徴的な点、独創性があると認められない限り創作性は認められないとして、結論としては被告ゲームは複製又は翻案に当たらないとしています。
結論として、原告ゲームと被告ゲームは個別の表現においても、表現全体においてもアイデアなど表現それ自体でない部分又はありふれた表現において共通するにすぎないとして、被告ゲームについて複製権侵害又は翻案権侵害ということはできず、また公衆送信権侵害したということもできないと判断しています。
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2 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか
(1)原告ゲームの進行及びゲームの影像と同進行に伴う変化の態様
原告は、原告ゲームの進行及びゲームの影像と同進行に伴う変化の態様は周知の商品等表示性又は著名な商品等表示性が認められるべきであると主張しました(120頁以下)。
この点について裁判所は、ゲームの進行は抽象的な観念にすぎず、それを基礎として具体的な表示となるものとしてゲームの影像とその変化の態様が商品等表示性が認められることがあり得るとしても、ゲームの進行自体が独立して取引の対象とされて周知または著名な商品等表示として認めるに足りる的確な証拠はない、として、不正競争防止法2条1項1号及び同項2号所定の「商品等表示」には当たらないと判断しています。
(2)原告ゲームの影像とその変化の態様
次に、原告ゲームの影像とその変化の態様について、ゲームの影像が他に例を見ない独創的な特徴を有する構成であり、かつ、そのような特徴を備えた影像が特定のゲームの全過程にわたって繰り返されて長時間にわたって画面に表示されることなどにより当該影像が需要者の間に広く認識されているような場合には、当該影像が不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に該当することがあり得る。また、当該影像が著名といえる場合には、当該影像が同項2号にいう「商品等表示」に該当することがあり得ると裁判所は説示。
しかし、原告ゲームは、利用者が参加して楽しむというインタラクティブ性を有していることに由来する制約、野球というスポーツのルールに由来する一定の制約、プロ野球界の実在の球団及び選手の画像等を利用することに由来する一定の制約、トレーディングカードゲームの形態やルールに由来する一定の制約がある。さらに、原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」及び「試合」といった各個別の項目における表現及び遊び方についても類似のゲームが既に採用している表現及び遊び方を採用しているにすぎない。そのため、それらをどのように選択し組み合わせて配列・構成したとしても、それらの諸要素を利用したゲームであれば相当程度似通ったものとならざるを得ないというべきであり、原告ゲームは個々の要素を個別に判断しても、また、その配列・構成を全体的に観察しても他に例を見ない独創的な特徴を有するものであると認めることはできないと判断。
さらに、原告ゲームについては、その全過程にわたって繰り返されて長時間にわたって画面に表示されて原告ゲームの影像とその変化の態様が需要者の間に広く認識されていたとか、著名であったと認めるに足りる的確な証拠もないと判断。
結論として、原告ゲームは、その影像が周知または著名な商品等表示であると認めることはできず、2条1項1号、2号による原告の請求はいずれも理由がないとしています。
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3 被告ゲームの配信行為は不競法2条1項3号の不正競争に該当する
か
原告は、原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」「試合」の五つの要素における各画面表示の展開の組み合わせ及び各表示画面内の表示を総合したものが不正競争防止法2条1項3号の「形態」に当たると主張しました(123頁以下)。
この点について裁判所は、
「不競法2条1項3号は,他人の労力,資金の成果を,他の形態をとる選択肢があるにもかかわらず,ことさら商品を完全に模倣して,その他人と競争する行為を不正競争行為として規制するものであるところ,不競法における「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいうところ(同法2条4項),それは知覚によって認識することができる有形的な商品の具体的な形状をいうものであり,無形のアイデア,商品の機能及び商品の抽象的な形態の特徴は含まれないと解すべきである。」
と説示した上で、本件については、原告が主張する原告ゲームの「選手ガチャ」「スカウト」「強化」「オーダー」「試合」の五つの要素における各画面表示の展開の組み合わせといったものは、原告ゲームの遊び方、進行方法若しくはゲームのルールであって、それ自体無形のアイデア、商品の機能若しくは抽象的な形態の特徴にとどまるというべきであるとして、2条1項3号の「形態」に当たると認めることはできないと判断しています。
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4 被告ゲームの配信行為は不法行為に該当するか
原告は、被告が原告ゲームのゲームシステムを完全に模倣してフリーライドしているとして一般不法行為論(民法709条)を主張しました(124頁以下)。
裁判所は、北朝鮮映画事件最高裁判決(最高裁平成23.12.8平成21(受)602)に言及するなどした上で本件を検討。原告が主張するところの保護されるべき利益については、原告ゲームの個別的、全体的な表現若しくはゲームの遊び方、進行方法、ゲームのルールといったアイデアや抽象的な特徴に基づく利益と何ら異なるものではなく、それらの点が著作権法及び不競法によっては保護されないものであり、また、本件全証拠を精査しても被告が被告ゲームを配信し、収益を得る行為がことさら原告に損害を与えることを目的として行われたなどの自由競争の範囲を逸脱する行為であると認めるに足りる事実も窺われないと判断。
結論として、被告が被告ゲームを制作しこれを配信する行為には著作権法の規律の対象とする著作物の利用若しくは不競法の定める不正競争行為の規制による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情は認められないとして、原告の主張を認めていません。
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■コメント
原告ゲームはグリーのプラットフォームで配信されていて、被告ゲームはDeNAで配信されているので、グリーとDeNAといえば、釣りゲームに関する紛争を思い出しますので(「釣りゲータウン2」事件 知財高裁平成24.8.8平成24(ネ)10027著作権侵害差止等請求控訴事件)、代理戦争ではないにしても本件の提訴にあたってどの程度プラットフォーム側の意向が影響したのか関心があるところですが、原告ゲームは両社で配信されているため、これは深読みでしょうか。
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■参考サイト
原告ゲーム
ドリナイ公式サイト プロ野球ドリームナイン
被告ゲーム
大熱狂!!プロ野球カード《公式》株式会社gloops(グループス)