最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「生命の實相」著作物利用権確認請求事件

東京地裁平成26.2.7平成25(ワ)4710著作物利用権確認請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      西村康夫
裁判官      森川さつき

裁判所サイト公表 2014.2.21
*キーワード:二重起訴、既判力、更新拒絶、権利濫用

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■事案

生長の家創始者谷口雅春氏(故人)の著作「生命の實相」などに関する出版使用許諾契約の更新拒絶の有効性が争点となった事案(別訴)

原告:出版社
被告:社会事業団
被告補助参加人:出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民訴法142条、著作権法79条、63条

1 前訴との二重起訴の有無
2 本件更新拒絶の有効性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,出版使用許諾契約に基づく著作物利用権の確認を求めた事案である。』(2頁)

<経緯>

S49 原被告間で「著作権使用(出版)契約書」締結(本件昭和49年契約)
    原被告間で本件出版使用許諾契約締結
H19 被告が原告に対して更新拒絶通知書通知
H21 被告が原告に対して履行催告兼契約解除を通知
H21 被告が原告に対して契約解除の確認及び通告書により通知
H21 原告が被告に対して回答書通知
H21 被告と被告補助参加人が「生命の實相」等について出版契約締結
H23 前訴第1審判決
H24 前訴第2審判決
H25 前訴上告棄却、上告不受理決定

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■判決内容

<争点>

1 前訴との二重起訴の有無

被告は、本訴は前訴と訴訟物を同じくする二重起訴であるとして却下されるべきであると主張しました。
この点について、裁判所は、前訴第3事件のうち原告から被告に対する訴えは、原告が被告に対し、著作権法79条に規定される出版権の確認を求めた訴訟であって、同法63条に規定される著作物利用権(著作物の利用許諾を受けた者の債権的な権利)は訴訟物となっていなかったものと認められると判断。本訴は前訴との二重起訴には該当せず、また、原告の出版権確認請求を棄却した前訴第1審判決の既判力が本訴に及ぶこともないと判断しています(12頁)。

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2 本件更新拒絶の有効性

(1)管理者である生長の家の意思に反した通告か

原告は、本件出版使用許諾契約の約款第3条によれば、更新拒絶は被告単独でなく代理人である宗教法人生長の家とともにその意思表示をすべき義務があり、生長の家の意思に反した本件更新拒絶は無効である、などと主張しました。
しかし、裁判所は、更新拒絶は被告と生長の家の連名で行うことを必要とすると解釈することは文理上明らかに困難であると判断。被告は単独で本件出版許諾契約の更新拒絶の意思表示をなし得るものであるとしています。

(2)権利濫用の肯否

本件出版許諾契約は3年ごとに更新される期間の定めのある契約ではあるものの、前身である本件昭和49年契約から数えて30年以上にわたって更新されてきたことなどを考慮すれば、被告の更新拒絶権も無制限のものではなく、正当な理由がない場合には権利濫用として許されない場合があり得ると裁判所は説示。
しかし、裁判所は、原告には復刻版の印税の支払について本件昭和49年契約の債務不履行があり、原被告間の信頼関係は既に破壊されているとして、本件更新拒絶は権利濫用に当たらないと判断しています(12頁以下)。

結論として、本件更新拒絶は有効と判断しています。

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■コメント

「生命の實相」の出版契約を巡る別訴となります。結論としては、前訴の判断を覆す内容とはなりませんでした。

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■過去のブログ記事

前訴(「生命の實相」書籍著作権事件)
原審記事
控訴審記事