最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自動車用プラスチックデータ図表事件(控訴審)

知財高裁平成26.2.19平成25(ネ)10070著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官      池下 朗
裁判官      新谷貴昭

*裁判所サイト公表 2014.2.20
*キーワード:図表、著作物性、アイデア、編集著作物

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■事案

自動車用プラスチックのデータ図表の著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :自動車用プラスチック研究開発業者
被控訴人(一審被告):執筆者、出版社ら

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、12条

1 本件書籍の各表の著作物性の有無
2 本件書籍の各表の編集著作物性の有無

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■事案の概要

『控訴人は,被控訴人らに対し,被控訴人らが共謀して被控訴人書籍を作成・販売し,インターネット上に掲載している行為が,原判決別紙書籍目録記載1の書籍(以下「本件書籍」という。)に掲載された14個の表(原判決別紙対照表の左側に記載されたもの(ただし,ピンク色及び緑色の着色はされていない。)。以下「本件書籍の各表」と総称する。)についての控訴人の著作権(複製権,譲渡権及び公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害していると主張して,(1)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,被控訴人らに対し,84万円及びこれに対する不法行為の後である平成24年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,(2)著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,被控訴人Y1に対し100万円,被控訴人リサーチに対し100万円,被控訴人出版に対し50万円及びこれらに対する平成24年10月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,(3)著作権法112条1項に基づき,被控訴人らに対し,被控訴人書籍の複製,譲渡あるいは公衆送信の差止めを,(4)同条2項に基づき,被控訴人らに対し,被控訴人書籍の廃棄及びその電子データを記憶した媒体の廃棄を,(5)同法115条に基づき,被控訴人らに対し,原判決別紙告知文のとおりの告知文の掲載を求めた。
 原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件書籍の各表の著作物性の有無

本件書籍の各表の著作物性の有無について、控訴審は原審の判断を維持してその著作物性を否定しています(5頁)。

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2 本件書籍の各表の編集著作物性の有無

控訴人は、控訴審において本件書籍全体あるいは一部の表について、編集著作物としての著作物性を主張しました。
しかし、控訴審裁判所は、控訴人の主張の実質的内容は、原審において控訴人が本件書籍の各表が著作物性を有するとして主張した点と同一であり、アイデアの独創性や記載事項の情報としての価値を述べるものにすぎず、これらが著作権法上の保護の対象となるものでないと説示。
そして、本件書籍の各表は、本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類、採用部位、成形方法等を当該分類項目に従って詳細かつ網羅的に整理したものにすぎず、個別の記載事項が情報として有用であるとしても一般的な表形式で整理が行われており、その素材となる各事項の選択又は配列について、どのような工夫がなされているのかは明らかでなく、控訴人の個性が表れているとは認められないと判断。
結論として、素材の選択又は配列によって創作性を認めることはできず、本件書籍及び同書籍の各表はいずれも編集著作物としての著作物性を有するということはできないとしています。

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■コメント

原審同様、書籍掲載の図表の著作物性が否定されています。控訴審において原告は図表の編集著作物性を主張しましたが、この点についても認められませんでした。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成25.7.18平成24(ワ)25843著作権侵害差止等請求事件
原審記事