最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「どーじんぐ娘。」発信者情報開示請求事件

東京地裁平成26.1.17平成25(ワ)20542発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 大須賀滋
裁判官      西村康夫
裁判官      森川さつき

*裁判所サイト公表 2014.2.12
*キーワード:発信者情報開示、公衆送信権、明白性、正当な理由

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■事案

違法コンテンツをダウンロード可能としているリンク先を掲載しているブログに関連する発信者情報開示請求事件

原告:漫画原作創作者
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条

1 原告が本件漫画の著作権者であるか否かに
2 被告が「開示関係役務提供者」に該当することについて
3 原告に対する著作権侵害行為及び権利侵害性の明白性について
4 発信者情報開示の必要性について

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■事案の概要

<経緯>

H23.12 原告が「Art Jam」として本件漫画1、2を発行
H25.04 本件ブログ(「どーじんぐ娘。」)に本件記事を投稿

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■判決内容

<争点>

1 原告が本件漫画の著作権者であるか否かに

原告が、本件漫画1、2の著作権者であることが認められています(8頁以下)。

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2 被告が「開示関係役務提供者」に該当することについて

被告は、本件IPアドレスを管理する経由プロバイダであることから、プロバイダ責任制限法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に当たると認定されています(9頁)

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3 原告に対する著作権侵害行為及び権利侵害性の明白性について

本件ブログに掲載された本件記事に対応するダウンロードサーバに本件漫画の電子ファイルをアップロードした者は、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(ダウンロードサーバ)の公衆送信用記録媒体に本件漫画の情報を記録(アップロード)して原告が著作権を有する本件漫画を送信可能化して自動公衆送信し得るようにしていたとして、裁判所は、原告の公衆送信権(同法23条1項)を侵害していたことが明らかであると判断。
また、本件記事を投稿した発信者は、本件記事やそれ以外の本件ブログの記載からして、ダウンロードサーバに本件漫画の電子ファイルをアップロードした者と同一人であると認めるのが相当であり、仮にそうでないとしても、少なくともアップロード者と共同して主体的に原告の公衆送信権を侵害したものであることが明らかであると判断。

結論として、原告の本件漫画の公衆送信権が侵害されたことが明らかであると認められています(9頁以下)。

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4 発信者情報開示の必要性について

原告は、発信者に対し損害賠償請求の予定があり、発信者を特定するために本件IPアドレスを本件タイムスタンプの時刻に使用してインターネットに接続していた者(発信者)の住所、氏名及びメールアドレス(法4条1項、省令1号ないし3号)の開示を受けるべき正当な理由があると認められています(10頁)。

結論として、発信者情報目録記載の発信者情報の開示請求が認められています。

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■コメント

「どーじんぐ娘。」でネット検索すると、アダルトコンテンツの情報を提供するサイトで、エロ漫画、エロ同人誌などが扱われています。
なお、別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンクを集めたサイト(いわゆるリーチサイト)については、間接侵害論との関係で文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で議論されていました。

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■参考資料

平成25年2月6日 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)
「間接侵害」等に係る課題について(検討経過)(案)